つくば市は25日、高齢者の安否確認を主目的に同市が実施している「高齢者宅配食事サービス事業」で、委託業者が16日、適切に安否確認をしなかったと発表した。高齢者はその日の夜、自宅で死亡しているのが確認された。
弁当を自宅に届け高齢者から応答がなかった場合、委託業者の配達員はただちに会社に連絡し、会社は高齢者本人と緊急連絡先の親族などに連絡することが市の安否確認対応マニュアルで義務付けられている。しかし配達員はただちに会社に連絡しなかった。
市高齢福祉課によると、宅配業者の配達員は16日午後1時20分ごろ、市内の一人暮らしの高齢者宅に弁当を届けたが、インターホンを押しても、電話をしても応答がなかった。配達員はその日の午後4時ごろまで計5回、高齢者に電話連絡したが、応答がなく、職場に戻ってから会社に報告した。
一方、同日、高齢者と連絡がとれないことを不審に思った親族が、高齢者の子供に連絡し、同日午後8時30分ごろ、子供が高齢者の自宅を訪れたところ、玄関のドアノブに弁当が掛けられていた。子供が玄関のかぎを開けると内側にチェーンロックが掛けられ、すべての窓が施錠されていた。子供は警察に通報、その後レスキュー隊が駆け付け、室内に入り、洗面所に倒れている高齢者を発見した。
警察の検死の結果、死亡推定時刻は16日午前中で、死因の特定には至らなかった。高齢者は軽度の認知機能障害があったが、健康状態は良好で、かかりつけ医の定期的な診察を受けていたという。
事態を受けて市は委託業者に対し、経緯報告書と改善計画書の提出を求めたほか、再発防止のため業務委託仕様書と安否確認マニュアルの再確認と、事業の主目的である安否確認を徹底するよう指導したとしている。業者からは経緯報告書と改計画書が提出された。
高齢者宅配食事サービス事業は、安否確認や健康保持を目的に、買い物や調理が困難な高齢者に、希望する日に弁当を手渡す事業で、現在、市内の高齢者約130人が登録し、1日平均50人が利用している。弁当は1食650円で、一般の高齢者は400円で利用でき、差額の250円を市が負担している。宅配事業は土浦市に事業所がある1社が受託している。