参院選で「日本人ファースト」や外国人規制強化を掲げた参政党が支持を伸ばし、つくば市でも、県内で最も多い3万人以上が同党候補に投票した。つくば市における今後の外国人施策について、五十嵐立青市長は7日の定例会見で「今回の選挙結果によって市の方針に変更はない。つくばは外国人の皆さんと共生していくというメッセージを出し続けていきたい」と見解を述べた。
分断・排除あおる言葉に危機感
今回の参院選では外国人政策が争点化され、参政党のほか、自民、公明、国民民主なども外国人への規制強化を打ち出した。さらに選挙戦を通じて「外国人の犯罪増加」や「生活保護の3分の1が外国人」といった、事実と異なる情報が拡散された。
これに対し市長は、国が外国人に対する包括的な共生施策を持たず、「曖昧なまま全てが自治体に任されてきた」と現状を指摘。「多くの自治体の首長は、自治体任せになっている外国人施策について非常に強い課題感を持っている」とし、「全国市長会などでも、これから議論されるべき問題」だと述べた。また、事実に基づかない情報の拡散については「市内の外国人犯罪は全国平均や過去と比べて急増しておらず、日本人・外国人ともに安全に暮らせる状態は維持されている」「分断や排除をあおる言葉が飛び交う状況に強い危機感を覚えている」とし、「つくば市は常に共生を目指し続ける」とした。
正しくメッセージを伝えていく
外国人排斥への不安が市民の間に広がることについては「現時点でつくば市民の中で外国人問題に関して激しい対立がすでに起きているという認識には立っていない」と話し、「(参政党への)投票行動が必ずしも外国人排除目的とは限らない」とも述べた。その上で「さまざまな不満や不安の声をきちんと聞くことは行政として重要なこと。今後もつくば市では、日本人、外国人を問わず、実際に困難な状況にある人に必要な施策を打っていく」とした上で、「つくばは(外国籍市民との)共生を続けるという安心感のあるメッセージを発信する」と強調し、「さらに分断が拡大するような方向にいかないように、正しくメッセージを伝えていくことが重要」と述べた。
市では今後、来日して間もない外国籍児童を対象に、日本の学校生活や習慣、言語を事前に学べる「プレスクール事業」を新たに開始するなど、外国籍市民への生活支援を拡充する方針を示した。
つくば市には2023年12月1日現在、市全体の人口の約4.9%にあたる、144カ国1万2663人の外国人市民が暮らしている。居住する外国人の数は県内で最も多い。市では2016年に、すべての人にとって住みやすいグローバル都市の実現を目的とした国際化施策のガイドライン「つくば市国際化基本指針」を策定。23年5月には、増加傾向にある外国籍市民の多様化を受け、必要とされる生活支援策など変化する状況に対応するため、「第2次つくば市グローバル化基本指針」を策定した。指針の第1段階では「日本人市民・外国人市民それぞれが安全に安心して暮らすことができる状態」をつくることを皮切りに、32年までの10年間で「外国人・日本人の区別なく、すべての人にとって住みやすいグローバル都市」をつくることを掲げている。(柴田大輔)
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