【コラム・坂本栄】一昨年は洞峰公園問題で茨城県とつくば市の間にバトルが起きましたが、今年は県立高校問題で一波乱ありそうです。つくば市は人口増に伴い中学卒業者が増えているのに、県教育委員会の高校対策が場当たり的だからです。教育環境の良さが売りのつくば市にとっては放置できない問題です。
定員プラスはTX沿線だけ
昨年秋のつくば市長選挙の10日前、県教育委は「県立高等学校の今後の募集学級数・募集定員の見込み試算」というタイトルの資料を公表しました。この中で教育委は県内を12エリアに分け、各エリアの2030年の募集定員を試算しています。これによると、24年との比較で生徒募集がプラスになるのは「つくばTX沿線」エリアだけで、他エリアはすべてマイナスになっています。
マイナス幅が大きいのは「県北臨海」「水戸近郊」「県南北部」「県西南西部」などですが、県全体では24年比で1480人のマイナスになると想定しています。唯一プラスになるTX沿線エリアは120人増(3クラス分に相当)ですから、県全体をにらんで教育行政をしている部局は対応に苦慮しています。
エリア:①県北臨海②県北内陸③水戸近郊④県央臨海⑤鹿行北部⑥鹿行南部⑦県南北部⑧県南東部⑨県南南部⑩つくばTX沿線⑪県西北東部⑫県西南西部
この問題を解決するにはTX沿線に公立高を新設したらよいと私は考えています。118「…学園都市は公立高過疎地」(2021年10月18日掲載)では、県にその気がないのなら市立・県営高を建てたらどうかと提案しました。
既存高クラス増+遠距離通学
私の提案に比べると県教育委のTX沿線対策は場当たり的です。これまでは、つくばサイエンス高(つくば市谷田部)に2クラス増やす(+80人、23年実施)、牛久栄進高(牛久市東猯穴町)に1クラス増やす(+40人、24年実施)ことで対応してきました。筑波高校(つくば市北条)やサイエンス高に進学コースや普通科を設けたのも市民の不満をくんだ対策でしょう。
場当たりの極みは、足りないなら隣接市の県立高に通ったらよいと言っていることです。そして、常総の2校、つくばみらいの1校、守谷の1校、土浦の4校、牛久の2校、下妻の2校を通学先に挙げています。片道1時間の通学は当たり前という発想ですから、つくば市民は冷たく扱われたものです。ちなみに私が自転車で通った土浦一高は自宅から往路10分(上り坂)~復路5分(下り坂)のところにありました。
知事と市長のギクシャク
本サイトにコラムを寄稿している片岡さんは「…本来8学級増」(1月12日掲載)の中で、県の試算はつくばの中卒者のうち県立高に進む生徒の割合を少なめに計算していると指摘し、独自の試算では8クラス(320人分)増やす必要があると主張しています。五十嵐市長も県の試算に異を唱え、「足りていないことを数字で示したい」(1月14日の記者会見)と対県論争を宣言しました。
厄介なのは大井川知事と市長の関係が良くないことです。195「つくば市は孤立?…」(2024年11月4日掲載)では、「洞峰公園問題で知事と市長の間にコミュニケーション不足が生じ、知事が五十嵐氏に強い不信感を抱いた…知事と市長のギクシャクは(昨秋の市長)選挙後も続くだろう」と書きましたが、こういった関係も県教育委の施策に影響を与えているような気がします。
でも今夏には知事選挙があります。つくば市に対する県の冷たい態度が続くようだと、市の保護者は知事に冷たく対応するでしょう。洞峰公園問題(県営公園をつくば市に無償譲渡)同様、県立高問題でも抜本策が示されることを期待しています。(経済ジャーナリスト)