企業製品のデザインを手掛け、多数の特許を出願するなど独自のアイデアを形にするプロダクトデザイナーで、ベンチャー企業「発想法」(東京都港区)代表の黄慶浩さん(33)による、発想力を磨く授業「チート級の発想法体験会」が25日と28日、県立土浦三高(土浦市大岩田)で開かれた。黄さんは「新しいアイデアを生み出すには、ごみくずだと思うようなものも含めて、とにかくたくさんアイデアを出すことが大事」だと語る。
受講したのは同校普通科の1年生約120人。生徒が自ら問題意識を持ち、設定した課題や問いの解決に向けて取り組む「探究」の授業の一環だ。
この日使用したのは、黄さんが開発したA4サイズに近い用紙に横3つ、縦5つのマスが並ぶ「マスオ」という製品だ。蛇腹状に複数のページが繋がっていて、思いついたアイデアをマスに書き入れていく。生徒にはそれぞれ16ページ分が配られた。マスの大きさは、縦が約6センチ、横が約7センチ。正方形型の付箋の大きさに近い。
授業では、2035年の未来世界を想像し、黄さんが用意した課題をもとに、生徒がそれぞれ具体的な社会的な課題解決の形を考えていく。初めから一つの答えを出そうとするのではなく、思いついたことをマス目にどんどん書き連ねる。連鎖的に思考を膨らませていく中で生まれるアイデアをつかみ取るのが狙いだ。書き出すのは文章にこだわらず、単語やイラストなどなんでもいい。書き出す『量』が大事だと黄さんはいう。ページをめくらなければいけないノートでは見えにくい思考の広がりを、蛇腹にすることでいつでも一覧することができるし、離れたところにあるイメージを矢印や線で繋ぎ合わせることもできる。頭に浮かぶアイデアを付箋に書き出すと、一度に全部を見るには張り出すスペースが必要になる。黄さんが製品開発を仕事にする中で、より自由な発想を手助けするために生まれたのが「マスオ」だった。
AIが出せないオリジナルのアイデアを
「現在は、AI技術の発達により、AIが出せないようなオリジナルの発想が高校生にも求められている」と黄さん。「いきなり大きな答えを出さなくてもいい。考えるハードルを下げてもらいたい。思いもよらないアイデアが浮かんだ瞬間に感じる、『キター!』『うわー!』という喜びがある。若い人たちにもそんな、アイデアを出すこと、ものを作ることへの喜びを感じてほしい。自分が手掛けたもので人が喜んでもらえることも、自分にとっての喜びややりがい」
授業に参加した大海瑞希さん(15)は「自分でも思ってもみないアイデアが出てきた。またやってみたい」と言い、ラハマン・サミハさん(16)は「流れるようにアイデアが浮かんできたのが楽しかった」と笑顔を浮かべた。大山雄琉さん(15)は「初めは2、3個しかアイデアが浮かばなかったが、取り組んでいるうちに一つのアイデアから次のアイデアへとどんどん派生していき『ゾーン』に入ったような感覚になった。今回の経験を自分なりの勉強法につなげていきたい」と思いを語った。
土浦三高ではこれまで探究の授業の中で、土浦の魅力をアピールするために市内の商店を結ぶスタンプラリーを開くなど、設定した課題に対して、生徒自身が解決につながるアイデアを形にしてきた。学年主任の市川真人教諭は「自分の考えを『見える化』しながら思考が進んでいくのを実感できる。自分もやってみて楽しさを感じた。探求の授業は2年生になると、それぞれがテーマを決めて1年かけて取り組んでいくことになり、発想が大事になる。テーマを決めかねている人が多いので、その助けになれば」と語る。(柴田大輔)