水曜日, 11月 5, 2025
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常陸大宮市でオーガニック給食《邑から日本を見る》172

【コラム・先﨑千尋】「もっと広がれ オーガニック給食。農協も一緒に給食を変えよう」。オーガニック給食を全国に広めようと、11月8、9の両日、「第2回全国オーガニック給食フォーラム」が茨城県常陸大宮市で開かれ、全国から農協組合長や市町村長、担当者、有機農業生産者など800人(他にオンライン参加が400人、サテライト会場が50カ所)が参加した。主催したのは「同市オーガニック給食フォーラム実行委員会」。

フォーラムの初日は、最初に鈴木宣弘東大大学院特任教授と国際ジャーナリスト・堤未果さんの基調講演があった。

続いて、オーガニック給食を実現した東とくしま農協、行政と連携して有機農産物の生産に取り組む常陸農協の報告、常陸大宮市の給食調理現場、行政と農協の担当者、生産者による事例発表、「子どもたちを守り、地方を輝かせる環境時代の給食とは」と題するパネルディスカッションと、盛りだくさん。2日目は、有機野菜栽培圃場(ほじょう)の視察と有機農産物フェアの見学があった。

行政と農協がタイアップ

会場となった常陸大宮市が有機農産物を学校給食に取り入れるきっかけになったのは、2020年に現市長の鈴木定幸氏が、学校給食をすべてオーガニックにすることを公約に掲げ、当選したことによる。

常陸農協の秋山豊組合長も「高齢化が進む中山間地の農業を有機農業で活性化したい」と考えていたため、鈴木市長とタイアップして、同農協の子会社であるJAアグリサポートが学校給食用に有機野菜の栽培を始めた。最初は「有機は無理」という職員の抵抗があったという。

同市では昨年、「オーガニックビレッジ宣言」を行い、「有機農産物の生産から消費まで地域全体で取り組む。その柱が学校給食のオーガニック化」だとした。しかし、市単独では100%のオーガニック化は難しいので、近隣市町村とも連携し、全国的な産地リレーが必要になってくる、と鈴木市長は話している。

栽培地は、畑地総合整備事業により整備された三美(みよし)地区。初年度はジャガイモ、カボチャ、ニンジン、サツマイモなど計4トンが市内の小中学校15校の給食に提供され、昨年からはキャベツ、白菜、大根、カブ、タマネギも収穫している。有機面積は3.5ヘクタール。給食だけでなく、市内の道の駅「かわプラザ」などでも販売している。同地区では、農協の他に2つの企業がニンジン、ホウレンソウ、コマツナを有機で栽培している。

同市では、昨年からコメづくりも久慈川沿いの鷹巣地区で始めた。有機米を栽培する水田と慣行栽培の水田を区分けし、同地区では全国初の「有機農業を促進するための栽培管理に関する協定」が結ばれている。現在は3.9ヘクタール、学校給食用の50%程度しか賄えないが、27年には100%達成できる見通し。味噌や豆腐、醤油、パン、麺類などの加工品も有機化する考えだ。

農協と栄養士、調理現場、市役所の担当者が毎月会議を開き、数量や価格などを打ち合わせて、提供価格は市況の2割から5割増にしている。

有機農産物を家庭にも広げて

同市は、学校給食のコンセプトを「人の身体は食べ物で作られている。育ち盛りの子どもたちにとって食事は最も大切であり、安全でエネルギーあふれる食を子どもたちに提供することは大人の責任だ。子どもたちの健康を考えたとき、学校給食で安全・安心な有機農産物を食べることをきっかけに保護者の食育への意識を高め、家庭でも有機農産物を食事にとり入れる環境づくりが必要」だ、としている。(元瓜連町長)

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