金曜日, 9月 19, 2025
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つくば市選管「実施見送り」を最終決定 市長選・市議選のオンデマンド投票

三たび審議、いずれも不可

つくば市選挙管理委員会(南文男委員長)が2日開かれ、ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行く「オンデマンド型移動期日前投票」を10月のつくば市長選・市議選で実施するか否かについて審議が行われ、実施を見送ることを決定した。4月24日、6月3日に続いて3度目の審議となり、いずれも全会一致で不可とする判断が出された。今回が最終判断となる。

実施見送りの理由について4人の委員からそれぞれ「選挙事務にミスは許されない。市民一人一人のニーズに対応するのは大事で、そことの兼ね合いになるが、ミスを無くすため事務を煩雑にすることは避けた方がいい」「実証実験と本番は違う。実証実験の検証報告では選挙本番での利用者を多く見積もって80人と推定しているが、80人を超えた場合、対応できるのか。リスクを排除して万全を期した方がいい」「衆議院の解散総選挙と期日前投票の日程が重なることも想定される。市長選・市議選はオンデマンド投票ができるが、衆院選はできないということにはならない」などの見解が示された。

これに対し五十嵐立青市長は「これまで選管の提言を受け、それに対応して課題を解決してきたという認識だったので最終的にこのような決定がされたことに驚いている。期待してくださった障害当事者や家族に非常に申し訳ない。今後も引き続きあらゆる可能性に挑戦し誰一人取り残さない社会の実現を目指していきたい」などとするコメントを発表した。

市執行部が実施する計画だったオンデマンド投票の対象者は、自力で立ったり歩いたりすることができない高齢者や障害者。8月6日から9日に実施した実証実験には対象者約3000人のうち35人が参加した。実施見送りが決まったことで、対象となる高齢者や障害者は、市から配布される無料のタクシー券を利用し福祉タクシーを使って投票するか、寝たきりの場合などは郵便投票を実施することになる。

総合的に検討を

2日開かれた選挙管理委員会で、市政策イノベーション部は、8月6日から9日に実施した実証実験(8月6日付)の結果を報告した。利用者のニーズとして実証実験に参加した35人のうち91.4%が「10月の本番もオンデマンド投票を使いたい」と回答したなどと報告した。

これに対し市選管の委員から「雨の日は時間がかかるが(期日前投票所設置の時間内に)対応できるのか」「選挙公報をどこで読んでもらうのか」「(予約に応じて自宅まで迎えに行き期日前投票所まで送迎するサービスを実施しないなら)もはやオンデマンド(要求に応じて)という名称ではなく期日前移動投票になる」などの質問が出て、市政策イノベーション部が対応策などを一つひとつ答えていった。

選管の委員からはさらに、オンデマンド投票がネット投票へのステップになると位置付けることへの疑問が前回に続いて出され、「(オンデマンド投票を通して)どうやって公選法の穴をこじ開けようとするのか、8月6日から9日の検証結果にはネット投票に向かうステップが入ってない」「オンデマンド投票とインターネット投票とでは対象者が違うのではないか」などの意見も出た。オンデマンド投票ありきではなく、郵便投票のやり方など制度面も含めて総合的に再検討することが必要だとする意見も出た。

市議会からも懸念

同市は2022年、インターネット投票を看板事業に掲げ、政府からスーパーシティに指定された。インターネット投票にはなりすましや強要などの懸念があるなど総務省の理解を得られないことから、代わって市執行部は、オンデマンド投票をインターネット投票に向けたステップだと位置づけてきた。

オンデマンド投票実施に向けて市執行部は今年1月、市北部で実証実験を実施。今年3月議会で、市北部の一部地域で実施する計画で予算を計上した。一方市議会からも、公平性の観点から一部地域でのみの実施に疑問が出された。一部地域のみでの実施について市選管は4月24日、公平性の観点から時期尚早だとする判断を出した。

市議会からはタクシー券配布の提案も出ていた。市議会の意見や提案を受けて市は、市全域の移動困難な高齢者や障害者に期日前投票のタクシー券を配布する予算を計上(5月30日付)。タクシー券配布については選管で異議無く了承された。

