【コラム・斉藤裕之】暮れにちょっと体調の不安を覚えたのが、正月にはとうとう喉が腫れだした。病院も閉まっているし、市販の薬を飲んでだましだまし過ごすしかない。朝、ふと昨年末に友人と長女から立て続けにギンナンをもらったのを思い出して、ストーブの上でいくつか焼いて食べてみたものの一向に数が減らないので、そうだ! ギンナンご飯を炊こう! 台所の二番目の引き出しに確かギンナン割りが…。
例年通り、元旦の朝には新しい牛乳パックのパレットに絵具を出して、イリコを描いた。2日目もこれといって描くものがなかったので、違うイリコを描いた。3日目も4日目もイリコを描いた。結局、6日の朝まで都合6匹のイリコが描けた。
やっと喉の腫れも取れて、鼻水は垂れるが(寒いと鼻水が垂れるのが動物の生理現象として当たり前だと思う)、久しぶりに益子の古物屋に向かった。道中、雪を頂いた日光の山々が見えるのがいい。特に欲しいものがあるわけでもないが、ここの御主人の集めてきたものにはエスプリがある。その日は小さな陶製の人形たちが目に留まった。
どれか一つお選びになって!
フランスに留学した時に最初に住んだのは、国際学生都市の中にある日本館。そこにはいろんな国の学生寮があって、入居者の何割かを他の国の学生と交換する制度があるらしく、私と同じフロアにチュニジアの女性が住んでいた。
その女性の部屋でフランス語を教えてくれることになった女性を紹介されたときに、「どれか一つお選びになって!」といただいたのがガレット・デ・ロワ、王様のケーキだ。焼かれたパイがいくつかに切り分けられていて、その中の一切れにフェーブと呼ばれる小さな人形が入っている。それを引き当てた人は王様、すなわち大吉というわけだ。そうか、あれは1月だったか。
おいしく炊けたギンナンご飯
あのときは、確か金属製のものが入っていたような気がしたが、目の前には彩色された陶製のフェーブが何十種類と並んでいる。聖人や修道女、壺(つぼ)を持っている女性や羊、豚の動物もいて、恐らくキリスト教の寓話の登場人物だということは推察できるが、どなた?というキャラクターも多い。確かに作りの甘い、いわゆるゆるキャラなのだが、目やひげなどは極細の筆で描かれ、色も塗り分けられていて、なかなか凝っている。あれこれと迷って、その日はその中の二つを持ち帰って描くことにした。
数日後、私の姿は再び古物屋にあった。そう、私はこの小さな人形にヌマったのだ。そして今度は、10体のフェーブを選んで描くことにした。(カッパとか、ロケットとか、花火とか、ご当地フェーブ入りのガレットなんてどうだろう?)
ところで、ギンナンご飯は我ながらおいしく炊けた。富山産のギンナンは小さめで、静岡産は大粒。「ギンナンは人間と同じ一科一属一種で世界中のギンナンは全部いっしょ…」。高校の生物の先生の言葉を思い出した。(画家)






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