月曜日, 12月 8, 2025
ホームつくば野口雨情没後80年 詩劇で生き方と作品を解く つくばの脚本家 冠木新市さん

野口雨情没後80年 詩劇で生き方と作品を解く つくばの脚本家 冠木新市さん

25日、山水亭でコンサート

大正から昭和初期にかけて多数の童謡や民謡を作詞した茨城出身の詩人・野口雨情の没後80年と、雨情が作詞した「筑波節・筑波小唄」の誕生95周年を記念する公演「雨情からのメッセージIII 詩劇コンサート 空の真上のお天道さまへの旅」が25日、つくば市小野崎の料亭、つくば山水亭で開かれる。

主催するのは、つくば市や土浦市などを流れる桜川流域の歴史や文化を掘り起こし、アートイベントを開くつくば市の市民団体「スマイルアップ推進委員会」(冠木新市代表)。脚本家でもある冠木さん(73)が企画、演出する。2部制で、前半は雨情の歩みを調べてきた冠木さんによる講演、後半は、雨情が残した詩や歌を元にした詩劇コンサートが開かれる。旧筑波町や雨情の故郷の旧磯原町にちなんだ民謡や、青い目の人形、赤い靴などの童謡のほか、土浦小学校校歌、水戸歩兵第二連隊歌など全部で19曲が披露される。

2曲と出合う

「空の真上のお天道さま」ー 。1945年1月25日に他界した野口雨情の遺稿から見つかったのが、このフレーズを含む一編の詩だった。雨情の作品や人物に魅せられてきた冠木さんは、長年、曲をつけられずにいた詩に着目し、作曲家の宮田まゆみさんと協力して、2023年、曲をつけて発表した。

桜川流域に残る歴史や文化に注目する冠木さんは、地域に残る伝説や逸話を元に数々の舞台作品などを手掛けてきた。野口雨情との出会いは、かつて雨情が残した筑波にまつわる「筑波節」「筑波小唄」の2曲との出合いからだった。

歌の背景を知ろうと、旧筑波町で聞き込みをするも、手がかりはつかめない。地元の人も「そんな歌は知らない」という人ばかりだった。なんとか手がかりをつかもうとする中で知ったのが、筑波を歌う2曲が、元は一つの曲だったことだ。「雨情は、なぜ、そんなことをしたのだろう」。冠木さんは、疑問を解こうと、雨情が生きた歩みをさらに調べていく。その中で見えてきたのが、多数の童謡や民謡を手掛けてきた雨情が持つ、ミステリアスにも思える意外な人柄と、冠木さんが関心を持ち続ける桜川流域とのつながりだった。

隊歌を作った思いは

今回のイベントでは、雨情が生きた時代とその時作った作品ごとに5章に分けて、雨情の人生を作品を通じて表現する。歌に合わせて披露されるのは、日本舞踊を始め、スリランカ舞踊やストリートダンスに精通する踊り手による舞だ。

「軍歌は作らないと言っていたはずの雨情が、戦中にペリリュー島(パラオ諸島の一つ)で1万人以上の戦死者を出した『水戸歩兵第二連隊』の隊歌を作っていた。戦争に対する雨情の思いも今回の企画で解き明かしたいと思っている」と冠木さん。今回の企画では、茨城出身者が多く参加した水戸歩兵第二連隊の生き残りだった人物と、その遺志をついだ子どもたちが、この『詩劇コンサート』を開いたという設定で舞台は進行する。観客も、企画の参加者になるという設定だ。

「今が『新しい戦前』だという考えもある。しかし、戦後80年を迎えてこれからも『戦後』であり続けるためのあり方が、雨情の生き方を通じて感じ取れるのではと思っている。雨情の魅力を多くの方に知ってもらう機会になればと考えている」と話す。(柴田大輔)

◆「雨情からのメッセージIII 詩劇コンサート 空の真上のお天道さまへの旅」は、25日(土)午後1時30分から、つくば市小野崎254、料亭「つくば山水亭」万葉ホールで開催。入場料は一般5000円、高校生以下は1000円。予約制。申し込み、問い合わせは電話090-5579-5726(冠木さん)へ。詳しくは、スマイルアップ推進委員会のホームページへ。

