【伊達康】一体、誰が土浦日大の2年連続優勝を予想できただろうか。春季大会を終えた時点で今年はシードの上位3校の力が抜きん出ており、秋と春の関東大会でいずれも1勝以上を挙げた。優勝した土浦日大には失礼だが、私は春までの結果を受けて夏はこの3校のどれかが優勝するだろうと予想していた。
土浦日大は初戦である2回戦の牛久に対しエース富田卓が完投して4対2で辛くも逃げ切ると、3回戦の勝田と4回戦の鉾田一には2番手格以降の投手が無失点に抑えて7回コールドで大勝。公立校を相手にここまでは順当な勝ち上がりといえよう。しかし、ここからはとてつもなくハードルの高い相手が待ち受けていた。
準々決勝の相手は、昨秋県大会2回戦で0対16の大敗を喫した第2シードの明秀学園日立だ。春のセンバツ甲子園では2勝を挙げ、プロ注目選手の増田陸や最速144キロの剛球を誇る細川拓也など圧倒的な力を持ち、土浦日大にとって因縁の相手である。
試合は土浦日大が3回に鈴木健太と木原琉位の連続ツーベースなどで3点を先制すると、7回に3点、8回に2点を追加し8点差をつけた。その裏に増田に3ランホームランを浴びたが、昨秋完膚なきまでにやられた相手をあわやコールドにまで追い詰めて、歯が立たなかった相手エースの細川から16安打を放って8対3で勝利を収めた。秋の大敗以降、「打倒・明秀学園日立」を合言葉に臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の日々を経て勝利の瞬間を迎えたエースの富田は、まるで優勝したかのようにマウンド上で顔を紅潮させ絶叫していた。
非の打ち所のない破壊力を発揮
続く準決勝の相手は、春季県大会準々決勝で3対5と敗れた第3シードの霞ケ浦だ。土浦日大は前の試合で完投して疲労が残る富田を温存し、左腕の荒井を先発起用した。ところが荒井が霞ケ浦打線に早々に攻略され2点を献上し、予定より早く富田を出さざるを得なくなった。霞ケ浦の先発投手は最速142キロの本格派右腕・福浦太陽だ。春は井上莞嗣の3ランホームランでしか得点できなかった相手であり攻略は容易ではない。
ところが土浦日大はすぐに反撃した。4回表、5番・小澤礼嗣、6番・大賀、7番・鶴見恵大の3連打で同点とすると、9番・石渡のタイムリーで逆転に成功した。さらに7回表は鈴木健太のソロホームランなどで3点を奪い福浦をノックアウト。8回には最速144キロをマークする本格派右腕・鈴木寛人から、鈴木健太の2ランホームランで2点を追加し8点目を挙げた。
最後は霞ケ浦の怒濤(どとう)の猛追に3点差まで詰め寄られるが辛くも逃げ切って勝利。明秀学園日立・細川拓也を粉砕した土浦日大の攻撃陣は、茨城を代表する霞ケ浦の好投手に16安打を浴びせる非の打ち所のない破壊力を発揮して「猛打の土浦日大」を強烈に印象づけた。
「猛打の土浦日大」は決勝でも健在
決勝の相手は春の関東8強入りを果たした第1シードの常総学院だ。今年の常総学院は特に強力打線を武器としている近年まれに見る破壊力のあるチームに仕上がっている。土浦日大は3連投となるエースの富田を先発に据えた。一方の常総学院も、準決勝で1失点完投と結果を残した塙雄裕を連投させる勝負に出た。試合は2回裏に動く。常総学院は先頭の二瓶那弥がセンターのミスで三塁まで到達し、タイムリーで1点を先制する。1点を献上した土浦日大は4回表、相手のエラーに乗じて打者一巡の猛攻で同点、さらに逆転と一気に畳みかけ6点を挙げる。
5点のリードをもらったエース富田はその後、テンポよくストライク先行の投球を続ける。打ち気に焦る常総学院打線を切れ味抜群のスライダーで翻弄する渾身の投球で無失点に抑え1失点完投勝利を収めた。「猛打の土浦日大」は決勝でもやはり健在で、強打を標ぼうする常総学院のお株を奪う11本の二桁安打を放った。
準々決勝からの3試合で、茨城を代表する私学3強を撃破して2年連続の甲子園出場をたぐり寄せたのだった。先述したがあえてもう一度言わせてもらう。この衝撃的な結末を一体誰が予想できただろうか。予想の斜め上を行く土浦日大は茨城大会で実力を十分に証明できた。