日曜日, 8月 23, 2026
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蚕影山神社と金色姫伝説 養蚕が支えた千年の営み思う絵画展

11月1日からつくばで

養蚕にまつわる歴史を調べ、関わる地域で見た風景を独特の作風でキャンバスに描き込む東京都町田市在住の画家、加藤真史さん(41)の個展「穹窿(きゅうりゅう)航路ー蚕神、彼の地より来訪し桑海を渡り帰還す」が、つくば市千現、ギャラリーネオ/センシュウで11月1日から始まる。横浜市と相模原市に続く3カ所目の開催となる巡回展で、アクリル絵の具や色鉛筆で描いた作品15点ほどが展示される。茨城に残る養蚕にまつわる「金色姫伝説」と、全国の養蚕農家の信仰を集めたつくば市神郡にある「蚕影山(こかげさん)神社」の歴史などを通じて、養蚕が支えた千年以上にわたる人々の営みに思いを寄せる展示になる。

加藤さんは今回の作品作りのきっかけを、かつて関東一円で栄えた養蚕地をつなぐ街道を「シルクロード(絹の道)」と呼んだのを知ったことだと話す。江戸末期から第二次大戦末期にかけて、各地で作られた生糸は東京・八王子市に集められ、貿易港のある横浜市へと運ばれた。養蚕業は明治期、外貨獲得のため国を挙げて進められ、産業に関わる一帯は経済的に繁栄し、近代化する日本を支えてきた。しかしその後、ナイロン製品の普及などにより衰退し、1929年に約220万戸を数えた養蚕農家は、2023年には全国で146戸にまで減少している。

展示作品の一つ「郊外の果てへの旅と帰還#15(横浜本牧八王子鼻)」(加藤さん提供)

「郊外」の広がりと、消える養蚕のある風景

加藤さんは以前から、自身が暮らす街の成り立ちに関心を持ってきた。瀬戸物の産地として知られる出身地の愛知県瀬戸市は、歴史ある街並みが残る一方で、加藤さんが育った地域には、コンビニやファミリーレストランが国道沿いに並ぶ「どこにでもあるような、いわゆる郊外風景」だった。加藤さんは、故郷で見る風景が、全国で同じように広がることに疑問を感じ、各地の歴史を紐解きながら「郊外」について考えることが作品作りの大きなテーマとなった。養蚕にまつわる今回の作品は、加藤さんが2022年から作り続ける「郊外」を巡るシリーズ作「郊外の果てへの旅と帰還」の一環でもある。

「『郊外風景』は敗戦後、都市部の住宅不足から、国が団地を建てて周辺地域に人々を誘導してできたもの」だと加藤さんは説明する。「外貨獲得のために国策として拡大したのが養蚕業。桑畑が一面に広がる風景が各地にあったが、養蚕業の衰退とともに『郊外』が台頭した。各地を歩いて実感したのは、日本中で桑畑が『郊外住宅』に置き換わっていった歴史だった」と語る。

インドとつくばをつなぐ伝説

こうした養蚕と郊外の関係を調べる中で出会ったのが、各地に点在し、養蚕農家が信仰する「蚕影神社」と、その総本社でつくば市にある「蚕影山神社」だ。さらに、現在のインドにあたる天竺(てんじく)とつくばを養蚕にまつわる物語が結ぶ「金色姫伝説」の存在だった。伝説は、金色姫という天竺の王女が現在の日立市沿岸に流れ着き命を落とすと亡骸が蚕となり、筑波山の麓にたどり着いて養蚕が始まったというものだ。加藤さんは、養蚕の「創世記」となる伝説と、近代日本の起こりとなる「シルクロード」の物語を結びつけ、今回の絵画作品とした。

「国を支える主要産業として、多くの人が関わった養蚕業だが、開発が進みその痕跡を見つけるのも難しくなった。養蚕に携わる中で共有されていた文化や、劣悪な環境で働いていた女性の存在を知った。労働するにあたって必要とされた心の拠り所、信仰というものがあったはず」だと加藤さんは言い、「養蚕業に携わってきた多くの人々の内面を、私の個人的な作品を通じて見る人につなげる橋渡しにしたい」と作品への思いを語る。

今回の展示を企画した同ギャリーの山中周子さんは「筑波山麓の方は、蚕を『お蚕さん』と、『お』をつけるくらい養蚕を生きる糧にし、強い思いを持っていた。全国からつくばに関係者が参拝に来ていたという話も残っている。知らない人には知って欲しいし、知ってる人にも是非、新しい気持ちで作品を知って欲しい」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆加藤真史個展「穹窿航路ー蚕神、彼の地より来訪し桑海を渡り帰還すー第Ⅲ期 筑波巡礼篇」は、11月1日(金)~17日(日)の金・土・日曜、千現1-23-4 101、ギャラリーネオ/センシュウで開催。月~木曜は休館。開館時間は金曜が午後3~7時、土日は午後1~5時まで。入場無料。展示に関する問い合わせは、メール(info@neotsukuba.com)で。

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恐竜の島、どこよりも高い島… 夏休みの小学生 粘土で巨大な島づくりに挑戦

