金曜日, 7月 18, 2025
ホームつくば大正後期の川田家住宅 登録文化財に つくば市北条

大正後期の川田家住宅 登録文化財に つくば市北条

三越の大番頭、盛蔵が建築

国の文化審議会は18日、つくば市北条にある大正時代後期に建てられた川田家住宅の①主屋(おもや)②炊事場及び風呂③石塀及び板塀の2棟1基を、新たに国登録有形文化財に登録するよう文科相に答申した。答申後、官報告示をもって正式に登録される。

後に三越の大番頭を務めた同市上大島出身の川田盛蔵が40代の頃、妻の実家がある北条に建築した。①主屋は明治時代後期ごろ現在の土浦市藤沢で建築された農家の建物を、1919(大正8)年に移築した。移築の際、都市的な新しい生活様式に適した住宅へと大幅改修した。床の間の脇に張り出すように設けられ棚板と障子窓で作られた付書院(つけしょいん)周辺の繊細な造形や装飾的な木材の使い方が、造形の規範となっているとして登録される。主屋は木道平屋建て、瓦ぶき、建築面積139平方メートル。

主屋の土間から前座敷、中座敷、奥庭を望む

②炊事場及び風呂は大正時代後期の建築で主屋の奥にある。小型ながら当時としては珍しい洋風の外観で、外壁はモルタル塗りで黄土色に仕上げられている。さらに急勾配の切妻屋根、外壁の縦長窓などが特徴となっている。内部は炊事場と風呂に分かれており、炊事用の窯の熱で風呂を沸かすようにつくられている。風呂の仕切り壁にも洋風の意匠が施されている。木造平屋建て、瓦ぶき、建築面積12平方メートル。

③石塀及び板塀は、大正時代後期につくられ、敷地の東側を区切っている。石塀の道路に面した南側は御影石を積み上げた御影石積、北側は大谷石を積み上げた大谷石積で、その北側に続く板塀は、板を交互に重ねて打ち付けた大和張りという工法でつくられた大和塀となっている。石塀は延長15メートル、板塀は延長26メートル。②炊事場及び風呂③石塀及び板塀はいずれも歴史的景観に寄与しているとして登録される。

主屋の外観

市文化財課の石橋充課長は「当時住宅は、農家だったら土間があったり、商家だったら店があったりと、なりわいに即してつくられていた。東京で働くサラリーマンだった盛蔵は、移築した農家を都会的な新しい生活様式の住宅に改修するなど、東京の文化を持ち込んだ住宅をつくった。なりわいに関係ない、サラリーマンの住宅の先駆けともいえるのではないか」と話す。盛蔵自身は当時、家族が住む北条の住宅と、職場に近い東京の住宅の二拠点を行き来する生活を送っていたとみられるという。

川田家住宅は現在、都内に住む子孫が所有する。普段は非公開だが、筑波山麓秋祭りや北条地区のイベントなどの際は北条地区に戻ってきて一般公開している。山麓秋祭りでは、古民家の邸宅公開と映像散歩、陶芸などの展示販売、カフェなどのイベントを催した。所有者の子の川田高史さん(58)は「若い頃、学園都市で育ったが、北条とは行き来していた。当時は学園都市と北条地区は隔たったものがあったと思う。それが近年変わってきた。中心地区に住む若い人たちなどに古いものの価値を見直そうという機運があり、北条地区全体で活動が活発になった。祖母の実家は宮本家住宅で、文化財の登録へと動いた。この地域は新住民、旧住民、老若男女がうまく溶け合い活動している地区だと思う。これからも地域の振興のために協力していきたい」と語る。

今回の登録により市内の登録有形文化財は6カ所21件となる。特に北条地区は国の重要文化財「旧矢中家住宅」のほか、登録有形文化財の宮本家住宅、旧常陸北条郵便局、旧田村呉服店と今回の川田家住宅の4カ所が集中する。市文化財課は「活用に当たり相乗効果が期待される」とし「貴重な文化財を未来へと継承できるよう、保存と活用を支援していく」としている。(榎田智司)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

