土曜日, 2月 7, 2026
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記者が体験 ヨガでストレス軽減を実感 筑波大

【田中めぐみ】筑波大学(つくば市天王台)は、人間の身体活動能力を最大化するための次世代健康スポーツ科学を推進している。その効果的な方策の一つとして、2015年から同大学院の共通科目にヨガコースが開講した。院生たちは自分の研究テーマに向かい合い、さまざまなプレッシャーと戦っているが、生活にヨガを取り入れることでストレスが軽減しているという。6月3日と11日に同大武道館で開かれた社会人向けヨガ講座を記者が体験した。この講座は、同大のスポーツ・オリンピック学専門プログラム「つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)」が社会貢献事業の一環として開催している。

ヨガはストレスやプレッシャーを切り抜け、平常心を取り戻すための心身技法だ。担当教員の一人である農学博士ランディープ・ラクワール教授によると、毎年ヨガコースの受講希望者は定員を超えキャンセル待ちの状態。教室は学生でいっぱいになり、ニーズの高さを感じているという。

研究成果を地域に還元

同大では、研究で得られた成果を広く社会に還元することを目指している。ランディープ教授は学生たちのヨガへの関心の高さを知り、16年から一般の参加者も受講できる「みんなのヨーガ」クラスを開講した。講師は長年ヨガや呼吸法指導、ヨガの科学的研究に携わってきた高橋玄朴講師。講座は深遠なヨガの思想について解説する講義とヨガの実技合わせて各回3時間ほどで、今年度は7月15日まで開講している。

講義のテーマは毎回異なっている。3日の講義は「東洋心身思想の特徴とその広がり」。高橋講師によると、座禅や気功、武道とヨガには共通する特徴があり、それは姿勢を整える(調身)、呼吸を整える(調息)、心を整える(調心)ということだ。日本の「道」(蹴鞠、能・狂言、武道、茶道など)にも共通する心身技法があるという。

ラクワール教授は「大学発の講座である以上、アカデミックな内容であることを重視している」と言う。専門的で難解な部分もあるが、講義後には高橋講師やラクワール教授に自由に質問することもできる。

寝不足でこわばり 脱力体操でほぐれる

講義は1時間ほどで終わり、短い休憩の後いよいよ実技だ。高橋講師の指示に従いながら、まずは体をほぐす脱力体操から始める。前の週に忙しかったこともあり、1週間まとまった運動をしていない。前夜は寝不足気味で少しだるさがあった。しかし、力を入れては抜くという運動をじっくり繰り返しているうちに首のこわばりや肩の緊張が取れてきた感じがする。

外は緑いっぱいで気持ちの良い快晴。静かな中、武道場で試合する人たちの掛け声や鳥の声、葉擦れの音が遠く聞こえる。ゆったり流れる時間が心地よい。時間をかけて体を伸ばし呼吸を続けるうちに、浅かった呼吸がだんだん深くなり、たくさん息を吸い込めるようになってきた。その分吐く息も長くなる。もともと体が硬く、先生のようにはできないポーズも多いが、気にせずに体が心地よく伸びるのを味わう。

雑念ばかり 10まで数えられない!

実技前の講義で、仏教の行のやり方である「数息観(すうそくかん)」について習った。1から10まで数を数えながら呼吸をし、最後までいったらまた1に戻る、間違えたらまた1から数え直すというものだ。高橋講師の指示で始めるが、これがなかなかうまくいかない。数を数えていても仕事の事ばかり頭に浮かんでは消え、何度やっても10まで数えられない。「あっ、また雑念だ」と思ってやり直すのだが、無心になることがこれほど難しいとは。日ごろどれだけ雑念ばかりで生活しているのかを思い知った。

その後指示で、自分にだけ聞こえるように「んー」と言いながら瞑想をする。「無字観(むじかん)」という技法だ。すると、自分の声の響きに集中するせいだろうか。雑念が減った。不思議な感覚だ。しばらく「んー」と言い続けることだけに集中し、その後先生の指示で止めると、なんとも言いようのない穏やかな静寂が広がる。明鏡止水の心境。とても気持ちの良い感覚だ。

不安消え目の前シンプルに

初心者にも取り組みやすく手順を踏んだ瞑想のやり方は、高橋講師が大学院の学生のために考案したものだという。静かな心の状態をゆっくりと味わった後、仰向けのポーズになってゆったり呼吸し、伸びをして起き上がる。

ヨガをやる前に感じていた「あれもこれもやらなくては」という焦燥感や漠然とした不安感が消え、目の前の仕事がシンプルに映り、やるべきことの優先順位が明確になった感じがする。本来各々が持っている力を最大限発揮できるようにするというヨガの効果を記者も実感することができた。

筑波大学体育系教授ランディープ・ラクワール農学博士㊧とゲストティーチャーの高橋玄朴講師

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ふるさとのない時代《くずかごの唄》154

【コラム・奥井登美子】お正月には誰も故郷に帰りたくなる。私が育ったのは荻窪のみどり幼稚園。緑の名の通り、生垣に囲まれた家と野原の、のんびりした緑色の住宅街だった。 しかし今の東京の町はどこも高いビルばかりで、緑がない。故郷という言葉とはかけ離れた風景になってしまっている。私の故郷と呼べるような所は、もうどこにもなくなってしまったのだ。 幼い時、父の故郷、新富町へもよく連れて行ってもらった。父は歌舞伎座が新富座であった頃の、鉄砲洲小学校出身。「菅原伝授手習鑑」などに寺子屋の子役として駆り出されて、よく出演させられたそうだ。台詞(せりふ)も筋もよく覚えていて、よく私に語って聞かせてくれた。 隅田川のほとりに町があって、父は「〇〇ちゃんの店でノリを買おう」などと、昔の友達の家に寄っておしゃべりするのを楽しみにしていた。父の故郷はいま、日本ではない、高いビルばかりのどこか架空の空間になってしまっている。 タケちゃんの文が朝日に載った 1月27日の朝日新聞「折々のことば 鷲田清一」に、加藤尚武の文が載っていた。「個人の間の平等は、ある程度まで…自然の平等に支えられているが…国力の差は、ネズミとゾウの違いよりも大きい」 加藤尚武は私の弟のタケちゃん。京都大学の哲学教授を務めた後、鳥取に環境大学を創り、環境問題を、哲学のまな板の上に載せた人。「環境問題のすすめ」という著書もある。生活者として、医療と環境を意識して生活している。 加藤家の男たちはみな食べるのが好きで、父も、兄も、タケちゃんも、好きなものを自分で作って食べるのが趣味だ。 私はせめてせめて、お正月くらいは、おしゃべりの好きな弟のタケちゃん、母の昔の味の料理を作ってくれる妹、姪たちに会って、亡くなった父、母、兄の個性を偲(しの)びながら、今の子供たちと比べて、大笑いするしかないのだろうか。(随筆家、薬剤師)