木曜日, 7月 3, 2025
ホームつくば市税収入 毎年平均10億円ずつ増加【アングルつくば市長選’24】上

市税収入 毎年平均10億円ずつ増加【アングルつくば市長選’24】上

つくば市長選が20日告示され27日投開票が行われる。市政の課題について3回にわたって連載する。1回目は市の財政を考える。

人口規模1.35倍に

つくば市の人口は2022年6月に25万人を突破、現在25万9000人超と増え続けている。県やUR都市機構などが地元地権者らの協力を得て2000年度から開始したつくばエクスプレス(TX)沿線の区画整理事業が進み、近年は国の低金利政策や住宅取得支援政策などに支えられた。TXが開業した05年の同市の人口が約19万1000人だったのと比べると約6万8000人増え、1.35倍増の人口規模になった。人口の伸びは国立社会保障・人口問題研究所の推計を上回るほどだ。

市内のTX沿線開発地区で最も早い2018年度に区画整理事業が完了し宅地などの販売が進んだ葛城地区(研究学園駅周辺)の人口は現在約2万人。計画人口2万5000人対し80%が居住する。同じ18年度に完了した萱丸地区(みどりの駅周辺)も計画人口2万1000人に対し77%の約1万6000人が居住。21年度に事業が完了した中根・金田台地区は8000人の計画に対し47%の約3770人が居住する。島名・福田坪地区(万博記念公園駅周辺)と上河原崎・中西地区は今年度、工事が終わり換地が実施される予定だ。市は20年改定の市未来構想で、あと24年間人口は増え続け2048年に約29万人にするという目標を掲げている。

7年連続不交付団体に

人口増と開発に伴って市民税と固定資産税など市税収入は年々増え、市の財政は今、かつてなく潤沢だ。2018年度から7年連続で、自分の税収だけで財政をまかなっていけるとされる不交付団体となっている。

2023年度決算によると市税収入は、市民税収入が約242億円、固定資産税収入が約226億円など計約511億9000万円。TX開業時の05年度の市税収入が計約338億2000万円だったのと比べると18年間で年間の約173億6700万円増と1.5倍に増えた。TX開業以降、毎年平均で約10億円ずつ、市の税収が増え続けてきた計算になる。

市税収入の増加に伴って市の財政規模も年々拡大、歳出決算額はTX開業時の05年度が587億だったのに対し、23年度は1125億9000万円と1.9倍に拡大した。23年度決算では、歳入から、歳出と翌年度への繰越を差し引いた剰余金である実質収支が40億8500万円あった。

市の2034年度までの中長期財政見通しによると、今後も2028年度まで毎年、市税収入が10億円ほど増え続け、その後も毎年数億円ずつの市税収増を見込んでいる。

補助費等2倍超に

では毎年10億円近く増え続けてきた市税収入をつくば市は近年、何に使ってきたのだろうか。「充当一般財源」という財政用語がある。使い道が特定されず自治体の裁量で使える市税収入などの一般財源を、自治体がどこに使ってきたのかを性質別に表した数値だ。

23年度決算で充当一般財源の性質別歳出を見ると、総額約642億円のうち最も多いのが市職員などの「人件費」で約183億円、次いで委託料や備品購入費などの「物件費」が約140億円、3番目は児童や高齢者、生活困窮者などの福祉や医療に必要な「扶助費」で76億円となる。

前市長時代の2015年度と23年度の決算を比べると、充当一般財源の歳出は全体で1.3倍に増加。性質別で金額の割合が最も増えたのは助成金や負担金、報償費などの「補助費等」(23年度は約63億円)で、2.07倍となった。補助費等の主な内訳は、県後期高齢者広域連合医療費負担金、つくバス運行負担金、保育士への処遇改善助成金など。今年度から新たに実施された高校生の通学定期代支援金・自転車通学支援金なども補助費となる。次いで増えているのが、道路や街路、教育施設、公園施設などの「維持補修費」(23年度は約8億6000万円)で2.03倍となっている。これに対し減っているのは特別会計や基金などへの「操出金」で0.68と3割超減少しているなどが特徴だ。

