金曜日, 5月 1, 2026
ホームつくばつくば市選管「実施見送り」を最終決定 市長選・市議選のオンデマンド投票

つくば市選管「実施見送り」を最終決定 市長選・市議選のオンデマンド投票

三たび審議、いずれも不可

つくば市選挙管理委員会(南文男委員長)が2日開かれ、ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行く「オンデマンド型移動期日前投票」を10月のつくば市長選・市議選で実施するか否かについて審議が行われ、実施を見送ることを決定した。4月24日、6月3日に続いて3度目の審議となり、いずれも全会一致で不可とする判断が出された。今回が最終判断となる。

実施見送りの理由について4人の委員からそれぞれ「選挙事務にミスは許されない。市民一人一人のニーズに対応するのは大事で、そことの兼ね合いになるが、ミスを無くすため事務を煩雑にすることは避けた方がいい」「実証実験と本番は違う。実証実験の検証報告では選挙本番での利用者を多く見積もって80人と推定しているが、80人を超えた場合、対応できるのか。リスクを排除して万全を期した方がいい」「衆議院の解散総選挙と期日前投票の日程が重なることも想定される。市長選・市議選はオンデマンド投票ができるが、衆院選はできないということにはならない」などの見解が示された。

これに対し五十嵐立青市長は「これまで選管の提言を受け、それに対応して課題を解決してきたという認識だったので最終的にこのような決定がされたことに驚いている。期待してくださった障害当事者や家族に非常に申し訳ない。今後も引き続きあらゆる可能性に挑戦し誰一人取り残さない社会の実現を目指していきたい」などとするコメントを発表した。

市執行部が実施する計画だったオンデマンド投票の対象者は、自力で立ったり歩いたりすることができない高齢者や障害者。8月6日から9日に実施した実証実験には対象者約3000人のうち35人が参加した。実施見送りが決まったことで、対象となる高齢者や障害者は、市から配布される無料のタクシー券を利用し福祉タクシーを使って投票するか、寝たきりの場合などは郵便投票を実施することになる。

総合的に検討を

2日開かれた選挙管理委員会で、市政策イノベーション部は、8月6日から9日に実施した実証実験(8月6日付)の結果を報告した。利用者のニーズとして実証実験に参加した35人のうち91.4%が「10月の本番もオンデマンド投票を使いたい」と回答したなどと報告した。

これに対し市選管の委員から「雨の日は時間がかかるが(期日前投票所設置の時間内に)対応できるのか」「選挙公報をどこで読んでもらうのか」「(予約に応じて自宅まで迎えに行き期日前投票所まで送迎するサービスを実施しないなら)もはやオンデマンド(要求に応じて)という名称ではなく期日前移動投票になる」などの質問が出て、市政策イノベーション部が対応策などを一つひとつ答えていった。

選管の委員からはさらに、オンデマンド投票がネット投票へのステップになると位置付けることへの疑問が前回に続いて出され、「(オンデマンド投票を通して)どうやって公選法の穴をこじ開けようとするのか、8月6日から9日の検証結果にはネット投票に向かうステップが入ってない」「オンデマンド投票とインターネット投票とでは対象者が違うのではないか」などの意見も出た。オンデマンド投票ありきではなく、郵便投票のやり方など制度面も含めて総合的に再検討することが必要だとする意見も出た。

市議会からも懸念

同市は2022年、インターネット投票を看板事業に掲げ、政府からスーパーシティに指定された。インターネット投票にはなりすましや強要などの懸念があるなど総務省の理解を得られないことから、代わって市執行部は、オンデマンド投票をインターネット投票に向けたステップだと位置づけてきた。

オンデマンド投票実施に向けて市執行部は今年1月、市北部で実証実験を実施。今年3月議会で、市北部の一部地域で実施する計画で予算を計上した。一方市議会からも、公平性の観点から一部地域でのみの実施に疑問が出された。一部地域のみでの実施について市選管は4月24日、公平性の観点から時期尚早だとする判断を出した。

市議会からはタクシー券配布の提案も出ていた。市議会の意見や提案を受けて市は、市全域の移動困難な高齢者や障害者に期日前投票のタクシー券を配布する予算を計上(5月30日付)。タクシー券配布については選管で異議無く了承された。

