水曜日, 10月 1, 2025
ホームコラム冬の洗濯物と器《続・平熱日記》174

冬の洗濯物と器《続・平熱日記》174

【コラム・斉藤裕之】嫌いなこと。そのひとつが冬の洗濯物の長袖下着の袖に手を突っ込んで引っ張り出すこと。冷たい袖に手を入れると、やり場のない(誰の仕業かは明らかだけど)怒りがこみ上げてくる。寒さや冷たい水が年々苦手になってくるのは、歳(とし)と共に脂っ気が抜けてきたからかもしれない。

「氷河期を生き延びたのはポッチャリらしいわよ」とは、永遠のダイエッターである友人のマヨねえさんの言い分。ポッチャリかどうかは関係なく、人間が氷河期を生き延びたというのは本当だろうか。どう考えても、氷の世界をダウンジャケットも暖房もない人間が生き延びたとは私には考えられない。

そこまで遡(さかのぼ)らずとも、例えば、ちょっと昔の日本の家屋で冬を過ごすことさえ私には耐えられそうもない。そんなことを思いながら朝、薪(まき)ストーブに火を入れる。

さて昨年の春のこと。ある若い女性が古い家を買ってご主人と直して住むというので、その庭木の伐採と処理を引き受けた。その家は私の住まいからほど近いところにあって、大きな石の配してある庭に平屋の母屋が建っていた。敷地には槙(マキ)、ヒバ、モッコク、山茶花、カエデ、サルスベリなどの庭木が植わっている。

女性はその数本を残してほとんどを伐(き)ってほしいという。庭木程度と軽い気持ちで引き受けてしまったが、軽トラの荷台に山積みの枝を何度も運ぶことになった。結局、春から始めて、終えたのは夏前のこと。

「さいとうさんちで絵と器」展?

今、この家を暖めてくれているのはその庭木たちだ。普通は薪などにしない種類の木もあって、例えば金木犀(キンモクセイ)は意外に火の付きがよかったり、ゴツゴツ・クネクネの梅は火持ちがいい。月桂樹は乾くと軽かった。ストーブの中で揺らぐ火を見ていると、あの暑い中、汗をかいてヘトヘトになったことを思い出す。

そして、あのとき体から出て行った体温が回りまわって、今ストーブの中で燃えて体を温めてくれているような気がする。

先日、まだ置きっぱなしの残りの薪を取りにうかがうと、ご夫婦で風呂場の造作中。実はこの女性、大学の後輩の陶芸家で、今年はこの界隈(かいわい)で作品を発表したいという。そういえば…。10年以上前に我が家で自分の絵を展示したことを思い出して、「我が家でいかが?」と誘ってみたところ、まんざらでもなさそうだ。我が家の枯れ具合は器を並べる器として悪くないらしい。

ちなみに、器という字の真ん中はもともと「犬」という字だそうで、ご存じのように我が家には名(迷)犬パクもいるし、私の絵も飾って「さいとうさんちで絵と器」展なんてやってみようかという気になっている。

最近、家族内のグループメールを作った。その昔、洗濯機のふたに「袖出せ!」と殴り書きして貼ったことを思い出すが、メールには「袖はきちんと出して洗濯機へ」と書いてみた。

全く器の小さい人間だと自分でも思うが、そんな憂鬱(ゆううつ)も、苦手なパーカーのフードもカラッと乾かしてくれる薪ストーブの包容力に助けられている。(画家) 

