土浦市在住の写真家、石川多依子さんの写真展「モノクロ語り・新川」が、土浦駅前の土浦市民ギャラリーで10月8日から開催される。新川は同市の市街地を流れる。2004年からフィルムカメラやデジタルカメラで撮り続けた新川の、上流から河口までのさまざまな表情を厳選し、57枚のモノクロプリントで展示する。
カメラと共に、時代を下り川下り
新川は、同市虫掛と田中町の間を流れる用水路の合流点を起点とし、真鍋や立田町、城北町、東崎町などを通り、霞ケ浦に注ぐ全長3.4キロの1級河川。土浦の街を散歩しながら撮り歩いている石川さんの、大きな撮影テーマの一つでもある。石川さんは2020年に「新川の今昔」という手記を書いている。
手記をもとに川筋をたどると、上流の消防署前の通りを過ぎたところの田中橋から、6号国道を渡る真鍋橋までの間には、2つの木橋がある。近くに旧・常陽新聞の社屋があった5号橋(通称・常陽橋)と、土浦二高前に架かる立田橋だ。「どちらも現在は橋脚部分が鉄骨ですが、以前は橋から橋脚まで全て木製だったので、とてもひなびた風情があった」と石川さん。5号橋は2018年に欄干が倒れ、しばらく通行できなかったが、昨年ようやくヒノキ材で再建された。立田橋の方はスギ材なので、ちょっと表情が異なるという。
真鍋橋の先は、旧水戸街道・真鍋宿通りに架かる新川橋、つくば国際大学高校前の新地橋へ続く。「道路や川に垂れ下がっていた多くの桜の枝が大胆に切られてしまい、景観は悪くなったが、それでも土浦で新川と言えば、桜の名所に変わりはない。高校生が行うプロジェクトにより、桜並木の下に菜の花の咲く範囲が年毎に広がっており、手漕ぎ舟や貸しボートなども見られるようになった」
城北橋を過ぎると川は少し左へカーブし、川幅を広げながら、ケーズデンキのある国体道路に架かる神天橋へ。ここからは真っ直ぐな流れとなって水門へ向かう。「マンション・ホーユーパレスの対岸には、当時は何艘(そう)もの舟がつながれ、地面には雑然と多くの漁用の網が置かれていた。早朝老人が舟を漕ぎだす光景が思い出される」
常磐線の鉄橋をくぐると、駅東の大通りに架かる天王橋。この手前から新港橋までの南岸には、かつて船溜まりがあった。「当時、停泊した幾艘もの舟や漁に使う網が干される光景があったが、今ではすっかりその姿を消し、現在では新川での漁は消滅したと思われる。河口先端では、鎮座する水神宮の鳥居が極端に傾いていた」
この鳥居は今では完全に倒れ、夏草に覆われたまま。歳月の流れを感じさせたという。(池田充雄)
◆「石川多依子写真展 モノクロ語り・新川」は10月8日(火)~14日(月・祝)、土浦市大和町1-1アルカス土浦1階、土浦市民ギャラリーで開催。開館時間は午前10時~午後5時。初日は午後1時から、最終日は午後4時まで。入場無料、駐車料金は2時間無料(駐車券を事務室に提示)。問い合わせは電話029-846-2950(ギャラリー事務室)へ。
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