その後、市執行部は計画を改め、市北部だけでなく市全域で、自力での歩行が難しい高齢者と障害者を対象にオンデマンド型移動期日前投票を実施する計画を立て、6月3日の選管に再提案した。これに対し市選管は再び「時期尚早」だとする結論を出した。

時期尚早の理由の一つに「市内全域で実証が必要」との意見があったことから市執行部は6月の市議会常任委員会で、市全域で実証実験をする計画を示し(6月25日付)、市は対象者約3000人にダイレクトメールを出し、8月6日から9日まで、申し込みがあった35人の自宅に投票箱を積んだワゴン車が出向く期日前移動投票の実証実験を実施した。市議会からは「どうやっても突き進むのか」など懸念の声が出ていた。

退職金でネット投票

一方で、インターネット投票をめぐって五十嵐市長は、自らの2期目の退職金約2039万円についてネット投票を実施し金額を決める条例案(8月26日付)を、3日開会の市議会9月会議に提案する。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

17 コメント

17 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

バイシクル・ダイアリーズ《ことばのおはなし》92

【コラム・山口絹記】大切な人から本格的な自転車を譲り受けた。いわゆるロードバイクというやつだ。防犯登録のため家の近くの自転車屋さんへと向かう道すがら、さっそくギアチェンジのやり方がわからない。軽くはできるのに重くできないものだから、高回転でペダルを漕(こ)いでいるのにスピードは徒歩と変わらない安全運転。前方から歩いてきた家族連れが怪訝(けげん)な顔でこちらを見ている。見せもんじゃねぇぞ。 登録手続きをお願いしながら手近な柱に自転車を立てかけようとすると、慌てた店長さんに制止された。(私の自転車の)フレームに傷がつくからやめてくれということらしい。「そんなたいしたものじゃ」と言いかけて、自分がこの自転車の価値を知らないことを思い出す。 無知を隠すつもりはないので、一からこの自転車の扱いを教えて欲しい旨を伝えると、店長さんが申し訳なさそうに「当店で購入されたものではないので、説明も有料になってしまうのですが」と言う。知識の提供に対価を支払うのは当然のことである。私は「払います。必要なものも全部買うので教えてください」と答えた。こちらはハナからいくらかかっても構わない腹づもりなのだ。 自転車のエンジンは自分自身 店長さんは自転車をスタンドに乗せると、丁寧にすべてのパーツの名称からその仕組みと役割、ギアチェンジの方法まで教えてくれた。また、年式を考えると、油圧ブレーキのオイルを交換した方がよさそうなで、ギアを切り替えるパーツも分解清掃した方がよさそうということらしい。そこまで自転車を操作しながら話していた店長は、立ち上がると私の顔を見て言った。 「正直に言うと、一度すべて分解して油を指し直して組み直した方がよいと思います。このバイクにはそれだけの価値がある。そうさせてもらえるなら、私もうれしいです」。私の答えはとうに決まっていたのだけど、先に聞いてみたいことを聞くことした。 「この自転車で、筑波山を登ることはできますか」「もちろん。3、4往復は普通にできます」。店長さんは誇らしげに答える。「それって、一度にってことですか?」。私が唖然(あぜん)として聞き返すと、「自転車のエンジンは自分自身ですから、もちろん自分自身を鍛える必要はありますが、このバイクはそれくらいのことを普通にこなしますよ」と、不敵な笑みを浮かべる。 ああ、この店に来て良かったと思った。ものごとの始まりにはいつだって、こういうやりとりが必要なのだ。私は「長く大切に乗りたいので、ぜひお願いします」と頭を下げつつ、「あ、空気入れもください。あと、空気の入れ方も」と付け加えた(言語研究者)

