土曜日, 7月 26, 2025
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里山でオタマジャクシと遊ぶ《宍塚の里山》123

【コラム・江原栄治】1月末、冷たい風が吹き抜ける里山の谷津田を訪ねる。うっすらと氷の張った水面を見つめながら、私は毎年のようにニホンアカガエルの産卵初日を探しに来る。このカエルは、真冬、水中に産卵する。冬も水がある宍塚の谷津田は希少な産卵場所となっている。

つえを頼りに、ふらふらと歩き回る老体ではあるけれど、心の中はワクワクと躍っている。だが、そう簡単には出会えない。空振りの日々が続く。

今年の初確認日は例年よりずっと遅かった。待ちわびた3月1日。その日から10日間ほど、首にカウンターを下げて、母ガエルが水中に産み落とす卵塊を数えて歩く。彼女たちは、一つにつき500から1000個もの受精卵を、寒天質に包んで産む。やがて、卵たちは発生を始め、オタマジャクシが孵(ふ)化し、変態へと進む。

出会うたびに、私は驚きと尊敬の念を込めて、心の中でそっと「ワンダフル」と声をかける。命の不思議さに胸を打たれる瞬間だ。

言うまでもなく、母ガエルにとっても、これは宇宙で一度きりの不可逆な時間体験なのだ。産卵の日も、孵化の日も、足が出て、手が出て、尻尾が消える日も、カエルとして水を離れるその日も、そして命を終えるその日も、そのすべてが毎年違う。誰にも予測も確定もできない。

命は、天候や環境、そのすべての「つながり」の中で、一期一会の出会いを繰り返す。私はただ、それに寄り添い、生き、そして死ぬだけなのだ。

田植え前の宍塚の谷津田(4月18日、筆者撮影)

こんなになるとは知らなんだ♪

自分は66歳のときに幸運にも胃がんが見つかり、胃の3分の2を摘出する手術を受けた。その後は、退職後の生きがいを求めて、さまざまな活動に取り組んできた。土浦市の社会福祉協議会が主催する「初めての野菜作り教室」や、我々の会の自然農田んぼ塾や親子が参加する田んぼ学校、古武道の「杖道教室」や「尺八教室」、そして最近は「食生活改善推進委員」としての活動。

気がつけば、もう16年。思い出はたくさんできたが、身についたものといえば…、正直ひとつもない。すべてが「年寄りの冷や水」だったかもしれない。それでも楽しかった。

82歳を過ぎた今、時間は3倍速で飛ぶように過ぎていく。朝夕には「♪こんなになるとは知らなんだ♪」と大きな声で歌いながら、笑い、そして少しだけ嘆いている。何をするにも、孫たちが心配してくれる。「ありがとう」と言いながら、その優しさをうれしさ半分、寂しさ半分で受けとめる。ありがたくも、どこか切ない、そんな日々だ。せめて、周囲には「嘆かない、張り切らない」を心がけて暮らしているつもりだ。

とはいえ、やっぱり私の中の「スズメ」は踊りを忘れない。自分という存在、この不思議な世界への興味と関心は、いまだに手放せない。古語にある「良き言葉で良き人生をつくる」という言葉を胸に、私は今も、「良き言葉」を求めて歩き続けている。命が尽きるそのときまで。(宍塚の自然と歴史の会 会員)

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