木曜日, 4月 3, 2025
ホームつくば手製の本通じ思い伝えたい 9人の作家が作品展 つくば

手製の本通じ思い伝えたい 9人の作家が作品展 つくば

25周年に

銅版画や木工、デザイン、イラストなどの創作活動に打ち込む9人の作家が、それぞれが作る手製の本を通じて思いを伝える作品展「ブックワームス15」が、つくば市天久保のギャラリーYで12日から始まった。各作家が作った本と、それぞれの専門分野の作品計約100点が展示されている。筑波大で芸術を学ぶ学生が中心になり1999年に始まった企画で、活動を始めて25周年になる。近年は2年に一度の開催で、今回が15回目の開催となる。

第1回から中心で活動し、同作品展を主催する画家で版画家の田中千夏さんは、25年間の活動を通じて「作家が本当に見せたい思いを本にしてきた。万人向けじゃないかもしれないが、流通する本にはない魅力がある。実際に手に取って作家の思いを感じてほしい」と語る。

99年に筑波大で開いた企画の第1回で展示した田中さんの作品

本当に伝えたいことを形に

田中さんは、日々の暮らしで感じるささいなことを書き留め本にする。シリーズ化する「それがどうした」や「mousouroku(妄想録)」は、書き留めなければ暮らしの中で流れていってしまいそうなその時々の思いを「定点観測的」に記録したものだ。「振り返ってみると自分でも面白いような恥ずかしいような」と言いながら、「私にとって手製の本は、自分が今、『いいな』と思っていることを考え、伝える手段。流通に乗らないものだからこそ好きなことができるし、作家が本当に伝えたいことを形にできる」と話す。「何かを作っているのが好きで、ほっとくと何かを作っている。作らないとやっていけない」とも言い、手製の本とともに、大学で学んだ銅版画、木を使ったオブジェ、手芸品など多様な作品を展示する。

今年1月に、あかえだいずみの作家名で絵本「ミコばあちゃん」(あのねブックス)を出版した、つくば市在住の絵本作家、倉持いずみさんは、一緒に暮らす2匹の猫との暮らしを手書きの絵と文字で本にまとめた。手製本の魅力について「頭に浮かんだことを紙に書いてホチキスで止めるだけでも本になる。何かにとらわれず、自由に作れるのが魅力。毎回展示に向けて、質感の異なる紙や、色々な製本の仕方も試せるのが楽しい」と話す。

大きさ、形、素材を変えて製本した丹野さんの作品「スモールマン」

4回目の参加となる日本画家の丹野香織さんは、前回の企画でも展示した、空を飛ぶことを夢見る少年とロボットの交流を描いたオリジナルの絵本「スモールマン」を、紙質やとじ方、サイズを変えて製本した3種類の本を展示する。「物語自体は変わらなくても、素材や本の形が変われば、ものとしての価値や意味が変化する」と話す。

石岡市の木工作家で画家の小田島久則さんは、知人のアイディアがきっかけになり、自身が油絵で描いたクマなどの動物をもとに絵本を作った。本の中には文字はなく、本を見た人が自由にセリフやストーリーを書き加えてオリジナルの一冊にすることができる。「これまでに4人の子どもが、自分でストーリーを書いてくれた。それぞれ、話が異なり個性が出ていて面白かった」と語る。

小田島さんの絵と木工作品

その他、40代で経験した自身の妊娠・出産体験を「母親学級」というタイトルで108ページの漫画にした、あべようこさんや、ダンボールの素材を生かした筑波大学芸術学系の元教授、笹本純さんらの作品が並ぶ。

田中さんは「本は、絵のようにパッと見てある一面が見えるものではなく、ページをめくることで物語としての深みや奥行き、時間の推移を感じる見せ方ができる。子ども向けの本だけでなくて、アーティストブックとしてさまざまなチャレンジができると思っている」と手製の本の魅力を語り、「25年続けて、一緒にやってきた人たちがそれぞれ歳を重ね、作品も変化している」とし、「作家が本当に見せたいものを、売れるかどうかを基準に考えずに作っている。その良さを実際に手に取って感じてほしい」と呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「ブックワームス(Book Worms)15」は12日(土)から20日(日)、つくば市天久保1丁目のギャラリーYで開催。開館時間は午前11時から午後7時(最終日は午後6時)まで。詳しくは、同ギャラリーのホームページへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