毎年増え続ける市民の税収を、どの政策に優先順位を付けては使うべきなのか。▽市長選に立候補している五十嵐立青氏は主な公約として①市役所のデジタル化など徹底した行政改革②全天候型のこどもの遊び場整備など安心の子育て・教育③高齢者の生活支援事業推進など頼れる福祉ーなどを掲げている。▽星田弘司氏は①地域産業支援とつくばブランドの発掘・確立・セールス②市民の命と生活、雇用を守り抜く③教育日本一の実現と徹底した子育て・女性支援ーなどを掲げている。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

14 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

14 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

武蔵美卒業生23人 個性あふれる98点一堂に 県つくば美術館

校友会茨城⽀部展  武蔵野美術大学(東京都小平市)を卒業した県在住者及び出身者で構成する同大校友会第22回茨城支部展が6日まで、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれ、会員23人が制作した油彩、日本画、水彩、工芸など98点の個性あふれる作品が展示されている。 同大を卒業した県在住者及び県出身者は約1000人おり、そのうち約30人が会員となっている。支部展は毎年開催されている。 黒川達也(65)さんは油絵「ジュンヌフィーユ」を出展した。「物語の1ページとして描いた作品。作品は決して完成するものでなく絶えず追及している。また絵を描くのは枠にとららわれない思考が必要で、技術だけで描くものではない」と話す。 黒川さんは、美人画で知られる洋画家の宮永岳彦(1919-1987)最後の弟子で、2016年と18年にしんわ美術展奨励賞を受賞したなどの実績がある。地域の絵画サークルの講師などもしている。「絵描きは目が大事、ある時は科学者、医者であるという観察眼が必要で、絵は装飾品になってはじめて生かされる」と語る。 今年はシーソーをかたどった大谷統一さんの木材作品「繋ぐ」が初展示となった。NEWSつくばコラムニストの川浪せつ子さんは昨年に引き続き、NEWSつくばに連載した「おいしい時間(ご飯は世界を救う)」「洞峰公園Ⅰ、Ⅱ」の水彩画の原画などを出展している。 会期中のイベントとして▽5日(土)午後1~3時=「モノづくりワークショップー万華鏡や缶バッジつくり」(参加費500円)▽6日(日)午後1時~2時30分=ギャラリートーク(作家による作品解説)を開催する。(榎田智司) ◆武蔵野美術大学校友会第22回茨城支部展は1日(火)~6日(日)、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは電話090-6923-7747(冨澤さん)へ。