その後、市執行部は計画を改め、市北部だけでなく市全域で、自力での歩行が難しい高齢者と障害者を対象にオンデマンド型移動期日前投票を実施する計画を立て、6月3日の選管に再提案した。これに対し市選管は再び「時期尚早」だとする結論を出した。

時期尚早の理由の一つに「市内全域で実証が必要」との意見があったことから市執行部は6月の市議会常任委員会で、市全域で実証実験をする計画を示し(6月25日付)、市は対象者約3000人にダイレクトメールを出し、8月6日から9日まで、申し込みがあった35人の自宅に投票箱を積んだワゴン車が出向く期日前移動投票の実証実験を実施した。市議会からは「どうやっても突き進むのか」など懸念の声が出ていた。

退職金でネット投票

一方で、インターネット投票をめぐって五十嵐市長は、自らの2期目の退職金約2039万円についてネット投票を実施し金額を決める条例案(8月26日付)を、3日開会の市議会9月会議に提案する。(鈴木宏子)

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旅費条例改正案「市民の理解得られない」 国内や海外出張をする際につくば市長や市職員らに支給される旅費について定めた市職員旅費条例改正案が開会中の同市議会9月会議に提案されている。17日開かれた市議会総務文教委員会(木村清隆委員長)で同条例改正案について審議が行われ、市長が海外出張の際に利用する航空機の運賃について、現在の旅費条例がビジネスクラスまでとなっているにもかかわらず、改正案はファーストクラスまで利用できるようになることに対し委員から「市民の理解が得られない」などの意見が相次ぎ、同改正案は賛成少数で否決された。議会最終日の10月3日、本会議で改めて審議される。 同改正案は、国家公務員旅費法が改正されたのに伴って、同法にもとづき市の旅費条例を全面的に改正する内容。円安の進行などにより宿泊費などの上限も大幅に引き上げられる。 海外出張の際の航空機の運賃について現在の市職員旅費条例は「最上位の直近下位の級の運賃」(27条)と市独自に定め、市長はビジネスクラスまでしか利用できない。一方、来年4月施行予定の条例改正案は、海外出張の場合、市長には「最上級の運賃の額」を支給できるようになり、ファーストクラスを利用できるようになる。 17日の委員会での市人事課の説明によると「国家公務員の旅費法をよりどころに旅費を3段階で設定した。特別職は出張に伴う負担が大きいため長時間の移動時間を活用して体調を維持する必要があるためより高い上限を設定した。茨城県知事や他市・区を参考にした」などとし、「必ずしもファーストクラスに乗らなくてはいけないものではなくて出張に応じて適宜判断する」とした。 これに対し委員から「ビジネスクラスでも十分体調を養うことができる。ビジネスクラスとファーストクラスは値段が違い過ぎる。現在の条例の規定をどうして緩めるのか。五十嵐市長は(ファーストクラスに)乗らないと思うが、だれが市長になっても市民感覚に合わせたものにすべき」(小森谷さやか市議=市民ネット)▽「(3段階の運賃設定のうち)ファーストクラスに乗れるというのは内閣総理大臣と一緒になる。実際に乗らないとしても乗れるように(条文改正)することが理解できない。今、政治に厳しい目が向けられている」(樋口裕大市議=Nextつくば)▽「ビジネスクラスでヨーロッパに行くのに現在100万円くらいかかるがファーストクラスは2倍の200万円かかる。他市町村長は年に1回か2回しか海外に行かないのに、つくば市長は年に何回か行っている。市民の税金で行くのに市民にどう説明できるのか。つくば市には東京都が定めているような海外出張の運用指針もない」(山中真弓市議=共産)▽「ファーストクラスにする必要はない。市民感覚からすればビジネスクラスで十分」(飯岡宏之市議=Nextつくば)など厳しい意見が相次いだ。 採決で賛成したのは塩田尚市議(つくばクラブ)と渡辺峰子市議(公明)2人だけで、同条例改正案は否決となった。議会最終日の10月3日は修正案が出される見通しという。 つくば市長の海外出張をめぐっては、今年2月と6月の市議会定例会議一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐立青市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い2365万円の市税を使ったこと、海外での宿泊費が市職員旅費規則に定められた金額を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘した経緯がある。(鈴木宏子)

民有林に防除対策費を補助 ナラ枯れ被害拡大防止へ つくば市

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