他食品の臭いが移ったと推定 牛乳の異味 土浦市学校給食

土浦市内の小中学校の学校給食に20日出された牛乳を飲んだ児童、生徒から「いつもと牛乳の風味が違う」など異味の申し出があり、そのうち8校の20人から体調不良の訴えがあった問題(4月22日付)で、同市教育委員会は30日、提供された牛乳の検査結果に異常はなく、異味の原因は、牛乳を製造したいばらく乳業(水戸市)が委託した先の冷蔵庫内で、野菜や果物など他の食品の臭いが牛乳パックに移行し異味を生じさせたと推定されると発表した。 これを受けて市は、4月21日から停止していた学校給食での牛乳の提供を5月7日から再開する。 同市学務課によると、いばらく乳業と第三者検査機関がそれぞれ、当日回収された牛乳や同社が保管していた牛乳の大腸菌群、生菌数、黄色ブドウ球菌などを検査した。検査結果はいずれも陰性だったなど異常はなかった。一方、風味については、いばらく乳業が官能検査を実施したところ、わずかな風味の差異があったという。製造設備や衛生管理に問題はなかったとしている。 同市はいばらく乳業に対し、冷蔵庫内で臭いの強いものと混蔵しないなど品質管理の一層の強化を申し入れたとし、いばらく乳業は、現在使用している委託先の冷蔵庫の運用を中止したとしている。 市によると、体調不良の申し出があった8校の20人は24日時点でいずれも通常通り登校している。

新業態のカフェオープン つくば市の建設業者

店内にガーデニングの新技術展示、営業時間外は時間貸し検討 つくば市内の土木・建設会社が5月9日、同市羽成の会社敷地内に新業態のカフェをオープンする。ガーデニングなども手掛ける浅野物産(浅野一重社長)で、浅野弘美専務は「郊外に立地するためカフェ単独での経営は採算的には厳しいものがあるが、店内でお客様とコミュニケーションし商談につなげるなど、企業全体としての相乗効果を考えたい」と話す。 カフェ店内や店頭には、ポット栽培の花が配置される。土を用いず、頻繁に水差しをしなくても保水を長期間維持できるスポンジと瓦チップを利用したポットで、ガーデニングの新技術を紹介する。地球温暖化を考える場とも捉え、来店客に温暖化対策を施した店舗であることを説明していく。カフェが営業していない時間帯は、店内スペースを団体や個人に時間貸しするなどの使い方も検討している。近隣の観光施設「つくば牡丹園」とも連携し、ちらしを置くなど相互に協力する。 カフェの名前は「Seasons(シーズンズ)つくばカフェ」。穏やかで心温まる豊かな時間を紡ぐ場所にしたいとネーミングした。6年前、中小企業診断士から、環境に配慮したカフェをつくったらどうかとの話があり、ずっとアイデアを温めてきた。昨年、実行に移した形だ。 建物は2階建てで、1階がカフェ、2階は事務所など。カフェの店舗面積は108平方メートル。客席は室内に20席、野外に15席設置する。2025年度の事業再構築補助金の採択を受け、自社で建築した。 メニューはドリンク、軽食を中心に、スープランチ、ホットサンドなどを提供する。お薦めはフルーツティー、ハーブティ、ソフトクリームなど。 浅野専務は「ガーデンニングも建築も自社で出来るのが強み。土木と建築がハード、会社敷地内にある庭・外構展示場『ここちテリア』がソフト、カフェがハブと位置付け、相互に連携させながら相乗効果を生み出していきたい」と話す。基本が建設業であることから、「居・食・住」を通じて心地よい暮らしと人のつながりを育む場所にしたい意向だ。 5月9日 ガーデンフェスタ 5月9日のオープン当日は花木の直売イベントなど「ここちガーデンフエスタ」を開催する。フラワーマーケットのほか、端材市、重機体験、いばらき若旦那のコンサートなどが催される。浅野物産は来年65周年を迎え、ガーデニング部門のここちテリアは今年10周年を迎えることから記念のイベントとする。 同社はこれまでも、全国の花木生産者を集めて直売イベントを開くなど敷地内のここちテリアでイベントを開いてきた。浅野専務は「以前は公共事業の受注がほとんどだったが、イベントを開催するようになったら、一般のお客さんも増えた。イベントはお客さんに事業内容を知らせる良い機会。当日はみなさんに楽しんでもらいたい」と来場を呼び掛ける。 浅野物産は1962年に運送業として創業、68年建設業にも事業の幅を広げ、2016年には、理想の庭づくりを提案する「ここちテリア」を始めるなど、幅広い活動をしてきた。会社敷地内にはすでにギャラリーや貸スペースもあり、親子リトミックや園芸教室に貸し出すなど市民活動も応援している。独自の企画として年に1回「ここちガーデンフェスタ」を開催している。(榎田智司) ◆Seasonsつくばカフェは、つくば市羽成418-3の浅野物産敷地内に5月9日(土)オープン。営業時間は午前10時~午後5時。定休日は火曜と水曜。9日(土)、10日(日)、11日(月)はオープニングデーのため通常メニューと異なる、14日(木)から通常営業。 ◆ここちガーデンフエスタは5月9日(日)午前10時~午後4時、同社敷地内ここちテリアtsukubaで開催。問い合わせは電話029-838-1128(同社)へ。

