原告「水害は人災」 国の責任問う
2015年7月の豪雨で起きた鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な浸水被害を被ったのは国の河川管理に落ち度があったためだとして、住民19人と法人1社が国を相手取って約2億2000万円の損害賠償を求めた控訴審の第2回口頭弁論が11日、東京高裁で開かれた。水害の被害を受けた住民1人が証人に立ち、控訴審はこの日で結審した。判決は来年2月26日に言い渡される。

閉廷後、記者会見した原告共同代表の片岡一美さん(71)は「水害は自然災害だと思っていたが、裁判を通じてこれは人災だと理解した。水害の責任を誰が取るべきなのか、裁判に勝つことで『鬼怒川水害判例』というような判決が出れば」と言い、原告代理人の只野靖弁護士は「日本全国で水害が頻発する中で、国や自治体のずさんな河川管理が放置されているところが少なからずある。鬼怒川水害はその最たるもの。これはまずいと司法が判断することは被害救済にとっても重要であり、この国の河川行政をより良いものにするためにも国交省は反省し、(河川行政のあり方を)見直していかなければいけない」と語った。

鬼怒川水害では、豪雨により常総市内を流れる鬼怒川堤防の決壊や越水があり、市内の約3分の1が浸水した。同市では災害関連死を含めて15人が亡くなり、住宅被害は全壊53軒、半壊5120軒、床上浸水193軒、床下浸水2508軒に及んだ。一審で水戸地裁は、国の河川管理の落ち度を一部認め、国に対して原告住民32人のうち9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。判決を不服として原告住民と被告の国の双方が控訴していた。
9月9日開かれた控訴審の第1回口頭弁論で住民側は、一審で主張が退けられた同市上三坂地区の越水・決壊した堤防について「鬼怒川流域で一番堤防の高さが低く、最も危険な場所だった」とし、堤防の改修工事が後回しにされていたのは国が誤った安全評価に基づいたためで、優先順位に問題があったなどと主張していた。これに対し国は「安全度などのバランスを見て順次、改修を行なった」とした上で、当該の堤防に改修が及ぶ前に「経験したことのない記録的な降水量」の豪雨にあったことで起きたもので、「国に法的責任はない」と主張した。(柴田大輔)