【コラム・浅井和幸】まったく今の若い子たちは…。下の世代と接していて、うまく物事が進まないと出てくる言葉です。コミュニケーションは相互作用で成り立っていますから、ほとんどのトラブルはどちらか一方だけに問題があることはないと言ってよいでしょう。
ですが、まったく今の若い子たちは…という呪文を唱えると、年上の自分は悪くない、年下の人間が悪いのだと思い込めてしまうのです。さらには、自分が若いときはもっと大変な状況で、もっと立派に立ち振る舞えていたと錯覚することができます。相手に悪いことを押し付けることで、自分のストレスを緩和しようという、年上の世代の用いる常套手段と言えるでしょう。
「今の若い子たちは…」と言っている世代の若いころはどうだったでしょうか。一つの例を見てみましょう。今の30歳前後は「さとり世代」とか「ゆとり世代」とかと呼ばれることがあります。ガツガツしていない、気力がない、欲がない、恋愛や物への執着心がないというような評価をされる世代でしょうか。
この世代に対する70歳前後は、「しらけ世代」と呼ばれていました。熱くならず冷めている、ノンポリ、真面目な行いが格好悪いと反発する世代とのことです。この世代が社会人になり、上司になり、「ゆとり世代」を叱咤(しった)激励し、お前らは無気力だと圧力をかける場面もあったことでしょう。
見守って、信頼せねば、人は実らず
たまたま、分かりやすい二つの世代を取り上げましたが、時代の移り変わりで変化はあるものの、やはり年上の人間は、年下の人間に対してイライラして、自分に落ち度がないときには、「今の若い奴らは…」と言いたくなるのでしょうね。
私も50を何年も過ぎた「老害」と呼ばれても否めない世代ですから、重々気を付けなければいけないなと思います。と言っても、自由にやらせてもらいますけどね。
さて、20代だろうが、80代だろうが、「今の若い奴らは…」と言いそうになったら、下の昭和の言葉を思い出してみるとよいかもしれません。少なくても昭和の初めには、「まったく今の若い奴らは…」という考え方があった何よりの証拠で、今に始まったことではないという現実に気づくでしょう。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で、見守って、信頼せねば、人は実らず」(山本五十六)。(精神保健福祉士)