【橋立多美】住宅団地住民が一斉に年をとり、急速な高齢化が進むつくば市茎崎地区で、民生委員が在宅介護に関する相談を受けるケースがここ数年、急増している。こうした状況を受け、同地区の民生委員自らが初の試みとして、在宅介護のシステムと現状を知る研修に取り組んだ。
茎崎交流センターで18日開かれた、同市茎崎地区民生委員児童委員協議会(関口光治会長)による全体研修で、初めて在宅医療と介護をテーマにした。
訪問診療を専門に行っている、つくば在宅クリニック院長の渡辺拓自さんの講演と3人を看取った介護者の体験談が語られ、会場に集まった32人の委員たちは静かに耳を傾けた。
渡辺さんは同市を中心に、10市1町の在宅患者約140人の診療にあたっている。様々な患者と家族の例を挙げながら「在宅医療は看取りのための医療ではなく、患者の意思に添いながら訪問看護師などがチームで支える医療」と話した。その一方で「本人にとって介護が生活の基盤で家族の理解と協力がないと成り立たない」とも。
続いて谷田部地区民生委員の久保田美智子さんが、実母と夫、従妹の順で介護し見送った体験を語った。「本人の痛みをコントロールしてくれる在宅医がいたから、9年に及んだ介護の日々を乗り切ることができた」と振り返った。
参加した民生委員からは「相談に乗ってくれる良い主治医を探すには?」「知りたかった訪問診療にかかる費用が分かって良かった」などの質問や感想が聞かれた。
民生委員は、地域の身近な相談相手として必要な支援を行う非常勤の公務員。あしび野に住む民生委員の稲川誠一さんによると、2005年に施行された個人情報保護法でお年寄りの安否確認が満足にできなくなって業務に弊害が生じたり、民生委員自らが高齢になって辞めるなど、なり手不足になっていると課題を指摘した。