さよなら牛乳瓶《くずかごの唄》148

【コラム・奥井登美子】配達の牛乳屋さんから、「牛乳瓶が無くなって、ポリ瓶になります」という通知。森永乳業系は昨年から、明治乳業系は4月から瓶が消える。牛乳瓶を手でなでながら、なぜか涙が出てしまった。 東京の新富町で生まれて育った私の父は、近所にあった芥川龍之介の実家の牛乳屋へ、毎日、瓶の牛乳を買いに行ったという。近藤信行さんが山梨文学館の館長のとき、芥川龍之介展に誘われて行ってみたら、龍之介の小学生時代の手書きポスターに「牛乳を飲みましょう」というのがあって、皆で大笑いした。 102年前の関東大震災で家が焼け、我が家は新富町から郊外の荻窪に引っ越した。当時の荻窪は、震災で焼け出された人達にとって、とてもよい住宅地だった。 子供好きの父は、慶應の学生時代から近所の子供たちを集め、絵本を読んだり、水泳をしたりしていたらしい。母は震災の中、芝公園で兄を出産し、震災ノイローゼ。母の実家も焼け、6人の弟(斎藤茂吉の家に書生として入りアララギ派に貢献した小暮政次も弟の1人)たちを残して母親が亡くなり、精神的にも不安定で、なかなか子供が出来なかったらしい。 10年目に私が生まれてホッとしたらしく、次に妹、次に弟(加藤尚武元京都大学教授=環境倫理学)と、立て続けに出産している。私は1歳のとき、ジフテリアにかかって緊急入院。命は何とか取り留めたものの、ジフテリアの後遺症で喉が弱く、痛くて何も食べられないとき、父が作った牛乳ごはん(堅く炊いたご飯に牛乳を入れたおかゆ)が唯一の食べ物だった。 牛乳ごはんが私の常食 荻窪の家の隣にはノラクロ漫画の田河水泡氏のアトリエがあったが、父は、同じ荻窪区域内で、私を助けてくれた小児科勤務医の飯島先生の隣に引っ越してしまった。 夜中、私が40度近くの熱を出すと、父は私を抱いてタクシーを呼ぶ。飯島先生も乗って新宿の淀橋病院に行く。2~3日入院して、熱が下がったら帰る。その繰り返しだった。家に帰って来てからも喉が痛く、牛乳ごはんが私の常食だった。 土浦に嫁いで来て、私を救ってくれた飯島先生が牛久の飯島家出身ということを知り、びっくりした。龍之介の実家以来、牛乳瓶は私の食のシンボルだったのである。(随筆家、薬剤師)

29年春に「まち開き」 研究学園駅南の大規模開発 大和ハウス工業

6月の本格着工前に安全祈願 大和ハウス工業(本社・大阪市)は、つくばエクスプレス(TX)研究学園駅の南側隣接地(つくば市学園南2丁目)で進めている大規模複合開発「つくば学園南プロジェクト」の本格着工を前に2日、総面積15.5ヘクタールの用地内で安全祈願祭を行った。本格工事は6月から始まり、2029年春に「まち開き」を予定している。 同用地は日本自動車研究所(JARI)が保有していたが、23年12月、大和ハウスが142億円で取得した。同社によると、総戸数602戸の分譲マンションのほか、中高一貫校「茗渓学園」や学習塾「思学舎グループ」などの教育施設、スーパーマーケット「カスミ」などの商業施設、研究機関などの事業施設が入る。開発費は総額650億円。 全用地の3割は茗渓学園 研究学園駅から徒歩9分の場所に建つ分譲マンションは地上15階建て。6月に着工し、27年7月完成の予定。間取りは2LDK~4LDKから成り、ワーキングルーム、パーティーラウンジ、筑波山が望める屋上デッキなどの共用エリアを設ける。 開発の目玉は、旧東京教育大や筑波大学のOB組織「茗渓会」が経営する茗渓学園(つくば市稲荷前)が移転してくること。大和ハウスは同学園誘致のために、全敷地の28%に相当する4.3ヘクタールを確保した。同学園は帰国子女や留学生が多く、国際色が強いのが特徴。26年夏から新校舎建設に入り、学園創立50周年に当たる29年の春に新校舎に移る。 中央に3000平米の広場 安全祈願の神事が終わった後、五十嵐立青つくば市長の祝辞のほか、大和ハウスの村田誉之副社長、八友明彦茨城支店長、茗渓学園の宮崎淳校長・理事から説明があった。五十嵐市長は「市内の駅前に、このようにまとまった土地は残されていない。しかも、15.5ヘクタールと広く、人気がある研究学園駅から徒歩圏。この開発は駅南だけでなく、市全体のまちづくりにつながる」と、歓迎した。 大和ハウス側は「この規模の複合施設開発は当社でも最大規模。弊社、つくば市、筑波大学の産官学で開発し、29年春にオープンしたい」(村田副社長)、「商業施設と茗渓学園の間に3000平方メートルの広場を設ける。市民が集う場所として利用してもらいたい」(八友茨城支店長)などと述べた。 宮崎校長は「私学の良否を決めるのは、クオリティ(学校の質)、コスト(授業の経費)、アクセス(通学の利便性)の3つだが、新学園は駅から徒歩5分のところに位置し、アクセスは申し分ない。移転情報がすでに広く伝わり、これまで1500人で推移してきた学生数が最近では1600人に増えた。これを機に寄宿舎の収容力を増やし、1室2人から個室にする。学内の設備も大学並みに整える」と、意欲を見せた。(坂本栄)

