地域初の鉄筋コンクリート建造物
国の文化審議会(島谷弘幸会長)は21日、土浦市中央1丁目、日本聖公会土浦聖バルナバ教会礼拝堂を国の登録有形文化財に登録するよう文科相に答申した。95年前の1930(昭和5)年に建築された。土浦周辺地域で初の鉄筋コンクリート造の建造物とされる。
同日の審議会で登録有形文化財に登録するよう答申が出された全国135件の建造物のうちの一つ。夏に官報に告示後、登録される見通しだ。
同礼拝堂は鉄筋コンクリート造、鐘塔付き、平屋建て、面積175平方メートル。三角形を基本とするトラス構造の屋根を壁が支えている。外壁はグレー、内壁はクリーム色。2001年に屋根をふき替えるなど一部増改築されたが全体的に建築当初の状態が維持されている。
聖公会は16世紀に英国に誕生した英国国教会が始まりのプロテスタント教会の一つ。カトリックの「聖餐(せいさん)」を大切にする伝統と、プロテスタントの「聖書」を中心とする伝統から、カトリックとプロテスタントとの中間に位置するともいわれる。
日本では江戸時代末期の1859年に2人の宣教師が米国から来日して伝道が始まり、1887(明治20)年に日本聖公会が設立された。
土浦の教会は、日本聖公会が大正から昭和初期にかけて建築した各地の教会群の一つ。礼拝堂は全体的に質素でシンプルな内外観で、プロテスタント的な性格が強い一方、象徴的な装飾を大切にするカトリックの要素もある。

同教会の岸本望執事(48)によると、土浦では1902年(明治35)年に水戸在住の牧師が現在の土浦小学校正門付近の借家に最初の講義所を開いた。1930年、講義所近くの現在地に礼拝堂を建築、地域初の鉄筋コンクリート造と珍しかったことから、工事中は多数の見学者が訪れたという。桜川が氾濫した1938(昭和13)年の洪水の際は、礼拝堂も床上浸水した。現在も使われているリードオルガンは、礼拝堂が完成した翌年から演奏されているが、洪水の際、当時の牧師が一人でリードオルガンを担ぎ上げ、難を逃れたと伝えられている。
県内では水戸と日立の聖公会の教会も戦前に建てられたが、第二次世界大戦中、空襲に遭い、いずれも焼失し、戦後再建された。建築当初のまま残っている聖公会の教会は土浦が県内で唯一。
岸本執事は登録文化財の答申について「うれしく思う」と話し「(礼拝堂は)いつもオープンにしている。信徒の皆さんの宝物であると共に、土浦市民にとって心を落ち着ける場所として訪ねていいただければ」と語る。地域に開放され親しまれてきた教会で、内部も自由に見学できる。