【コラム・高橋恵一】自民党に対する厳しい支持率低下を受け、岸田首相は党総裁への再選を放棄し、次の首相でもある自民党総裁選が行われている。支持率低下の要因は、統一教会問題と政治資金の裏金問題の解明と関係者の処分がないことだろう。統一教会問題にしても、裏金問題にしても、安倍元首相の主導のもとに、不当な選挙活動が行われたであろうことは疑いの余地がなく、安倍一強と言われた現有議席の正当性さえも疑われることになる。
しかし、自民党は、支持率低下の要因解明に頬かむりして、新たな権力争いに国民の目をそらそうとしている。各総裁候補は、問題の解決ではなく、党首交代を逆手にとって自分の権力獲得に乗り出し、新首相就任直後の解散を予告して、政権選択選挙に持ち込んでしまった。
自民党の党首候補は勢いがよい。経済を活性化し、再度、世界トップレベルの経済力を取り戻す。防衛力を強化し、アメリカに頼るのではなく、日本が中心になって、世界の紛争を止め、世界秩序を構築する。政治資金の問題は、様々な議論をして、国民に理解してもらう(時間をかけて、うやむやにして、忘れてもらう)?
現実には、小泉政権以来の長期経済停滞の失われた30年。さらにダメ押しになったアベノミクスの輸出産業優先の円安政策。いずれも低賃金構造が内需不足・不況を引きずっての30年だ。経済政策の失敗で、GDPがドイツに抜かれ世界4位になり、間もなくインドにも抜かれる見通しだ。
世界の常識から遅れている日本
深刻なのは1人当たりのGDPが、世界38位と昨年より4位後退し、先進国の最下位レベルになっているのだ。アベノミクスは、安易な国債発行を続け、国債残高もGDPの2倍以上になっている。自分たちのお粗末な経済運営の失敗を棚上げにして、世界に冠たる経済大国に戻ったり、世界を席巻する防衛大国になるなど、どういう計算で考えられるのだろう。
1人当たりGDPでみると、この30年間に、ヨーロッパに確実に後れを取っているのだが、大局的な言い方をすれば、ヨーロッパでは社会経済政治分野などあらゆる場面で女性の活動が当たり前になり、男女の区分を論ずる意味がない状態になっている。
GDPは、1人当たりGDPの総計だから、働き手の中に、構造的な低賃金層を抱えている国のGDPが負けるのは当然だ。低賃金労働者の多くは、市役所の非正規職員や看護師、介護士など女性就労者だ。ヨーロッパでは、女性のあらゆる場面での活動を抑制することのないように、社会制度、労働環境、生活文化を改革して来た。それがジェンダーフリーだ。
配偶者の130万円の壁だの、選択的夫婦別姓、女性初の首相などの可否を議論していること自体が、日本が世界常識から遅れ切っていることを示しているのだ。
岸田政権は、企業に賃上げを要請しているが、市役所の臨時職員の給与も、看護師や介護士の給与も、政府が決定できるのだ。女性の賃金が安いのが当然という政治家は、これからの日本には不要なのだ。(地歴好きの土浦人)