昨夏の主力残るもチームを再編 霞ケ浦 高橋祐二監督【高校野球展望’25】㊤

第107回高校野球選手権茨城大会が5日開幕する。今年も、強豪の霞ケ浦、土浦日大、常総学院の名監督3人にインタビューした。第一弾は昨夏の茨城大会を制し、甲子園で念願の初勝利を挙げた霞ケ浦高校の高橋祐二監督。注目の指揮官に、新チームの仕上がりや今シーズンへの手応えを語ってもらった。 OBが活躍 ー昨年甲子園で初めて1勝を挙げました。それも相手は名門の智辯和歌山です。この結果、チームや学校、周辺の地域にどのような変化がありましたか。 高橋 中学チームから今までにない数の問い合わせがあります。智辯和歌山に勝つってことはそれだけすごいことなんだと、それくらいのインパクトだったのだろうと思います。 ープロ野球でOBが目覚ましく活躍しています。 高橋 千葉ロッテマリーンズの木村優人が5月にプロ初勝利を挙げ、先日は阪神との交流戦で高校時代にたどり着けなかった甲子園球場で先発を任されました。また、広島東洋カープの遠藤敦志は球速が最速151キロまで上がったそうです。つい先日1軍に呼ばれたものの雨で流れました。また近いうちにチャンスがあるのではないかと思っています。先輩の活躍が後輩たちの刺激になっています。 無駄失点が多い ー今年のチームの強みをお願いします。 高橋 去年の甲子園メンバーが、ピッチャー、キャッチャー、ショート、センター、レフトと、5人残っています。秋は準優勝になって関東大会に進出しました。一冬越えてその他の選手の成長もあり、ポジションをチェンジするなどチームをつくってきました。 しかしまだ私が求めるレベルまで達していません。特にディフェンス面は正直いって不安な部分が大きいです。無駄な点数を与えない守りの野球がうちの信条なのですが、今年は無駄失点が多い。作戦面でも、勝てるチームの時は監督の意図を選手がよく理解してくれているのですが、今年のチームはちぐはぐなことがあります。大会までには私の考えを浸透させたいと思います。 ー打撃陣の鍵を握る選手は? 高橋 荒木洸史朗と大石健斗を上位に据えていて、この2人が得点に絡んでいけたらと思っていますが、チーム全体として調子が上向きとは言えません。昨年もこの時期に調子が上がってきませんでしたが、かなり練習で追い込んで大会を迎え、勝ち上がるたびに奮発して頑張ってくれて甲子園の切符を手にすることができました。今年も同じように、大会を通して調子が上がってきてくれたらと思います。 2番手に伸びてもらうこと必須条件 ーエース左腕の市村才樹選手はどうですか? 高橋 市村は体重が増えてスピードもアップしましたが、スピードを追い求めて全体のバランスを崩して思うようにいかない時がありました。まさに春の県大会で明秀学園日立に痛打されました。 その後、やはりスピードではなく、本来の持ち味であるボールのキレを意識するようになり、崩していたバランスが整ってきました。最近では県外の強豪校とオープン戦をやってもまとまった投球ができています。 ー2番手投手に名前が挙がるのは? 高橋 右腕の稲山幸汰です。昨年うちが甲子園に行けたのは、調子が悪いときも2番手として使い続けていた眞仲が、県大会から甲子園にかけて覚醒して救世主になったことが大きな理由の一つです。今年うちが勝ち上がるためには、稲山にもっともっと伸びてもらうことが必須条件です。眞仲のような覚醒を期待して送り出したいと思います。 新キャプテン誕生 ー秋と春の戦いから、夏に向けて何か変えたことなどありましたら教えてください。 高橋 春を終え合宿を行う中でスタッフと相談し、夏には新しいキャプテンで臨むことになり、昨年の甲子園を経験した鹿又嵩翔をキャプテンに指名しました。まだキャプテン就任から2~3週間しか経っていないのですが、彼の持ち味を発揮してチームをうまく回してくれていると感じます。 ー近年、東北地方出身の選手が多いですが、理由は? 高橋 コーチでOBの白川拓海先生が仙台大学出身で、東北地方の野球指導者とつながりがあって、ありがたいことにうちを薦めてくれることがあります。最近では秋田県や山形県出身の選手がうちの門を叩いてくれています。 一つも気が抜けない ー今年の茨城の勢力図はどのように見ていますか? 高橋 春に優勝した常総学院が頭一つ抜けた存在だと思います。 ー組み合わせの所感をお聞かせください。 高橋 Aシードのつくば秀英はもちろん、Cシードの土浦日大にDシードの守谷に加え、ノーシードの鹿島学園や日立一、下妻一、水戸商など、上位常連校がひしめく、一つも気が抜けない厳しいゾーンです。投手陣には頑張ってもらって、打線の奮起を期待するしかありません。 甲子園で二度、三度と ー最後に、応援してくれるファンや地元の方々へメッセージをお願いします。 高橋 皆様に支えていただき、去年甲子園で初めて校歌を歌うことができました。日本全国の霞ケ浦高校の卒業生2万9000人に、少しでも勇気と元気を与えられたことと、やっぱり応援してくれている地域の方や、霞ケ浦高校のファンの方に、少しでも恩返しができたかなと思っています。 今年も甲子園で一度と言わず、二度、三度と勝って、全国に霞ケ浦高校の校歌を届けたいと思っています。まずは茨城大会で優勝できるよう精一杯戦います。 【取材後記】昨年は良い意味で開き直って大会を迎えた霞ケ浦高校が見事に茨城大会を制し、甲子園で歴史的な1勝を挙げた。一方で、今年は指揮官の言葉からもわかるように、ディフェンス面や戦術の浸透といった点で、チームづくりに難しさを抱えている様子がうかがえる。しかし、昨年もこの時期にはチームの調子が万全とは言えなかった。そこから大会を通して一体感を深め、結果として覚醒した姿は記憶に新しい。今年も夏本番でどのような進化を遂げるのか、引き続き注目していきたい。(伊達康)