➡動画「雨情からのメッセージIII 詩劇コンサート 空の真上のお天道さまへの旅」

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

つくばサンガイア 東京Vにストレート勝ち

バレーボールVリーグ男子のつくばユナイテッドSunGAIA(略称サンガイア、本拠地つくば市)は6日、つくば市流星台の桜総合体育館で東京ヴェルディ(本拠地東京都稲城市)と対戦し、セットカウント3-0で勝利した。これでサンガイアは5勝2敗で東地区3位。7日も午後2時から同会場で東京Vと再戦する。 2025-26 Vリーグ男子(東地区)レギュラーシーズン(12月6日、桜総合体育館)サンガイア 3-0 東京V25-1625-2225-16 サンガイアは持ち前の高いブロックや強いサーブ、バランスの良い配球などで序盤から順調に加点。「自分たちの良いところを出せ、安心して見ていられた」と加藤俊介監督。唯一、第2セット終盤には相手の猛追を許したが、これはチームの若さが課題として出たという。「勢いに乗ったときは手がつけられないほど躍動するが、逆に小さなきっかけから流れを失うこともある。今日は連続失点でも崩れず我慢できたことが収穫」と加藤監督。タイムアウトを使い「相手を意識するのではなく自分たちの攻撃をしっかりやろう」と声を掛けたそうだ。 特に第3セットでは、村松匠や武藤茂らによるパイプ(ミドルブロッカーをおとりにしたバックアタック)が猛威を振るった。この日の決定率では65.2%を挙げ、いままで積極的に取り組んでいたこの技が、チームの武器になり始めていることが見てとれた。「チームとして意図的にバックを使おうとしており、今日は相手ブロックがミドルを厚くケアしていたので、特にパイプが効果的だった。上位チームと当たるときはもっと真ん中の攻撃を通せるよう、さらに攻撃力や効果力を上げていきたい」とセッターの浅野翼。前節の長野戦ではゲームプランの崩れを修正できず、自身も途中でベンチに下がるという悔しい思いをしただけに、今日はその思いを晴らそうと強気のトスワークが光った。 インフルエンザで不調があった梅本鈴太郎は、この試合では立ち上がりを支えた後、第1セット半ばで榮温輝に席を譲った。榮は今季初出場で「チームのシステムにしっかり入ろうと緊張したが、点を決めたらみんなが喜んでくれて楽しくできた」との感想。相手の動きを読んだ思い切りのよいブロックを得意とし、コースを突く変化の大きなサーブも持ち味の一つだ。「梅本、松林哲平、榮とタイプの異なる3人のミドルブロッカーがいるので、その日のコンディションや相手によって使い分け、攻撃の幅を広げることができる」と加藤監督。 翌日の再戦については武藤主将が「今日はコンビネーションの精度などに課題があったが、それをさらに詰め、自分たちの求めるバレーに積極的にチャレンジし、明日もストレートで勝ちたい」と意欲を見せた。(池田充雄)

進化するクリスマスツリーと変わらないもの《ことばのおはなし》88

【コラム・山口絹記】こどもが11月のうちにクリスマスツリーを飾らねばならないと言い出した。日曜の夕方から設置が始まったのだが、私は夕方から寝落ちしていたため、起きたらイルミネーション含め飾り付けが完了していた。 クリスマスツリーと言っても、ツリーが描かれた大きな壁紙である。つくばに引っ越してきた10年前の冬は、140センチほどのよくあるツリーを飾っていたのだが、抜け毛?抜け葉?いや落葉か?に毎年悩まされて、仕方なく捨てたのだ。 4半世紀以上前の実家に飾ってあったツリーも同じような症状に悩まされていたので、このあたりは進歩がないのだろうと思ったのだが、ネットで検索すると「葉が落ちないクリスマスツリー」なるものがいろいろ販売されている。どうやら人類共通の悩みであったらしい。 とは言え、こどもに加えて観葉植物や昆虫(カブトムシの幼虫)が増えて手狭な部屋にツリーを置くのはなかなかにしんどいものがあるので、今年も我が家はツリーの壁紙だ。飾り付けるオーナメントは(落葉のある)ツリー時代からの使いまわしなのだが、コイツはコイツでキラキラのラメが落ちる。 こどもはオーナメントをいじりたがるので、年末は家の中のそこかしこがどことなくキラキラするのだが、これはもう諦めねばなるまい。 そろそろ丸鶏の予約の時期 そう言えば、私が小さい頃、クリスマスツリーのてっぺんに飾る星が欲しいと父にねだって作ってもらったことがあった。毎年、その星の飾りをクリスマスツリーのてっぺんに差し込むのが楽しみだったのだ。 年賀状も卒業してしまったし、来年はお節も注文してしまおうか、などと話しているのだが、結局、それらは喜ぶ人が減ってきたからなのだろうと思う。楽しみにしている人がいるものまで削減していく必要はない。 クリスマスケーキの注文は済んだし、そろそろ丸鶏の予約の時期だ。こういうのはベタでいいのだ。(言語研究者)