つくばで夏休み造形教室 夏休み中の小学生が、計600キロの粘土を使って、長さ5メートルの巨大な海に浮かぶ島づくりに挑戦する「夏休み造形教室」が21日、つくば市二の宮のギャラリー、スタジオ’Sで開かれた。子供たちは、彫刻家の川島史也 筑波大助教(36)と、同大で芸術を学ぶ大学生らにアドバイスを受けながら、恐竜の島、どこよりも高い島など、オリジナルの島を作り上げた。 同ギャラリーを運営する関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)と筑波大学との連携による芸術活動「スタジオ’S with T」による取り組みで、昨年は、粘土で巨大な塔をつくった。今年は午前と午後の2部制で、午前は18人、午後は16人、計34人の小学生が市内外から参加した。 川島助教が「昨年は塔、今年は島、どちらもトウと読めますね」と前置きし、「海に浮かぶ島を自由な発想で作ってもらいたい。土台が大事で確認しながら進めてください」と呼び掛けると、参加者は2班に分かれ作り始めた。 粘土はひと固まりが4キロ近くあり、小さな子供たちは重そうに運んでいた。子供たちはリゾート地、神社、恐竜の島、高い塔、高い山などを、パートごとに加工し、大学生のサポートを受け熱心に作業を進め、長さ5メートルの島が二つ、徐々に出来上がった。 市内から参加した小学4年の大曽根彩乃さん(10)は、高い山を作った。高くなるにつれ粘土が崩れてしまうことがあったが、大学生が土台を補強して完成した。大曽根さんは「誰よりも高くしたいのでどんどん積み上げていった。図工の授業は好きなので、将来はお姉さんたちのいる大学に行けたらいい」と話した。 小学6年の子供と来場したつくば市在住の高柳憲二さんは「みんなが楽しそうにやっているのがとても良い。子供の想像力は素晴らしいものがあって、それがよく表現されている」と語った。 子供たちの作業を手伝った同大大学院1年の田村将吾さん(23)は「普段は彫刻を作っている。子供と一緒に作業をするとこちらも楽しくなる。子供たちの自由な発想に驚かされる。今日の活動は自分の制作の参考になるのではないか」と話した。 川島助教は「創作の場面で細かいところに目がいってしまうことがある。土台や基礎が大事だということをわかってもらえると良い。途中で作業を止めて、確認する作業も必要だ。作品自体のリズムをとらえてほしい」などと語った。 完成後、全員で作品と共に記念写真を撮影。出来上がった巨大な島は最終的に壊し、元の粘土箱に収納した。(榎田智司)

筑波山から霞ケ浦へつながる「水と緑の骨格」《宍塚の里山》139

【コラム・森本信生】宍塚の里山(土浦市)を守る意義は、宍塚を一つの孤立した自然地域として捉えるだけでは、不十分だ。筑波山―宍塚、そして霞ケ浦へとつながる「水と緑のネットワーク」に位置づけてこそ、その価値が明確になる。 宍塚の里山は、森林、谷津田、畑、草原、ため池、水路など、さまざまな環境が組み合わされた多様な生物が生息する生態系である。例えばサシバのような猛禽(もうきん)は、営巣する森林だけではなく、餌となるカエルや昆虫が生息する水田や草地が必要だ。宍塚の生物多様性は、こうした異なる環境のつながりによって支えられている。 さらに宍塚は、筑波山系の森林、土浦・つくば地域の農地、霞ケ浦をつなぐ「水と緑の骨格」の重要な一部である。道路や宅地などによって分断され、孤立すれば、生き物の移動や遺伝的交流が妨げられる。宍塚を守ることは、地域全体の生態系ネットワークを維持することになる。 水のつながりも重要だ。宍塚に降った雨は、森林や土壌に浸透し、谷津、ため池、水田、水路などを経て霞ケ浦につながっていく。宍塚だけで霞ケ浦の水環境が決まるわけではないが、流域の森林、湿地、水田、ため池などを健全に保つ必要がある。里山は雨水を一時的に蓄え、ゆっくりと流す「グリーンインフラ」として、水循環や洪水緩和にも貢献している。 また、里山では自然と農業が一体となっている。森林から供給される水、ため池や水路が農業を支える一方、農業によって維持される水田や草地が、多くの生物の生息場所となっている。自然が農業を支え、農業が里山の自然を支えるという相互関係が存在する。 「自然遺産」「文化的景観」 宍塚の価値は自然だけにとどまらない。上高津貝塚や宍塚古墳群などが示すように、人々が自然と関わりながら暮らしてきた長い歴史がある。自然、農業、歴史、文化を一体として捉えれば、宍塚は「自然遺産」であると同時に、人と自然との関わりが刻まれた「文化的景観」でもある。 さらに、宍塚は生物、水、農業、歴史、人々の暮らしを総合的に学べる教育・研究の場であり、自然観察や農業体験、保全活動を通して、農家、住民、NPO、学校、研究者、行政などを結びつける地域コミュニティの場でもある。 したがって、宍塚を「土浦市に残された一つの里山」とだけ捉えるのは、その価値を小さく捉えすぎている。宍塚は、筑波山からつくば・土浦を経て霞ケ浦へとつながる水と緑のネットワークの中で、生物多様性、水循環、農業、歴史文化、教育、地域社会を結びつける重要な結節点となっている。 宍塚を守ることは、宍塚という一地点を守ることではない。筑波山から霞ケ浦へとつながる地域の「水と緑の骨格」を堅持し、人と自然が共生する流域の基盤を次世代に引き継ぐことである。その意味で、宍塚の里山の保全は、土浦・つくばの自然を守るだけでなく、霞ヶ浦流域全体の持続可能性を支える取り組みといえよう。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)