クリスマスイブの12月24日にサンタクロースにふんしたボランティアが各家庭を訪問し、プレゼントを届ける「チャリティーサンタ」が今年もつくばで実施される。一般家庭のほか、経済的な理由や病気などでクリスマスを楽しむことが難しい家庭にも手を差し伸べる企画で、2008年にNPO法人チャリティーサンタ(東京都千代田区)が立ち上げ、昨年までに全国33都道府県で5万人以上の子どもたちにプレゼントを手渡してきた。つくばでは同つくば支部ができた17年から活動みが始まり、「子どもたちに愛された記憶を残す」を合言葉に、社会人や学生のボランティアが今年も夢を届けに街に出る。
2018年から活動に参加する同つくば支部代表の会沢和敏さん(60)は、プレゼントを受け取る子どもの笑顔が心に残ると言う。「私たちも最初は、家庭を訪ねる際に不安や緊張があるが、子どもの純粋な笑顔や、家族の絆を感じる場面に出会うときに、こちらが豊かな気持ちになる」とやりがいを話す。
経済的困難を抱える家庭にも
会沢さんは、つくば支部代表(当時)で創設者の工藤咲希さんを取り上げた新聞記事を読み、経済的な理由でクリスマスを楽しめない家庭が身近にあることを知り、活動に加わった。「クリスマスにはそれぞれの過ごし方があっていい」とした上で、「それでもプレゼントを用意できない家庭の子どもには、クリスマスが厳しい1日になる。楽しみたいのにできないという家庭に対して、なんとかしたいと思った」と振り返る。
チャリティーサンタでは、事前に応募があった一般家庭を訪問し、各家庭が用意したプレゼントを事前にスタッフが受け取り、サンタクロースにふんしたボランティアが子どもに手渡す。同時に、家族から聞き取っていた情報を元に作成した子ども宛てのメッセージも手渡す仕組みだ。一方、経済的な困難を抱える家庭に対しては、参加する一般家庭から募る3000円の協力金を元に団体がプレゼントを用意する。集めたお金は、団体の「ルドルフ基金」として無償訪問のための運営準備費などにも充てられる。
団体ではその他に、様々な困難を抱える子どもに本を贈るために全国の書店と連携してスタートした「ブックサンタ」や、洋菓子店との協力で誕生日にホールケーキを届ける「シェアケーキ」などの支援企画を行っている。つくば支部では、地域で開かれる子ども食堂や、無料で子どもに勉強を教える「無料塾」などとも協力し、子どもたちと工作やダンスをする活動なども実施している。
ボランティアとして今年から活動に参加する筑波大4年の原悠子さん(21)は「貧困問題への関心から、つくば市内の子ども食堂の活動に関わったのが参加のきっかけ。ワクワクしている子どもの様子を間近に見ると、こちらが幸せな気持ちになれる。私が子どもの時に、両親が一生懸命、私を楽しませようとしてくれたクリスマスは、特別な日。自分も何かしらの形で子どもたちに喜んでもらいたい」と思いを語る。同じく、ボランティアの同大1年、井上もえなさん(20)は「大学入学前に『ブックサンタ』を書店で見たのがきっかけ。私が大好きだった本の思い出が、今度は違う子どもの思い出になるかもしれないと思いブックサンタに応募した。同じ団体が行うチャリティーサンタにも関わりたいと思った」と話す。井上さんは、途上国の貧困問題に関心があると言い、地域でのボランティア活動を通じて、将来は国際的な子ども支援活動にもつなげていきたいと目標を語る。
つくば支部では今年11人のボランティアが、応募があったつくば市や周辺地域で暮らす約20世帯にプレゼントを届ける予定だ。普段は市内の民間企業に務める会沢さんは、仕事の傍で続ける活動について「子どもたちにとってクリスマスの経験はほんの一瞬の体験。だがプレゼントを手渡される時に感じる豊かな気持ちは、子どもたちの中で大きい出来事になりうる。その豊かな気持ちが心に残り、将来彼らが作る未来へつながる何かのきっかけになれば」と言い、「誰かの幸せが誰かの幸せになる、思いがつながるのがこの取り組み。参加する学生たちも含めて、この活動に関わるすべての人が楽しく豊かな時間を過ごせたら」と語る。(柴田大輔)
サンタを呼びたい家庭、受付中
◆NPO法人チャリティーサンタつくば支部では、今年のクリスマス当日のボランティアフタッフの募集は締め切っている。来年度の募集は、2025年10月ごろから受け付ける予定。サンタクロースを呼びたい家庭の募集は受付中。詳細は、団体ホームページへ。また同団体つくば支部では、その他の活動に関わるボランティアスタッフを募集している。問い合わせはメール(tsukuba@vol.charity-santa.com)で。X(旧ツイッター)やインスタグラムで情報を発信している。