映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」の主要ロケ地だった美浦村にある旧海軍の鹿島海軍航空隊跡と霞ケ浦を巡るツアー「ゴジラ-1.0霞ケ浦水上大作戦」(県観光物産協会主催)が14日から始まった。国内外の「ゴジラファン」を呼び込みながら、希少な戦争遺跡の継承につなげたいと関係者は言う。
水陸両用バスをラッピング
「入水します!」「オー!」ツアーガイドの呼び掛けに参加者たちが手を挙げて応じると、大型の水陸両用バスが水しぶきを上げて霞ケ浦に突入する−。ツアーでは、霞ケ浦に現れたゴジラを倒すため、ゴジラを太平洋へとおびき寄せるというストーリーに沿って、参加者たちが映画にも登場する戦争遺跡群と、霞ケ浦を水陸両用車に乗り巡っていく。
映画「ゴジラ-1.0」は2023年に公開されると、日本の作品として初めてアカデミー賞で視覚効果賞を受賞した。終戦間際から戦後が舞台の作品で、美浦村の鹿島海軍航空隊跡をはじめ、筑波海軍航空隊記念館(笠間市)、ヒロサワ運動公園本球場前(筑西市)など県内3カ所が主要ロケ地に選ばれた。茨城県は、都内からのアクセスの良さや広い敷地があるなどの理由から、映画やドラマ、CMなど多数の撮影が各地で行われている。県は2002年に「いばらきフィルムコミッション」を設置し、ロケ支援に力を入れ、誘致を進めてきた。
今回のツアーの舞台となる鹿島海軍航空隊跡地は美浦村の霞ケ浦湖畔に位置する。敷地内には、同航空隊の旧本部庁舎やボイラー室、自力発電所など、20施設以上の旧海軍史跡が残されている。同航空隊は1938年に水上機の練習航空隊として発足し、終戦後は東京医科歯科大学霞ケ浦分院の結核療養施設などに使われた。1997年に同院が閉院すると、長らく放置され、「心霊スポット」となるなど荒廃していた。2016年、美浦村が国から払い下げを受けて、一帯の史跡群を「大山湖畔公園」として整備し、一般公開されたのが昨年7月から。今回のツアー企画の共催団体「茨城プロジェクト」(金沢大介代表)が、指定管理者として公園を管理運営している。
「震電」コックピットを体感
ツアーでは、JR土浦駅から「特殊海防艇526号」と名付けられた水陸両用バスで陸路、同航空隊跡地を目指す。交通に不便を抱える美浦村への移動そのものを一つのコンテンツにしたもので、窓のない無骨な車両から霞ケ浦や広い田園風景を望むことができる。
現地に着くと、かつて荷揚港として利用された場所から霞ケ浦に入水し、霞ケ浦を約20分遊覧する。当時の姿を残す軽油庫内では暗闇の屋内に、「ゴジラ-1.0」制作関係者が監修した約6分間のオリジナル映像作品が投影され、映画にも登場する戦闘機「震電」をコックピットで操舵する気分を体感できる。その他、ロケ風景の写真、歴代ゴジラのポスター、実際の撮影に使われた「震電」のコックピット模型が展示されている。
インバウンド集客を期待
主催団体、県観光物産協会の鈴木友子DMO推進課長(53)は「インバウンドの集客を期待している。茨城は映画などロケが盛んで、それ自体が地域資源となっている。世界中で認知される『ゴジラ』をきっかけに、ロケ地と地域を関連づけた企画を通じて、地域の魅力を伝えたい」と話す。
「茨城プロジェクト」の金沢代表(53)は「全国に多数ある戦争遺構には壊されているものも多い。未来に残すためには、まず知ってもらうことが重要。映画をきっかけに、史跡への人の流れができ、人同士が結びつく場所になれば、存在する理由ができる。ここに対して多くの方に関心を持っていただき、考えてもらうきっかけになれば」と話すと、「(鹿島海軍航空隊跡の)軍事目的の使用は終わったが、これからどんな施設になるか、僕らが向き合うべきことだと思っている」と語った。(柴田大輔)
◆「ゴジラ-1.0霞ケ浦水上大作戦」は、12月22日までの土日祝日(一部金曜日)、午前と午後、1日2回実施する。土浦駅発着のバスツアーは、水陸両用バスでの霞ケ浦遊覧と映像による震電搭乗体験に、日本語と英語ガイド、8カ国語のパンフレットにオリジナルレインコートが付いて2万円(税込)。現地集合でのツアーは、水陸両用バスでの霞ケ浦遊覧と映像による震電搭乗体験のみで5000円(税込)。問い合わせは県観光物産協会(電話029-226-3800)へ。