市の会計で不納欠損処理
生活保護行政をめぐり不適正な事務処理が相次いでいるつくば市(5月9日付、7月20日付)で新たに、2014年度から23年度までの10年間、本来国に請求すべき生活保護費の過支給による徴収不能分 計1771万0826円を国に請求していなかったことが分かった。21日、同市が発表した。国に請求しなかった分は、市の会計で徴収不能として不納欠損処理し、結果的に市が負担していた。
生活保護受給者に年金や就労などによる収入があって支給額が基準より多くなった場合や、本人が他市町村に転居したり死亡するなどして過支給があった場合、市は本人や相続人などに過支給分の返還を求める。しかし最終的に徴収できなかった場合や時効になった場合などは、徴収不能として債権放棄の処理をする。つくば市の場合、2014年度からの10年間で徴収不能とされた過支給による未返還金は174件 計2361万4435円分あった。
生活保護は法定受託事務で、財源の4分の3を国、4分の1を地方自治体が負担している。市は徴収不能の約2360万円の4分の3の約1770万円を国に請求できたが、10年間していなかった。2014年度より以前については資料が保存されてないため不明という。
原因について市福祉部は、国に請求するためには、過支給があった受給者に対し、催促状や催告状を出し、催促や催告した記録を付け、さらに転居した場合は転居先の調査、本人が死亡した場合は相続人の調査などをしなければならない。一方、市は、催促や催告はしていたものの、記録を付けてなかったなど、国に請求するための基準を満たしていなかったため請求しなかったとしている。さらに催促や催告についてのマニュアルはあったが、記録を付けることまでは書かれていなかったとし、管理職も正しいやり方に対する認識が甘かったとしている。
今月9日、市職員から福祉部長に申し出があり、社会福祉課内で調査し請求漏れが判明した。この職員は昨年10月にも課内でこの問題を申し出ていたが、当時は管理職の認識が不足し、問題視されなかったという。
今後の対応と再発防止策について市は、債権管理事務のマニュアルを見直すと共に、具体的な手順や方法を再確認して適切な事務処理を徹底するとしている。さらに生活保護費支給の際は過支給とならないよう適切に事務処理を行うと共に、受給者への説明を十分行い、やむを得ず債権となってしまった場合は、専門部署からの協力も得て債券管理体制を強化するとしている。
五十嵐立青市長は「社会福祉課のこれまでの業務の問題点の調査を行い、現段階では、特に業務遂行における管理職の対応に問題があったと認識している。今後、すぐに対応可能なものは速やかに是正すると共に、調査を継続し、原因究明や再発防止、必要な処分を検討していく」とするコメントを発表した。