【コラム・山口絹記】前回記事では、人生初の本格的なサイクリングがヒルクライムになりつつあるところまで書いた。
冷静に振り返ってみると、私がこんな無謀なコトに及んだのにはそれなりの理由があるように思う。つくば市に暮らし始めて10年以上たつのだが、実はつくばの中心部の街並みには坂がほとんどないことを意識せずに暮らしてきた。したがって、普段ロードバイクで走る分には坂道を経験したことがなかったのだ。平地に飼いならされていたと言ってもよいだろう。
そして、今回のライドにおける前半30分、約10キロが実はずっと下り坂だったことに私は気が付いていなかった。初心者の私でもしっかりペダルを踏み込めば時速40キロ以上出せることを、自分のバイクの性能ゆえと思い込んでいたのだ。ロードバイクってこんなに速いんだ! すごい! 端的に言って間抜けである。
平坦と思い込んでいた下り坂の爽快な記憶をひきずったまま、私はヒルクライムを開始した。何かつらいけど、まぁなんとかなるだろう、そう思った。実は、私が走っていた道は「八幡高原チャレンジコース」という名のコースの一部で、中上級者向けの山岳コースという位置づけになっているらしい。
走行開始から2時間30分、短い下りから突然の上り坂、獲得標高にして760メートルで両脚を激しくつった。下りで重くしていたギアのまま、上りに突入したのが原因だ。ショルダーバッグを投げ捨てたくなるのをこらえ、坂道に罵声を浴びせ、悲鳴をあげながらバイクをひいて歩いて登る。食料はない。持ってきたのは水500ミリリットルだけ。軽い遭難である。
走行距離42キロ、3時間40分
そこから45分かけて、もう一度短い下りを挟んだ上り坂を悲鳴と愚痴を吐き散らしながら標高1040メートルの八幡崎に登頂した。獲得標高959メートル。少し曇ってはいたが那須野が原の景色が広がっていた。なんてこった、ちょっと気持ちいい。
帰りはほぼ下り坂だ。延々と苦しんだ登りを15分で下ることができた。総走行距離は42.21キロ、約3時間40分のライドだった。
記憶領域の小さい私の脳みそに残ったのは、那須野が原の景色と下りの気持ちよさだったのだろう。帰ってきた3日後の5月6日深夜、偶然「ツール・ド・つくば2026」のエントリーページを見つけた私は、深く考えずにその場でエントリーした。ツール・ド・つくばのコースは全長約12キロ、高低差約500メートルだという。途中から歩いたとはいえ、すでに私は脚がつるまでに760メートル登り、距離にしたら40キロ以上走っているのだ。
翌日、過去のツール・ド・つくばの映像をYouTubeで見た私は凍り付いた。なんかみんなピチピチの服にサングラスをつけて走っている。こんな服持ってない。というか、思ったよりだいぶ本格的である。まずいかもしれない。大会の本番は5月31日。あと3週間である(言語研究者)






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