土浦で進路シンポジウム
文系と理系の選択や将来の進路に迷う中高生を対象に、理工系への「進路選択」を促すシンポジウムが14日、土浦市大和町の県南生涯学習センターで開かれた。昨年までのオンラインから対面での開催に切り替わり、講演やトークセッションで、研究者やエンジニアらが学業や研究、職場での「理系のリアル」を語った。
科学技術分野における次世代のグローバルリーダー育成を目指して県科学技術振興課が主催する「理工系進路選択応援シンポジウム」。2017年に理工系女子向けに開いたのが1回目で、コロナ禍の間に門戸を拡大してオンライン開催を続けていた。
土浦開催は今回が初めて。高校の多くで2年進級時に文理選択が行われているため、選択に悩む高校1年生をメーンに参加者を募った。保護者を含め、延べ120人が集まった。
基調講演で宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測研究センターの大木真人主任研究開発員が語ったのは「理学」と「工学」がクロスする職場のリアルだった。
「わからなかったことがわかようになる」のが理学、「できなかったことができるようになる」のが工学、とした上で、自らが関わる「だいち2号(陸域観測技術衛星2号、ALOS-2)」の地表を観測するレーダーになぞらえて話を展開した。
「合成開口レーダーは電波の反射で雲の下の地形や建物まで撮影できる装置だが、理工系の論理だけ主張しても予算は取れない。雲の下をみることで災害状況を把握でき、避難誘導につなげられる。アウトプットにアウトカムの説明までして初めて予算がとれる」と人工衛星開発という仕事のリアルを語った。
少年時代は宇宙飛行士を夢見たが、物理学を選んだ進路では数学につまづくなどして、コースは一本道ではなかった。最終的に学位をとったのはJAXA職員となってから。「回り道をして複数の分野を学ぶのは意味のあること。チャンスは数多くある」と結んだ。
「選択は1回限りじゃない」
文系と理系、さらに理系に進んだ後の選択のありようも多様にあることが、午後からのトークセッションのメーンテーマになった。4つのセッションで進路選択の経験談が語られた。
理化学研究所の山田郁子技師は心理学のカウンセラーになりたくで大学で哲学を専攻しながら在学中の実習授業で実験の楽しさに目覚め、生理・薬理心理学へ進路変更した。国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の藤田泰成ディレクターは高校では現代社会(公民)の授業が好きだったが大学では教養学部で法学や経済学の授業についていけず単位取得に苦労したという。
大学卒業後の就職が内々定していた山田さんも、教職課程を履修していた藤田さんも結局、大学院に進んだ。「研究を続けていると選択肢が見えてくる。研究は1つの答えを求めるが、応用の選択肢は実はたくさんあった」と会場の中高生らを諭した。
聴講していた水戸市の谷古都(やこう)雄大さん(水戸一高2年)は「自分は将来やりたいことがあって理系を選んだ。工学、理学の選択の後に職業の選択もあって、これからもよく考えていきたい」と語った。(相澤冬樹)