実物の12分の1の世界を楽しむミニチュア・ドールハウス作品展「茨城ミニチュア・ドールハウス作家会 第2回展覧会」が7日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で始まった。出展するのは、磁器、木材、樹脂粘土、編み物など、多彩な素材で独自の世界を表現する県内在住の8人の作家たち。計約35点が展示されている。2023年以来で、今回が第2回目の開催となる。会期は13日まで。
小さな人形のための家「ドールハウス」の起源は、1500年代のドイツにさかのぼる。その後ヨーロッパ各地で、貴族のコレクションや子ども用の教育玩具として用いられてきた。20世紀初頭にはイギリス王室で、女王に献上するためのドールハウス制作プロジェクトが発足。その中で、実物の12分の1サイズにすることが決められ、大きさのひとつの基準として現在に引き継がれている。
100年後も残せる作品を

虫眼鏡でのぞき込むと、異なる表情で微笑みかける、頬を赤く染めた少女が見える。2センチほどの人形は、頭、腕、太もも、すね、手、足、それぞれ個別に型を取り、数回に分けて電気炉で焼き固めたものを組み合わせて作る。
作者はつくば市在住のカマチマリコさん。30年前に渡った米国で、焼き重ねた磁器を素材に作られた人形「ビスクドール」と出合った。当初は大きなサイズを作っていたが、人形が抱き抱える人形を作る中で、徐々に、小さな人形作りの魅力に引き込まれたという。「小さなものは、自分の気持ちが穏やかじゃないと仕上げることができない。制作作業は自分と向き合う時間」だと話す。これまでに、米国やドイツの人形コンクールで賞を受賞するなど、国内外で活動の場を広げてきた。現在、市内の自宅で月に4回、教室を開いている。「自信を持って、これが100年後にも残せると思えるものを作り続けたい」と思いを語る。
一番好きな場面を閉じ込める

宮崎由香里さんが作るのは色とりどりの花々だ。直径1センチにも満たないバラの花は、樹脂粘土を用いて作った一枚一枚の花びらを重ね合わせて作り上げる。1、2ミリほどのがくが集まる直径数ミリのアジサイも圧巻だ。花が飾られる部屋も内装から自作する。2002年ごろから独学で始めた。23年4月には2冊目となる作品集「ミニチュアローズBOOK」(グラフィック社)を刊行した。「つぼみから徐々に開いていって、最後に散っていく。その過程で自分が一番好きな場面をその場に閉じ込められるのが、一番の魅力」と語る。
時間の流れもとどめたい

水戸市の河内和子さんは、実生活で使ってきた衣服や紙、使われなくなった小物などを利用して、自身の記憶の中にある「昭和」の風景を再現する。棚に置かれるレコードプレーヤー、壁にかかるアコースティックギター、テーブルの上には食べかけのショートケーキとメロンソーダが並んでいる。河内さんが青春時代を過ごした音楽喫茶の風景だ。作品作りのきっかけは、実家で営んでいた茶店を残そうとしたことだった。「過ごした時間の流れも、作品の中にとどめたい」と話す。
さらに小さな作品を

つくば市在住の赤星友香さんが作るのは、12分の1サイズでつくる編み物による作品だ。セーターや靴下、手袋、人形など、継ぎ目のない「シームレス」の作品を展示する。15個の引き出しがついた手のひらサイズのキャビネットには、空いた引き出しに爪先ほどの靴下やポシェット、人形などが収められている。子どもの頃から手芸が好きだったという赤星さん。普段は編み物を教えている。小さな作品作りには違った高い技術が必要になると言い、「今取り組んでいるのは、編み物で作るぬいぐるみ『あみぐるみ』。今あるのは元となる作品の6分の1。12分の1までできるよう、頑張りたい」と語る。
赤星さんは、「参加している作家の皆さんは、使う素材や製法、作品も、それぞれジャンルが異なっているので、小さい物が好きな方、 手仕事が好きな方だけでなく、いろいろなことに関心のある方に楽しんでいただける展示だと思う。ぜひ多彩な作品を見にお越しいただければ」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)
◆「茨城ミニチュア・ドールハウス作家会 第2回展覧会」は7日(火)から13日(月)まで、つくば市吾妻2-8 県つくば美術館・第2展示室で開催。開館時間は午前9時30分から午後5時まで。最終日は午後3時まで。入場無料。問い合わせは茨城ミニチュア・ドールハウス作家会の公式サイトへ。