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

コンパニオンアニマルと孤独の時代《看取り医者は見た!》45

【コラム・平野国美】私が今の仕事に従事して20年以上が経過し、世の中のシステムや価値観が大きく変わるのを肌で感じています。最近では、新型コロナ感染症が死生観や葬儀の在り方を変えました。これらの変化を良い、悪いと論じるのではなく、歴史的な事件や災害が生活様式を変えるのは世の常なのでしょう。 家族の形態も大きく変わりました。子供の頃に見ていた日曜日夕方の「サザエさん」のような、一つ屋根の下に多世代が暮らすご家族にお会いすることは、今や年間を通して一件あるかないかです。核家族化が進み、誰もが独り暮らしになりうる時代。サザエさん一家の同居ペットであった猫「タマ」の立ち位置は、ペットという存在をはるかに超えているのです。 ここ数年、訪問先様のお宅でペットにお会いする機会が増えました。以前はワンちゃんが多かったのですが、飼い主様の高齢化に伴い、散歩など体力的な負担が少ない小型犬が好まれ、やがて猫へと変わってきました。この変化については、以前、コラム27「ワンちゃんがネコちゃんに負けた日」(24年9月19日付)で報告したことがあります。 核家族化と独居化が進む中、「我々は誰と老後を暮らし、そして最期を迎えるのか?」という根源的なテーマが浮上しています。その問いに対する一つの答えが、彼ら「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」です。 犬や猫と人間の絆が「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンによって育まれることは、医学的にも解明されています。このホルモンは、ストレスの軽減や幸福感の向上、信頼感を深める働きがあり、触れ合い(スキンシップ)や会話によって分泌が促されます。驚くべきことに、オキシトシンは人間同士だけでなく、人と犬といった異種間でも、お互いの分泌を促進させ合うのです。 「孫を飼うなら犬を飼った方がいい」 太古の昔、人の集落に近づいてきた狼の中に、人懐っこい性質の個体がいたのでしょう。それらが家畜化されて犬になったという説があります。犬は他の動物に比べて白目の部分が多く、人とアイコンタクトを取るのが得意です。視線を交わし合うことで、人と犬は共に狩りをし、コミュニケーションを取り、共生の道を歩み始めました。 皆さんも、犬と見つめ合った時に、幸福感に包まれた経験はないでしょうか。まさにその瞬間、オキシトシンが分泌されているのです。もちろん、人と猫の間にも、このホルモンを介した関係が成立することが証明されています。 高齢化と独居が進む時代、唯一無二の存在として傍らにいるのが犬や猫なのです。彼らは今やペットを超え、「コンパニオンアニマル」と呼ばれています。以前、ある患者さんが私に、こんな意味深な言葉を漏らしました。「先生よ、孫を飼うなら犬を飼った方がいいね。裏切らないよ」。この言葉が持つ重みを、私たちはどう受け止めるべきなのでしょうか。(訪問診療医師)

防災拠点27年末完成へ 大屋根芝生広場は計画変更 旧総合運動公園用地

つくば市土地開発公社が外資系物流不動産会社、グッドマンジャパンつくば特定目的会社に売却した同市大穂、高エネ研南側の旧総合運動公園用地(約45ヘクタール)について、市議会全員協議会が29日開かれた。同市が活用する用地南側の防災拠点施設約4.2ヘクタールについて、来年夏ごろ着工し、27年末までに完成する見通しであることが示された。 一方、2022年8月の土地売買契約締結時点の事業計画が変更になる。当時は防災備蓄倉庫やアメニティ施設などの上に大屋根を架け、芝生広場とする事業計画案が示されたが(22年8月30日付)、約4ヘクタールの防災多目的広場と、平屋建て建物面積約2900平方メートルの防災備蓄倉庫を設置する。ほかにグッドマンがアメニティ施設を設ける。消防、警察、自衛隊などの活動拠点や災害廃棄物の仮置き場として使用可能な平場スペースとするためという。広場と倉庫は20年間、市が無料で借り受けるが、その後どうするかは決まってないとした。 一方、1棟目の施設として、来年春ごろにデータセンターを建設する工事に着工するという。28年春ごろ完成予定。 全協では、グッドマンが対面での住民説明会をこれまで一度も開催していないことに対して「説明会は普通、対面で説明し同意を得る。周辺区会と敷地境界100メートル以内の住民に紙だけ渡しただけではとうてい説明したことにはならない」(市原琢己市議)などの意見が出た。ほかに、無料で借りられる期間が20年間であることに対する懸念が複数の市議から出されたほか、物流倉庫ではなくデータセンターが最初に建設されることについて「住民説明会で市長は、物流倉庫ができると雇用創出ができるとおっしゃっていた。約束通りきちんとやっていただきたい」(飯岡宏之市議)、防災拠点についての市とグッドマンとの契約内容がまだ示されていないことについて「防災拠点についてなぜ未だに契約の条件がはっきりしないのか」(酒井泉市議)などの意見が相次いで出された。全協は酒井市議が黒田建祐議長に開催を要望していた。

