【コラム・浅井和幸】自分は体を動かすことが苦手だからやらない。パソコンは苦手なので部下にやってもらう。苦手なことはやらなくてよいので長所を伸ばそう。
苦手だと、苦しんで嫌々物事を進めることはつらいだけで何も身につかないので、その意味ではこれらの言葉は的を射ていると言えるでしょう。チームで物事を進めるときは、自分が苦手なことは得意としている人に任せて、他の人が苦手で自分が得意なことを行う方が効率的で成果が出やすいです。
さて、苦手とは何を指すものでしょうか? たぶん、自分と似た年齢や身近な人と比べたときに、劣っている能力での行為を指すのでしょう。それに加えて、感情的に、感覚的にやりたくないことに対して、苦手だからという言葉が出やすくなるものだと思います(好きなことや面白いことは苦手なことでも行うでしょ? 苦手だから好きなテレビを見ないとか、苦手だから面白いゲームをしないということはないはず)。
行動を起こさないことに対して、向いてないからとか苦手だからというのは、よい言い訳として通用しやすいということですね。面倒だからとか疲れるからやらないという言い訳をしたら格好悪いですから。
誰でも最初は初心者
しかし、長い人生の中では、人は練習を積み上げることで実力を上げることができます。誰でも最初は初心者なのです。例えば編み物などがとても器用にできる人が、実は手先が不器用であるという話はよく聞きます。好きだから続けているうちに、ある分野の手芸に対し誰よりも上手くなっていたという話です。
あのプロ野球のスタープレーヤーも、小学生のときからプロ野球で通用するような能力を持っていたわけではありません。周りの小学生よりは、もしかしたら数段上手だったのかもしれませんが、プロ野球選手と比べたら野球が苦手と言えるかもしれません。スタープレーヤーも幼少時は、プロ野球選手の大人に比べたら体もできていないし、知識もテクニックもない状況ですから。
プロ野球など、切磋琢磨(せっさたくま)してギリギリの挑戦をしているような世界はそうそうあるわけではありません。それに比べれば、私たち常人の生活では、ちょっと勉強すれば周りよりも知識が身に付くし、ちょっと体を動かせば周りよりも体力や技術が身に付き周りよりも得意と言える状況になります。100メートルを10秒切る能力は必要ありません。
腕立て伏せを毎日少しだけ行えば、半年もすれば周りの人よりも腕立て伏せが得意になれるかもしれません。動画サイトでちょっと勉強して、ちょっとだけ実践を繰り返せば、周りよりも掃除とか、料理とか、アプリ作成とかが得意と言えるようになるかもしれません。
あなたは、足が速くなりたいですか? 楽器が弾けるようになりたいですか? 外国語が話せるようになりたいですか? 人に好かれるようになりたいですか? 金持ちになりたいですか? あなたは何が苦手ですか? どの様な人になりたいですか? どの様な生活を送りたいですか?(精神保健福祉士)