【コラム・山口京子】定年後の暮らしを考える金額として、日本年金機構が発表する公的年金の受給額、国税庁の「民間給与実態統計調査」、総務省が調査している「家計調査(家計収支編)」などの数字があります。
2025年の公的年金受給額モデルでは、国民年金の老齢基礎年金は、20歳から60歳まで保険料を納付したとして、月額6万9308円。厚生年金は、会社員の夫と専業主婦の妻をモデルにした夫婦世帯計算で、23万2784円。その内訳は、夫婦2人分の老齢基礎年金と夫の厚生年金部分の9万4168円。
この金額の前提となる保険料納付の条件は、男性の平均的な収入(平均標準報酬=賞与含む月額換算=45万5000円)で40年間就業したケースです。単身男性の厚生年金月額(老齢基礎年金を含む)は17万3457円。単身女性では13万2117円と記されていました。
厚生年金の額は現役時代の保険料額や納付期間で決まります。国税庁の「2023年分民間給与実態統計調査」によると、平均年収は460万円、中央値では351万円でした。正社員の平均年収は530万円、非正規社員の平均年収は202万円です。
高齢夫婦無職世帯の家計の収支状況を総務省の家計調査で見ると、2024年では月3万4058円の赤字。2020年は1111円の黒字でした。2020年はコロナ禍で1人10万円の定額給付金が出たため、黒字になったと思われます。
6月には年金額改定通知が届きます
話題になった「老後2000万円」不足の根拠となったのは、2017年の総務省家計調査です。高齢夫婦無職世帯は月5万4519円の赤字で、これを30年続けると約2000万円が不足すると言われました。この時の調査では、貯蓄額平均は2000万円を超えていました。現在は約2500万円となっていますが、高額貯蓄者が平均額を押し上げているためで、中央値は1600万円台とされています。
当時、「老後2000万円」問題が独り歩きし、大問題になりましたが、最近は2000万円でも足りないとも聞きます。しかし、赤字が続くと思えば、私たちは節約したり、収入を増やすなど様々な行動に出るでしょう。統計数字は参考にはなるものの、大事なのはわが家の生活です。年金はどうなっているのか、それ以外の収入があるのかで、それぞれの家計は変わります。
6月には年金機構から「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」が届きます。そこには、改定前と改定後の国民年金と厚生年金の額が記載されています。そして、毎年資産のたな卸しをしましょう。ざっくり、資産額の時系列変化を意識してください。家計の足元をしっかりさせて暮らしたいものです。(消費生活アドバイザー)