水戸市とつくば市の今年度予算を比較《水戸っぽの眼》12

【コラム・沼田誠】3月議会が議了を迎え、新しい年度の予算が固まりました。みなさんの税金が、どの事業にいくら配分されるか、自治体ごとに一斉に決まる季節。元広報担当としては、個々の項目よりも、市のトップが市民に向けて予算をどう語ったかが、とても気になります。 今回は、水戸とつくばの市長が2026年度予算をどのように語ったのかを見ていきます。その前に、両市の一般会計当初予算の大枠を確認します。水戸は1308億円で、2年連続して過去最大となりました。つくばは1227億円で、7年連続で更新してきた「過去最大」が止まることになりました。 ただ、つくばの市税歳入は593億円(+4.5%)と過去最大を更新しており、総額の減少は税収の頭打ちではなく、大型投資が一段落した結果に見えます。具体的には、TX沿線の教育施設整備が一段落しました。詳細は本サイトの記事「…つくば市26年度当初予算案」(1月30日付))をご覧ください。 対照的な両市長の「語り口」 では、両市はこの予算をどのように語っていたでしょうか。その語り口は対照的です。水戸市長は、最重要課題に「人口減少問題」を据えた上で、「選択と集中」の下、限られた財源を「みとっこ未来プロジェクト」と「若い世代の移住・定住加速プロジェクト」に重点配分すると宣言しています。 具体的には、「医療・福祉」「教育」「救急体制」「防災・減災」などの言葉が並びます。減りゆく人口に抗うために、暮らしの「今」の基礎を厚く守る構えと言えるでしょう。 一方、つくば市は「未来への持続可能な投資」をテーマに、「量的拡大から質の高いサービスへ」「誰一人取り残さない」と理念を掲げた上で、児童発達支援センター、陸上競技場、スマートモビリティ、芸術文化創造拠点などの事業を将来の果実として説明しています。 会見で市長は「新規事業に大胆な投資をするというよりは、これまで行っている事業を着実に未来へつなげていく」とし、「査定は非常に厳しくし、予算要求からはかなり削らなくてはいけなかった」とも述べました。「未来」を掲げ、「量から質への転換」として語り直す姿勢が印象的です。 事業のビルド&スクラップ さて、「SIMふくおか2030」という、自治体財政について体験するシミュレーションボードゲームをご存知でしょうか? このゲームは、福岡市を舞台に参加者が担当部長役となり、話し合いで事業を選び・削り、傍聴者のジャッジを受けながら破綻しないように予算を組むというものです。福岡市の元財政課長が各地で開いていた「出張財政出前講座」が7年前に土浦であり、私はその際に体験しました。 そこで印象に残っているのは「ビルド&スクラップ」という言葉でした。自治体の財政規模は無尽蔵ではなく、社会の変化や災害などの緊急事態に対応するには、既存事業を止めざるをえない状況もありえます。ある政策を行うということは、別のある政策を行わないということと、意識的に判断しているのです。 「今を守る」vs.「未来を強調」 「今」を守る水戸市、「未来」を強調するつくば市。その結果、予算に載らなかったものは何か? 予算を見るとき、そのことにも想像力を向けてみる必要があると思います。(元水戸市みとの魅力発信課長)