【ノベル・伊東葎花】
「明日から視察に行ってくる」
「まあ、今度はどちらの星?」
「金星と木星だ」
「あらまあ、遠くまで大変ね。確か太陽系の方じゃなかったかしら」
「そうだ。未知の星だが、きっと豊富な資源と生命体がいると信じでいる」
「ふうん。気を付けてね」
太陽系は非常に遠い。何度かワープをしなければならない。
機体にも身体にも大きなダメージを受けるから、誰も行きたがらない。
しかし、このままでは我が星はやがて滅びる。
生活燃料となる、新たな資源を手に入れなければならないのだ。
私はひとり、宇宙船に乗り込んだ。
数回のワープと軌道修正を行いながら未知の星へと進んでいった。
AIが安全と判断した星で休憩を取りながら、数日かけて太陽系に入った。
しかし困ったことが起きた。
太陽系に入った途端、AIが全く機能しなくなった。
これでは金星と木星がどの星なのか、さっぱりわからない。
目の前に、青い美しい星が現れた。
「これか? いかにも生命体がいそうな星だ」
私は、とりあえず青い星に降りてみることにした。
陸地に機体を止めて、恐る恐る降りると、なんとも美しい星だ。酸素も豊富だ。
歩いてみると、生命体がいた。
二足歩行だ。推定80歳、性別は女と見た。
私は瞬時にその女の頭脳を読み取り、この星の言語を理解した。
「すみません」
「あん? 何の用だ?」
「ここは、金星? 木星? どっち?」
「あんた。外国人か? インバウンドってやつだべか。こんな田舎になんの用だ」
「だから、ここは、金星? 木星?」
「あん? きんせい、もくせい? ああ、キンモクセイか。こっちさ来い」
女が歩き出した。推定80歳のわりに、足が速い。
「これだべ、キンモクセイ」
ずらりと、大きな植物が並んでいる。これが金星と木星?
こんなに小さいのか? いや、もしかしたら、宇宙変動が起きてバラバラになり、この星に吸収されたのかもしれない。それとも、故意に爆発させたのか。
オレンジ色の粒々が、爆発の威力を物語っている。きっと爆発により金星と木星が一体になってしまったのだ。
この星は、思ったよりも恐ろしいかもしれない。
「どうだ。いい匂いすっぺ? おらのキンモクセイ」
女が自慢げに言った。金星と木星は、この女の所有物なのか?
それにしても、なんて甘美な香りだろう。
「分けてやっか?」
「えっ?」
「キンモクセイ、分けてやるから待ってろ」
女は庭から、鉢に入った小さな植物を持ってきた。
「これ庭に埋めてみな。毎年咲くから」
私は、震える手で金星と木星を受け取った。
「じゃあね。何もねえ村だけど、観光楽しんでくろ」
私は、小さな金星と木星を持って、宇宙船に乗り込んだ。
ワープと軌道修正を繰り返し、我が星へ向かった。
優しい甘美な香りが機内に充満して、帰りの操縦は何とリラックスできたことか。
ああ、とても気分がいい。
これはもしかしたら、素晴らしい資源になるかもしれない。
見知らぬ星の女、恐るべし。
(作家)





