生活保護行政をめぐって、つくば市で不適正な事務処理が相次いでいる問題で、元市議の塚本武志さんが市監査委員(高橋博之委員ら)に出した住民監査請求(9月7日付)の結果がこのほど出された。生活保護費の過払いや過支給は「違法・不当な公金の支出に当たる」と認定しながら、「市の損害が確定していない」などとして請求を棄却とした。一方で「市民の市政に対する信頼を大きく損ねた」とし、「不適正な事務を一掃するという覚悟を持って今後の業務に取り組む」よう求める意見を付けた。
監査請求は7月に出された。生活保護費の過払いや過支給によって市に生じる計約3842万円の損害額について、市長や歴代管理職が同額を市に返還するよう求めていた。9月には、昨年まで生活保護業務を担当していた現役の市男性職員が請求者代理人として異例の陳述を行い「不適正事務の原因は、市が発表しているような管理職の認識不足などではなく、ずさんな債権管理と、誤った支給が発覚するのを恐れた管理職の故意、重過失が原因だ」などと告発していた。
監査結果は9月27日付で出された。各誤支給に対しては、市が現在、生活保護受給者に対し返還を進めており、市の損害額はまだ確定しておらず「対象職員に対する損害賠償請求権は成立していない」などとした。さらに、市の損害が生じた場合、市は対象職員の損害賠償も検討すると主張しているので、市の損害が確定した後、職員の損害賠償責任を判断すべきだとした。
その上で再発防止策の検討として、統一的な手順で正確な業務遂行ができるよう事務処理マニュアルを整備し、制度の理解を深めるため、職員を外部機関への研修に積極的に参加させるなどを求めた。
監査結果に対し請求人の塚本さんは「残念な結果。損害額が確定してないと言っているが、確定している額もある。でたらめな福祉行政だったことを示しており、きちんとやってほしい」と話し、今後、住民訴訟の訴えを起こすか否かについては「関係者と協議したい」とした。請求代理人として陳述した市職員は「(結果については)残念。時効確定分の4分の1は市の損害額として確定しているので、もう少し踏み込んで議論していただきたかった」とする一方、監査委員が付けた意見について「あまり例を見ないものでしょうし、職員の責任について言及した点については一定の評価をしている」とした。
一方、五十嵐立青市長は11日の市長定例会見で「真摯(しんし)に受け止めたいと思っている、調査を進めながら速やかに改善を進めたい」とする一方、今後の調査のスケジュールについては明らかにしなかった。(鈴木宏子)