日本人はロボットとの親和性が高い?《看取り医者は見た!》47

【コラム・平野国美】前回、介護ロボットへの私の懐疑的な視点と、友人が自作の「鉄腕アトム」に心を奪われたという対照的な出来事を紹介しました。この現象の背景を探る鍵は、業界紙が報じたドイツ有識者のインタビュー記事に見出せます。 その記事には、ドイツの専門家アルムート・ザトラパ・シル博士による次のような警鐘が記されています。「ロボットがケアについて自律的に判断してしまうと、人間をサポートするどころか、支配してしまうことになりかねません。『人間とは何か』という根本的な問題にも関わってくるでしょう」 この言葉は、私がデモで見た無機質なロボットから感じた「痛々しさ」の正体を的確に示しています。欧米では、ロボットはあくまで人間の作業を代替する「便利な道具」として捉えられており、それゆえに道具が人間を支配することへの警戒心が強いのだと理解できます。 しかし、友人がアトムに感じた「胸がキュンとなった」という、道具に対するものとは思えない感情は、この文脈だけでは説明がつきません。長い時間をかけて完成させたアトムは、スイッチを入れた友人に「やっと、会えたね」と語りかけました。この一言が、友人にとってアトムが単なる「道具」ではなく、幼い頃から物語を共有し、自らの手で組み立てた「魂のこもった存在」であったことを物語っています。 ここに、日本独自のロボット観が隠されていると考えられます。欧米の映画でロボットが悪の兵器として描かれがちなのに対し、日本では『鉄腕アトム』や『鉄人28号』のように、正義の味方、時には人間以上に豊かな感情を持つ存在として描かれてきました。戦後の日本人は、こうしたロボット観に深く親しんできたのです。 これは、業界紙の記事で指摘された「日本人はロボットへの親和性が高い」ことの一つの大きな理由でしょう。さらに驚くべきは、人間同士や人とペットとの絆を深めるホルモン「オキシトシン」が、人間とロボットとの関係においても分泌されることが確認されたという研究です。 道具も含め万物への畏敬の念 私たちが無意識のうちにロボットに「心」や「物語」を求め、そこに絆を見出す。この「心を通わせる」分野こそ、日本人が最も得意とするところかもしれません。 その根底には、日本人の独特の宗教観、すなわちアニミズムがあるのではないかと私は考えるのです。このアニミズムとは、自然や道具を含むあらゆるものに魂や霊が宿るという世界観です。具体的には、山、川、木、風など、数多くの自然や現象に神が宿る「八百万(やおよろず)の神」の考え方が神道の基盤となり、動植物だけでなく道具にまで万物への畏敬の念が深く根付いています。 現代において、この感覚は失われたように見えても、私たちの意識のどこかに今も残っています。それが、単なる道具ではないロボットとの強い親和性を生み出す源泉となっているのかもしれません。最近では、この癒し系ロボットと過ごされる方も出現してきました。(訪問診療医師)

ポルシェセンターつくば 6日 リニューアルオープン

ドイツの自動車メーカー・ポルシェの正規販売店「ポルシェセンターつくば」が6日、つくば市学園の森にリニューアルオープンする。5日には、運営会社でセキショウグループのザルツブルグ・モータース(本社・つくば市)の関正樹社長、ポルシェジャパン(東京都港区)のイモー・ブッシュマン社長ら関係者による開所式が同所で開かれた。 式の中でブッシュマン社長は「ポルシェのみならず、自動車業界そのものが電動化・デジタル化など多くの変化と課題に直面している。ポルシェとして未来に向けて準備を進めている。素晴らしい製品とサービスを提供することで信頼をいただき、自然と科学が共存する筑波研究学園都市で、今後の成長を目指すイノベーターとなっていきたい」と語った。 ポルシェセンターつくばは、2015年にポルシェセンター水戸(ひたちなか市)が移転し、名称を改め開店した。開店10年となる今回のリニューアルでは今年4月から既存の建物の改装工事を行ってきた。 同店は鉄骨造2階建て、敷地面積約8240平方メートル、延床面積約3089平方メートル。約1035平方メートルのショールーム内を「Eパフォーマンス(電動モデル)」「レーシングカー」などコンセプト別に色分けし、最新モデルをはじめ最大10台が展示される。また敷地内には最大150キロワットの出力を持つ電気自動車用急速充電器が引き続き設置され、有料で24時間365日利用できる。店舗奥には新たに168インチ(3840mm×2160mm)の大型LEDモニターが設置され、プロモーション映像などが映される。 ポルシェセンターつくばの栗原裕治店長は「つくばを起点にポルシェブランドの伝統と革新を力強く発信し、持続可能なブランドづくりを実現していきたい」と述べ、ザルツブルグ・モータースの関社長は「世代を超えてポルシェに乗っていただければ」と語った。(柴田大輔)