【コラム・坂本栄】選挙運動では立候補者の実績や施策を広報(PR)するチラシが必須アイテムになる。進行中のつくば市長選で配られた2候補のチラシを入手、ざっと読んでみた。結論を先に言ってしまうと、3期目に挑む五十嵐立青さんはPRがなかなか上手で、県議から転じる星田弘司さんは総花的な構成になっている。
人口増加率1位:市政を再起動
五十嵐さんのチラシは、1ページ目の「人口増加率日本一」が目立つ。その下には、この2期8年の間に、企業立地が1275社、市内雇用が1万8594人、税収が77億円、それぞれ増えたとの惹句(じゃっく)が並ぶ。
多分、この記述は正しいのだろう。しかし、これらは五十嵐市政の成果なのだろうか? 国主導で造られた研究学園都市に、県主導で造られたTXが通じ、これは便利だと東京から企業と人が移り、それがコロナ禍で加速された。こういった流れの結果だろう。
一方、トップに「つくばで市政を再起動」を掲げる星田さんのチラシは総花的だ。①つくばブランドの確立、②市民の生活・雇用を守り抜く、③「教育日本一」の実現、④行財政改革で「筋肉質な市政」へ、⑤国や県との連携強化―と、5つの柱を立てているものの、何が力点なのかよく見えない。
「教育日本一」の目玉であるはずの公立高新設についても、小項目で「県と連携した県立高校問題の課題解決」と触れるにとどまった。挑戦を受ける現職者が使うような地味な表現といえる。
今、つくば市役所にある危機
市長選2候補のチラシに比べ、市長選に出るか悩んだ末に(コラム190参照)市議選の方を選択した元研究者のチラシは、つくば市政の問題点を突いている。
夏場に配られたものは、「今、市役所にある危機をご存知ですか?」で始まる。つくば市の職員数と人件費は他市よりも2割も多く、しかも管理職だらけで現場職員が少ない、という内容だ。内部告発で露見した不祥事(役所内の緩み)もこの辺に遠因があるのだろう。星田さんがこの問題を正面から取り上げないのは、挑戦者としての政治センスが疑われる。
元研究者の直近のチラシには、五十嵐さんのPR上手を取り上げた記述もあった。市民の税金を使って編集・印刷・配布する「市報」と「かわら版」をうまく使い分け、市民を情報操作しているという指摘だ。選挙PRも市政PRの延長上の市民操作なのだろう。
市議2期+市長2期の五十嵐さんはPR手法に長けている。本欄ではそのポピュリズム(市民受け狙い)手法を何度も取り上げてきた。市議2期+県議4期の星田さんは地域をコツコツ回る政治家だ。どちらが勝つにしても、市政を監視する議会に元研究者が殴り込みをかける構図は面白い。(経済ジャーナリスト)