愚痴が問題解決を遠ざける《続・気軽にSOS》162

【コラム・浅井和幸】私が代表理事をしている一般社団法人「LANS」という居住支援組織があります。住宅確保要配慮者=ざっくり表現するとアパートを借りづらい人=を支援する法人です。暴力から避難してきた人、障害者、高齢者、生活困窮者、仕事が続けられず社員寮を出なければならない人、車上生活を止め部屋を探している人などをサポートします。 6月現在、茨城県内では11カ所の法人が県から指定されています。全国では800カ所を超えていると思います。LANSは県第1号指定法人で、7月から8期目を迎えます。自治体や福祉事業者、病院や警察、不動産屋などから依頼を受けたりして、居住支援をしています。現在では10名ほどの要員が支援に当たっています。 支援には必要な知識もあり、勉強しながら進めなければなりません。分からないことがあって当たり前ですし、その時にならないと分からないこともあります。その場合、何らかの支障が出て支援できなくなるので、そこでやっと知らないことを知ります。例えば、インターネットを使った住まいの検索方法、生活保護や障害福祉の手続きなどです。 支援に行き詰まれば(できればその前の行き詰まりそうと感じたとき)、浅井に報告や相談をしてほしいと伝えています。それでも、なかなか相談に来ることが少ないので、こちらから聞いてみて支障が見つかることも多々あります。支援員の皆さんは素直で、ちょっとしたことでも相談したいと考えてはいるようですが、なかなか相談に来ません。浅井が忙しいと思い遠慮しているのでしょうか? 皆で愚痴に共感し慰める どこで相談が止まっているのか、気づいた点がありました。それは、支援に何かしらの支障が出てきたとき、支援員同士で支援について愚痴を言い、それを共感の気持ちで受け止め、慰めることで話が止まっていることでした。例えば、法律的な問題とか、福祉のシステム的な問題とか、就労するための年齢的な問題とか、〇〇市には部屋の空きがないという不動産屋の話を鵜呑みにして…。 そこで気持ちがすっきりして、解決方法を考えることなく、支援に当たる。気持ちが楽になっているから支障への感受性が鈍くなる。今起きていることは仕方がないと思い、相談から遠ざかるという悪循環が起きていました。 LANSでは月1回、全体会議を開きます。そのとき、支援員に上記のことを挙げ、「愚痴を言って気持ちが楽になっているのではないか。愚痴が出たタイミングが、浅井やこの会議で報告するタイミングだ」と伝えました。一般の生活では愚痴を言うことも大切です。しかし、それで問題解決から遠ざかっているかも知れない―と考えてみるとよいですよ。(精神保健福祉士)

原因は下水道管の老朽化と硫化水素 土浦 道路陥没事故

土浦市西真鍋町で6月12日発生した道路陥没事故(6月14日付、17日付)で、同市は7月1日、陥没の原因は、埋設されていた下水道管の老朽化と、下水から発生した硫化水素の影響だと断定し発表した。硫化水素の影響で鉄筋コンクリート製の下水道管の腐食が早まって損傷し、管の上の部分の土砂が損傷箇所の下水道管に流入し、地中に空洞が生まれたためという。 市下水道課によると、損傷した下水管は6月28日に補修工事が完了した。一方、道路の通行止め解除がいつになるかは現時点で未定という。 硫化水素が発生し下水道管が損傷したことが原因の道路陥没事故は、今年1月、埼玉県八潮市でも発生し、トラックを運転していた74歳の男性が死亡している。 損傷した土浦市の下水道管は、44年前の1981年に敷設された。老朽化に加え、現場から約1.6キロ離れた塚田ポンプ場から圧力をかけて送水し、水がはきだされる下流だったことから硫化水素が発生しやすかったとみられている。 下水道管は直径60センチで、地面から4.4メートル下に埋設されている。道路は長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没し、約33立方メートルの土砂が流出した。 道路陥没箇所の下水道管は2カ所に損傷があり、修復工事では、損傷が大きかったマンホールに近い西側について下水道管を長さ1.5メートルにわたって交換した。東側は幅約40センチの損傷部分を修復した。 現在、土を埋め戻す作業中で、今後、路面にアスファルトを敷設する。さらに陥没箇所の安全や周辺の安全を確認した上で、通行止めを解除する予定という。 今後の対策については、市が定期的に実施している道路管理パトロールの際に、古いマンホールについてはふたを開け、目視で土砂などがたまっていないかを点検するとしている。