【コラム・佐々木哲美】私たちの会では、豊かな里山を目指し、チェーンソーを使って林の手入れをしています。8月には、安全確保のため「チェーンソー取扱作業安全講習」を開催しました。講師は労働安全コンサルタントである私と、同じ会員で空師(高木に登って枝や幹を伐採する職人)の田中裕之さんが担当しました。
6時間半のカリキュラムのうち、午後の2時間は当会所有地「ワクワクの森」で、大木の伐倒などの実技を行いました。講習内容は、厚生労働省通達に基づく「チェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者安全衛生カリキュラム」に準じ、より実践的な構成としました。
当日の参加者は11名。年齢、職業、会員歴、経験はさまざまで、有資格のベテランから初心者の女性まで幅広く、身内ながら緊張感を持って学び合い、楽しく充実した時間を過ごしました。経験の有無にかかわらず、参加者の多くが同様の感想を持っていたのが印象的でした。
当会では2012年から、法令に基づくカリキュラムでチェーンソー特別教育を開始し、数年おきに実施してきました。20年の法改正後には、6時間の補講を2度開催しています。現在の法令では、学科(9時間)と実技(9時間)の18時間が必要で、3日かかります。私が引っ越したこともあり、1月には刈払い機安全講習を実施したものの、チェーンソー講習は無理と考えていました。
今回は林業従事者向けの内容を大幅に省略し、災害復興ボランティア活動の視点を加え、1日で完結する独自テキストを作成しました。そして、会独自の修了証を発行しました。
けがをしたら自己責任
伐木作業に従事する労働者は、木の太さに関係なく、法令に基づく特別教育の修了が義務付けられています。未受講で業務使用した場合は法令違反となり、事業者には懲役または罰金が科される可能性があります。ボランティアや個人使用の場合は、資格や特別教育の義務はありませんが、事故リスクが高いため、安全な使い方の習得が強く推奨されます。けがをしても、自己責任となってしまいます。
チェーンソーによる伐木作業が厳しく法令で規制されているのは、労働災害が多いためです。対応には三つの視点が必要です。第一に、取り扱いを誤ると危険な機械であり、操作や整備の知識が不可欠です。第二に、伐倒方法や方向を誤ると重大な災害につながります。第三に、振動工具であり、作業時間や整備状況を適切に管理しないと、健康障害を引き起こします。
けがの痛みは、労働者もボランティアも変わりません。労働者には法律による救済制度がありますが、ボランティアには補償もなく、講習会の受講料も自費です。ボランティアが安心して活動できるよう、社会制度の整備を強く望みます。(宍塚の自然と歴史の会 顧問)