ボランティアフェスタinつくば《けんがくひろば》16

【コラム・山崎誠治】10月11日、つくば駅近くのセンター広場やコリドイオで、「ボランティアフェスタinつくば」が開催されます。各ボランティア団体が、手話、点字、工作、楽器演奏などの体験、よさこい、ガマ口上などの活動発表を行います。スタンプラリーやモルック体験などもあり、子供も大人も楽しめます。今回は研究学園駅周辺の催しの紹介ではありませんが、皆さん、ぜひいらしてください。 みんなでつくるボラフェス つくばには200を超えるボランティア団体があります。つくば市ボランティア連絡協議会は、ボランティア団体の世話をする人ではなく、「共に活動していく仲間」の集まりとして、従来の「世話人会」から「推進チーム」へと団体名を変更しました。そして推進チームのスタッフだけでなく、登録ボランティア団体の方々も参加していただき、「ボランティアフェスタinつくば」実行委員会を結成し、いろいろな意見を取り入れ、充実したボランティアフェスタ(以下ボラフェス)を開催いたします。 最近、いろいろな場面で「つながる」という言葉を聞きます。ボラフェスは、ボランティア団体の活動を紹介することで、より多くの市民とつながるきっかけを創るだけでなく、各団体のつながりを深めることも大きな目的としています。 いろいろなつながりが始まる ただ、「つながりましょう」と言って、つながるものではありません。団体同士の交流会を開催するにしても、お互いを知り合えるような工夫が必要です。各団体が「団体の紹介カード(きっかけカード)」を作成し、「どんな活動をしているのか」「どんな課題があるのか」「どんな工夫をしているのか」など活動内容だけでなく、問題点やその対処方法など、他の団体を知ることにより、いろいろなつながりが始まると思います。 また、今までボランティア活動に参加したことのない学生や市民の来場者だけでなく、出展者も他の団体のブースに加わり、そのボランティア活動を体験するという「インターン制度」も行います。このように、知り・体験することにより、これからの団体の活動に役立てることができればと思います。 新しい出会いを見つける 子どもも大人も、ボランティア活動を世の中のためということだけでなく、自分のためとして、いろいろな活動に参加するきっかけの発見の場として、ぜひボラフェスを楽しんでいただきたいと思います。 もちろん、いろいろな団体のブースをご覧になり、「つくばではこんなことをしている団体があるんだ」と発見したり、各ブースのイベントを見たり、イベントに参加し、体験していただくことでも、子どもから大人まで十分楽しんでいただけると思います。(ボランティアフェスタ実行委員長) <ボランティアフェスタinつくば>・日時:10月11日(土)午前10時~午後3時・場所:コリドイオ・つくばセンター広場・ノバホール小ホール・主催:つくば市ボランティア連絡協議会、つくば市社会福祉協議会

花室から上広岡の突風は竜巻 水戸気象台 18日つくばの被害

つくば市で18日発生した突風について、水戸地方気象台は29日、現地調査の結果、プレハブ2階建て事務所兼倉庫が倒壊した同市花室から上広岡で発生した突風は竜巻と認められると発表した。一方、解体作業中の国家公務員住宅の足場の倒壊があった天久保から吾妻にかけて発生した突風の種類は特定に至らなかったとした。 花室から上広岡にかけては18日午後2時53分ごろ、屋根瓦が飛散したり、コンテナが横転するなどした。同気象台によると、突風発生時に活発な積乱雲が付近を通過中で、被害や痕跡は帯状に分布、突風は1分間程度だったという。竜巻の強さは1秒当たり風速45メートルと推定され、0~5まで6段階で強さを評価する「日本版改良藤田スケール」で弱い方から2番目のJEF1該当するという。 一方、気象研究所は、最新型の気象レーダーを用いて調査を行った結果、花室から上広岡にかけて、ガスフロントに伴う複数の竜巻が発生していたことが分かったと発表した。ガストフロントは積乱雲の下で形成された冷たく重い空気の塊が、重みによって、温かく軽い空気の側に流れ出すことによって発生する空気の流れ。今回のような現象を気象レーダーによって至近距離からとらえたことは極めて珍しく、同研究所は現象のメカニズム解明を進めるとしている。 天久保から吾妻にかけての突風は午後3時ごろ発生し、解体中の国家公務員住宅の仮設足場の壁つなぎ財が破断するなどの被害が発生した。突風について水戸気象台は、被害や痕跡、聞き取り調査から、被害をもたらした現象を推定できる情報が得られなかったとした。足場の壁つなぎ材の破断から、突風の強さは1秒当たり風速35メートルと推定され、「日本版改良藤田スケール」で最も弱いJEF0に該当するという。