つくば国際 3回戦突破ならず【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は18日、3回戦が行われた。笠間市民球場の第2試合ではつくば国際がCシードの水戸啓明と対戦し5回コールド11ー0で敗れた。つくば国際は2回戦で佐和を3ー2で下し接戦を制したが、3回戦突破はならなかった。 18日 3回戦 第2試合 笠間市民球場つくば国際 00000 0水 戸 啓明 3143× 11 強豪の水戸啓明を相手に先取点が欲しいつくば国際は、初回1死後、矢口大聖が水戸啓明先発の柿崎大地からセンター前ヒットで出塁するが、続く成嶋蓮はサード併殺打に倒れる。 その裏つくば国際は先発の小野颯斗が2四死球と2つのエラーが絡み3失点。「先取点を与えないことを考えて投げた」(小野)が、捕手の成嶋蓮主将が「エラーでリズムをつかめなかった」と語る通り、2回にも1失点、3回にも3失点した。小野は7点リードされた3回2死1、2塁で交代。捕手の成嶋蓮が投手としてリリーフし、小野が捕手に入った。しかし成嶋蓮も流れを止められず失点を重ねた。 成嶋は4回にも水戸啓明の松原康介、宇佐美琉生にタイムリーヒットを打たれ3失点。4回2死3塁となったところで、本来エースだったが、けがでショートに入っていた津留崎隼人が自ら志願してリリーフし、四球を出すも次の打者を三振に仕留めた。 水戸啓明は5回から2番手としてプロ注目の好投手、中山優人が今大会初登板すると、この回つくば国際先頭の三浦咲都が内野安打で出塁するも、続く鷺沼舜、布施維士が三振、最後は川口翔大がショートゴロに倒れた。つくば国際は水戸啓明の柿崎大地ー中山優人の投手リレーの前に3安打完封負けを喫した。 先発した小野颯斗は「2回戦と違って自分のピッチングが出来ず、ストライク、変化球も入らなかった。リズムがつかめなかったし、エラーがあった時に抑える気持ちを強く出したが、結果抑えられなかった。もっと試合をやりたかったが相手が上手だった」と話し「最後にこのメンバーで出来て楽しめた。自分はつくば国際で野球をやりいろんな面で変わり成長出来て良かった」と高校での野球生活を振り返った。 成嶋蓮主将は「先取点を取って逃げ切りたかったが、初回のエラーで流れをつかめず大量失点になってしまった。投手としては思い通りに投げられた」とし「先輩、後輩関係なくみんなでコミュニケーションを取って仲の良いチームだった。明後日から兵庫県淡路島で開催される女子高校野球全国大会に出場する部員もスタンドで熱い声援を送ってくれた。部員以外にもサポートをしてくれた人たちに感謝したい。辛い時期もあったけど最後までこの仲間と戦えて良かった」と話した。  つくば国際の伊藤徹監督は「初回から固さがあり、力を出し切れなかったのが残念だった。強豪相手に勢いを持ってこられなかった。先発の小野に関しては自信を持って投げてくれれば良かったが、そこが強豪校相手という意識が強かった」と述べる一方「2回戦で勝てなければ水戸啓明と戦えなかったので、水戸啓明と戦えたことは彼らをほめたい。そこでもう少し力を出せるような指導が出来るようにするのが私の課題」と話した。引退する3年生には「部員が少ない中、いろんな思いをしながらここまでやってくれてありがとう」と感謝の言葉を述べた。(高橋浩一)

