【コラム・海老原信一】今回はスズメの話を二つしてみます。一つは、野鳥の観察・撮影を始める前のことです。小学生3人の子供たちを連れ、栃木県小山市にあった「小山遊園地」へ出かけた際の出来事です。当時、この遊園地は存在感がある施設でしたが、20年ほど前に閉園となり、今は大型ショッピングセンターになっています。
運転席の窓を全開にして、下館から結城を抜け、小山市内を走っていた時、全開した運転席に小さな塊が飛び込んできました。驚きましたが、すぐスズメであるのが確認できました。車内はこの出来事に興奮状態です。
スズメは自分のいる所が本来の場所ではないと思ったのでしょう、フロントガラスに向かい飛び出そうと羽をバタつかせています。私も、まさかスズメが同乗者になるとは想像もできませんでしたが、右手を伸ばし、ダッシュボード上で動けなくなっているスズメ保護できました。ケガはしてないようでしたので、窓から放鳥しました。
もう一つは、野鳥の観察・撮影を始めて10年ぐらい経った時のことです。「花と鳥」という定番の情景を求めて、何日か同じ場所に通っていました。今日で一区切りと思いながら、周りを眺めていると、視界の下方で何かが動き、自分の方に這い寄って来る気配。見ると、1羽のスズメが足元に来てうずくまりました。
人からは逃げるはずのスズメがなぜ? そう思ってよく見ると、足元にうずくまったまま動く気配がありません。目は半分閉じられ、ゆっくりとした呼吸が感じられるほどでした。見るからに弱っており、残された時間の長くないことがわかりました。
足元に寄って来たのは、冷えてきた自分の体を温めたいと人の体温を求めたからではないか? でも私はじっとしている以外になすすべがなく、かなりの時間そのままでいました。やがて動かなくなったスズメをそのまま置き去りにするのが忍びなく、近くのヤブに隠しました。生きている時間を少しでも遅らせることができればと。
二つの記憶。一つは楽しかった記憶。もう一つは切なかった記憶。これからも、野鳥との関わりの中で多くの記憶を残せたらと思っています。(写真家)






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