「茨城いいね」って思えるチームに 新代表が抱負 アストロプラネッツ

知事を表敬訪問 5日の開幕戦を前に、プロ野球の独立リーグ、BCリーグに所属する「茨城アストロプラネッツ」(球団事務所・笠間市)新球団代表の小谷野宗靖社長らが2日、県庁を訪れ、大井川和彦知事を表敬訪問した。小谷野代表は「選手にチャレンジする土台をつくって、NPB(日本プロ野球)入りの夢をかなえるサポートをしてあげたい。野球だけじゃなく生活指導、感謝、気遣いも大事。私たちが見本になって『茨城いいね』って思えるチームになりたい」と抱負を語った。 同球団は昨年12月2日、茨城県民球団から、スポーツプロモーションやアスリート支援などを展開する「ケーダッシュセカンド」(東京都新宿区、小谷野社長)に事業譲渡された。 2日は小谷野新代表のほか、河西知之球団代表代理、秋川正佳選手、山田大河投手の4人が県庁を訪れた。 大井川知事は「(茨城アストロプラネッツは)これまでにもNPBに選手を送り出している。(ドジャースの)大谷の活躍もあり、野球人気がある。茨城県のプロ球団として活躍を期待している。頑張って下さい」とエールを送った。 今季から加わった土浦市出身の秋川正佳選手(常総学院ー駒澤大学)は「茨城で生まれて野球に感謝し、野球を通して夢と希望を与えたい。フルスイング、長打力が持ち味でホームラン王、日本一を取り、NPB入りを目指す」と意気込みを語り、かすみがうら市出身の山田大河投手(霞ケ浦高校)は「すべての球種で勝負できるので最優秀防御率を獲得したい」と力を込めた。 今年は3月4日から14日まで宮古島でキャンプを行い、その後は笠間でオープン戦を行った。開幕戦は5日にノーブルホーム水戸で栃木ゴールデンブレーブスと対戦する。 茨城アストロプラネッツは、飲食、農業、福祉事業などを展開するアドバンフォースグループの茨城県民球団が2017年に創設。19年にBCリーグに参入し、5年連続で選手がNPBにドラフト指名されるなど実績を残した。一方コロナ禍の2020年以降、観客動員数が減少し、その後もコロナ前の水準に戻すことができず、昨年12月、事業譲渡された。(高橋浩一)

あるだけ使っちゃう《続・気軽にSOS》160

【コラム・浅井和幸】小遣いをあるだけ使ってしまう。おやつをあるだけ食べてしまう。そのようなことで、子供のころに親に怒られた経験は誰にでもあると思います。ですが、大人になってもその癖(くせ)はなかなか治らない。 それどころか、優秀な人が集まっているはずの官僚制を俯瞰(ふかん)した法則で、パーキンソンの法則が70年ほど前に提唱されました。英国の官僚制の話らしいですが、予算や人や時間がある分だけ、官僚たちは増長していくという法則です。 具体的には2つの法則が提唱されました。第1法則:仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。第2法則:支出額は収入の額に達するまで膨張する。税金は、年度区切りの短期的な考え方、その年の収入は使い切るとの考えがあるからかもしれません。 私が法人や個人で対応している生活困窮者でも、短期的に物事を捉えて月の収入をその月で使ってしまい、数年に一度の車検やアパートの更新料、突発的な病院代が払えなくなる人がいます。また、毎日のガソリン代は工面できるけれど、家賃は払えなくなる人もいます。 さらに、月収をその月に使い切るだけでなく、給料の週払い・日払い、そして来月の収入を見越したクレジットカード払い、借金、給料の前払いになります。お金の計算は結構難しいもので、なかなか教育されない分野です。 まじめにやっていればよいというイメージだけで金銭収支を捉えている人も多いことでしょう。このように考え、借金は悪として受け入れない、上記とは反対の間違いにはまってしまっている人も多いはずです。財務諸表などの中の資産と負債の勉強まではなかなか手が出ないものですよね。 タイムパフォーマンス 話をパーキンソンの法則に戻して、皆さんも日々の動きに当てはめて考えてみてください。お金をあるだけ使っていないでしょうか。時間もあるだけ自分の意図しない使い方をしていないでしょうか。この法則の中では、1時間で終わる会議を2時間に設定すると、同じ内容で2時間使ってしまうとも言われているようです。 「タイパ」という言葉を使う方もいます。時間に対する満足度=タイムパフォーマンスの略です。映画や動画を3倍速で見る若者は、そこで浮いた3分の2の時間を何に使っているのでしょうか。もちろん、それが楽しい時間であればよいと思います。浮いた時間で、嫌な人のことや嫌な仕事のことを考え続けるよりはずっとよいでしょう。 短期・中長期的に、自分も周りも笑顔になれるような時間の使い方は何かと悩む時間をつくるとよいかもしれません。(精神保健福祉士)