【コラム・坂本栄】3カ月前、1期目の退職金を辞退した五十嵐つくば市長に、2期目の退職金はどうするのか聞いてみた。答えは、前回と同様に辞退するか、今度は受領するか、まだ決めていないということだった。3期目に挑む市長選挙(10月20日告示、27日投開票)の1~2カ月前にはどうするか決断し、市民の前に明らかにする必要があるだろう。
退職金辞退というポピュリズム
市長退職金問題。4年前の記事「廃止を公約の退職金22円に…」(2020年6月5日掲載)、コラム91「…退職金辞退に違和感」(同10月5日掲載)を引っ張り出して整理すると、以下のような「事件」だ。
最初の市長選公約に「市長特権の退職金の廃止」を掲げた五十嵐市長は、市長1期目が終わる4カ月前、規定では2040万円の退職金を辞退すると発表した。記事の見出しでは「…退職金22円…」となっているが、これは法的な障害をクリアするための最少額で、事実上ゼロと考えてよい。
五十嵐市長は、公約を反古(ほご)にするのは次の選挙にマイナスと考えただけでなく、おカネにこだわらない(好ましい?)市長像を市民の間に広げたかったようだ。政治の世界では、この種の受け狙いの政治手法をポピュリズム(大衆迎合主義)と呼ぶ。
「私は、退職金廃止という公約そのものに違和感を持っている。退職金はハードな仕事をこなす市長の報酬の一部だから、大きな失政をしないことが前提になるが、堂々と受け取るべきと考える。市長選で退職金廃止を公約したのは、市長の仕事をうまくこなす自信がなかったからか?」(コラム91)
今度も辞退? 対抗馬は有力県議
「市長特権の退職金の廃止」は2期目も続くのか? 3カ月前に五十嵐市長に聞いたのは、4年前のポピュリズム選挙を繰り返すのか知りたかったからだ。最初のパラグラフで書いたように、答えは思案中ということだったが、気になる発言があった。
退職金辞退を発表したあと、市長の後援者から受け取るべきだと注意されたと言うのだ。わざわざ後援者の助言を持ち出し、2期目は受け取るとの意向をにおわせた。それなのに辞退するか受領するか明言しなかったのは、判断材料が出そろっていなかったからだろう。
判断材料とは何か? 市長選に対立候補が現れるのかどうか、現れるとすれば強そうな候補か弱そうな候補か、3カ月前には見えていなかった。退職金辞退=強そうな候補が出馬した場合/退職金受領=弱そうな候補が出馬した場合―ではないかと聞いたところ、答えはムニャムニャだった。
記事「星田弘司県議が立候補へ…」(8月8日掲載)にあるように、選挙経験豊富な星田県議が立候補を決断し、秋の市長選の構図が見えてきた。星田県議=強そうな候補だから、上の分け方では退職金辞退のケースだ。でも、後援者の助言を受け入れ、ポピュリズム批判を振り払うために、退職金を受領する?(経済ジャーナリスト)