常総学院 5回コールドで鹿島に勝利【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は17日、4球場で3回戦8試合が行われた。J:COMスタジアム土浦の第2試合は、常総学院が鹿島に11-0で5回コールド勝ちを収めた。 13日 2回戦 第2試合 J:COMスタジアム土浦常総学院 04412 11鹿  島 00000 0 常総学院は13安打11得点と効率の良い攻撃。8盗塁を決め、犠打・犠飛は計6本。セーフティバントやセーフティスクイズも含めるとバントは8本に及んだ。「重いグラウンドコンディションも考慮し、今日は自分たちの目指す野球をとことんやろうと。相手の隙を狙って、走塁や小技で積極的に攻める意識で、先攻を選んだ」と島田直也監督。 ただし初回は指示が徹底されず、簡単に打ちに行って凡退する選手もいた。本領発揮は2回から。5番・柳光瑠青が中前打、6番・横山義賢が右中間二塁打、7番・有川志裕がセーフティバント、8番・水口煌太朗がセーフティスクイズ、1番・浜崎怜央が内野安打、2番・渡辺康太が中犠飛で4得点。しかも一塁に出た走者は全員が二盗を決め、この回4盗塁を挙げた。 3回も勢いは止まらず、4番・佐藤剛希が左越え二塁打、続く柳本が左前打、横山が右前打。ここで相手投手が交替の後、水口が左前打、浜崎が中前打でまたも4得点。盗塁も2つ挙げた。 「出たら走るだけでこれだけ点が取れ、コールドにもできる。それが分かればどんな状況でもバリエーションのある試合ができる。これがずっと教わってきたうちの野球。練習試合ではこういう野球ができていたが、公式戦だと色気が出るのかヒットを打ちたがってしまう。怒られて気が引き締まったようだ」と島田監督。 今季のチームはメンバーの約半数を1、2年生が占めている。来年、再来年を見越し、経験を積ませたいとの島田監督の考えだ。この日の先発は1年生投手の箕輪蒼。「雨で登板が延期になったが関係なく、自分の気持ちで強く腕を振っていこうとマウンドに上がった」と箕輪。スライダーとチェンジアップを軸に、5回で55球を投げノーヒットノーラン、6三振を奪う好投ぶり。「投げる前は緊張していたが、先輩が守ってくれているので、伸び伸びと投げられた」との感想。「課題はいろいろあるが、ものおじせずストライク先行で投げてくれる。来年、再来年が楽しみ」と島田監督の評。 5回には代打で登場した2年生の小林銀士が、左翼線への適時二塁打を放った。「ネクストに立ったときは緊張したが、先輩の声を聞いて思い切りがついた。初球の甘い球を見逃してしまい、次のストライクを積極的に振っていった。次も自分にできることで役割を果たし、甲子園へ向かって1戦1戦戦っていきたい」と語っている。(池田充雄)

つくば秀英、江戸川学園破り4回戦へ【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は17日、前日の雨で継続試合や順延となった3回戦が行われた。J:COMスタジアム土浦ではつくば秀英が江戸川学園と対戦、5ー0で江戸川学園を破り、4回戦出進を決めた。試合は16日、雨で中断、翌17日、中断したところから継続試合となり、2日間に渡った。 16-17日 3回戦 第1試合 J:COMスタジアム土浦つくば秀英 002102000 5江戸川学園 000000000 0 つくば秀英は16日、先発投手の齋藤柾希が1、2回、打者6人を完璧に抑えた。打線は3回に2死満塁とし、打席に入った松崎勇吾はセンターへタイムリーヒットを放ち、2点を先制した。「チャンスで打席が回ってきたので、楽しんでリラックスしながらランナーを返す気持ちで低めの真っすぐを芯で捉えた」と松﨑。4回にはヒットで出塁した河嶋玲凰を2塁に置いて、投手の中郷泰臣がセンターへタイムリーヒットを放ち1点を追加しリードを3点とした。 3回から齋藤に代わりマウンドに上がった中郷も3回、4回を完璧に抑えた。5回表、つくば秀英の攻撃が終了した時点で雨が激しくなり中断。その後雨は止んだが、グランドコンディションの不良などから今大会初の継続試合になった。 翌17日はつくば秀英3点リードの5回裏、江戸川学園4番大河原聡太から試合再開。中郷は「嫌な感じはなくいい経験だった」としながらも、大河原に江戸川学園初ヒットを許した。しかし続く打者3人を抑え、6回までスライダー、真っすぐを中心に江戸川学園打線を1安打に抑えた。 打線は6回に先頭の石塚大志、石井清太郎の連続ヒットで出塁すると、稲葉煌亮がバントで送り、1死2、3塁のチャンス。続く河嶋玲凰がレフト前タイムリーヒットで1点、さらにに芦屋響もレフト前タイムリーで1点追加しリードを広げた。 先発の齋藤柾希から、中郷泰臣、熱田雄大、知久耀と4人の投手リレーで江戸川学園打線を3安打完封に抑えた投手陣のうち、前日の3回から6回の4イニングを1安打に抑えた中郷泰臣は「失点しなかったことが良かった。次も無失点でいきたい」と語った。 吉田侑真主将は前日からの継続試合について「いい雰囲気だったので(16日に)やりたい気持ちはあった。(17日の試合前に)5回を守れたら流れは来るとナインに話した。こういう試合を勝ち切ることも上に行くには必要。しっかり勝ち切れて良かった。次も一戦必勝でチャレンジャーの気持ちで勝ち切る」と語った。 つくば秀英の桜井健監督は「守備から入る難しい場面だったが選手がしっかり準備してくれた。1回止まった流れを(5回裏の)立ち上がりだけじゅうぶん気をつけて、0点で抑えた後に6回表に得点できたのが全てだった。継続試合は昨日の時点で想定はしていた。切り替えて試合をする難しさはあったが、昨日3点取れて0ー0からじゃないのが良かった。中郷泰臣は難しい情況の中で気持ちを切らさずに投げた。登板した4人の投手を稲葉煌亮が上手くコントロールしてやってくれた。次の試合も厳しい試合になると思うけど、守備からしっかりリズムをつくり1点でも多く取りたい」と語った。(高橋浩一)

