つくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道(本社・東京都千代田区)の渡邊良社長は28日、つくば市内で記者会見し、今年8月24日に迎える開業20周年記念の特別企画について発表した。安全・安定・安心の運行で沿線価値を高めてきたと20年間を総括。秋葉原から東京駅、つくばから土浦の両方向で立ち上る延伸論議には慎重な姿勢を崩さなかった。
利用者増も借入返済道半ば
TXは2005年8月に開業、20年間で累計21億人を運んだ。1日当たり利用者数は2023年度で38万人超、24年度は40万人を超えると見られ、コロナ禍で27万人台にまで減少した20年度から立ち直った。
渡邊社長は、沿線の人口増もあったが、自治体や企業・法人、利用者と鉄道事業者との「共創」によって沿線価値を高めてきた結果で、「今後も地域と情報交流、意見交換をするコラボレーション型での発展の方向をめざしたい」とした。
「TXは開業時こそ最新鋭の高速鉄道だったが、20年も経つと経年劣化から設備の更新、車両の更新が求められる。特に混雑緩和のため車両を6両から8両編成にする計画で北千住駅のホーム改修などに取り組んでいる」のを優先課題に挙げた。
順調な利用者増で当初計画より早く単年度黒字を実現したが、資金状況を依然険しくしているのが借入金の返済負担だ。同社によればTXは総事業費約8000億円で建設され、うち6000億円は借入金。無利子だが、毎年200億円を鉄道・運輸機構に返済している。今後20年以上続く見通しという。
このため新たな投資には慎重だ。秋葉原駅から東京駅まで延伸させる「臨海地下鉄」の構想があり、沿線11区市が参加する事業化促進期成同盟会も設立されている。具体化は国の運輸政策審議会の結論次第だが、渡邊社長は進展を見極める必要があるとした。「資金的に債務過剰にならないか、株主である沿線1都3県の自治体としっかり検討していきたい」
また茨城県で検討されているつくば駅からJR常磐線土浦駅(土浦市)への延伸については「茨城県が交通体系をどうされるのか、その検討結果を受けてTXは対応を考えるという立場だ」と述べるにとどまった。
ロゴマークと新キャラ発表
開業20周年の特別企画としては記念のロゴマークと新マスコットキャラクターが発表された。ロゴマークは都心部や緑の多い地域、マンションが立ち並ぶ居住区などのさまざまな場所と、走り抜けていくTXを組み合わせ、沿線の街や人々と共に成長してきた20年をイメージしたビジュアルに仕上げた。
新マスコットキャラクターは、力強く純粋で幸運を呼ぶと言われているユニコーンをモチーフにした。未来につながる鉄道であるTXを体現し、共に駆けていく思いを込めた。3月にもネーミング投票を開始する予定だ。(相澤冬樹)
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渡邊良社長の記者会見の様子