夏の花火存続へ 1500年の古社 クラウドファンディングで支援募る

つくばの千勝神社  つくば市泊崎の千勝神社が、お盆の恒例行事である打ち上げ花火の継続に向け、クラウドファンディングで支援を呼び掛けている。神社の禰宜(ねぎ)松本哲弥さんは「花火は30年続く慰霊の行事。お盆の文化・行事の大切さを次世代に伝えるためにも、ぜひご協力をお願いできれば」と呼び掛ける。 千勝神社は、谷田川と西谷田川に挟まれた牛久沼に突き出る半島状の場所に位置し、関東では珍しい三つの社殿が横一列に並ぶ「三殿並立」の社殿や、高さ10メートルの木造大鳥居がある。西暦502年に現在の下妻市で創建された約1500年の歴史を持つ古社で、現在の場所に移ったのは1964年。下妻市には現在も元宮がある。正月三が日には全国から約5万人が、夏祭りには1000人余りが参拝に訪れるという。お盆の夏祭りは1993年から続いており、中でも、祭りの終盤に打ち上げられる約400発の花火は毎年の目玉となっている。 材料費高騰 200万円不足 しかし昨今の物価高騰により火薬の原材料価格が値上がり、花火開催の継続を脅かしている。火薬は多くを輸入に頼っており、ロシアのウクライナ侵攻による供給不安や円安が価格上昇に拍車をかけている。今回のクラウドファンディングでは、材料費高騰によって不足が予想される花火打ち上げにかかる費用200万円の協力を募っている。目標金額に達成しなくても、集まった支援金はすべてプロジェクト実行者が受け取ることができる。 松本さんは「今年の費用を見積もると、従来の予算ではまかなうことが難しいことがわかった。神社単独の負担では花火の継続は困難と判断し、クラウドファンディングで支援を募ることにした」と説明する。また「夏祭りは地元の方々のみならず、全国から訪れる崇敬者(信者)にとっても親しまれてきた行事。特に帰省中の家族連れが楽しみにしている恒例の場でもあり、地域とのつながりの場としても貴重な役割を果たしてきた。お盆のお祭りは、ご先祖さまと共に楽しむという意味がある。慰霊の場として、(お盆の風物詩の)文化を継承するためにもご支援をお願いしたい」と協力を呼び掛ける。(柴田大輔) ◆クラウドファンディングの詳細はこちら