水曜日, 5月 28, 2025
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飛行機が苦手だけれど《遊民通信》93

【コラム・田口哲郎】

前略

私は航空機移動が苦手なので、国内は鉄道で旅することにしています。先日、長崎に行かねばならない用事があったのですが、スケジュールの関係でどうしても飛行機を選択せざるを得なくなりました。

飛行機のチケットをとったときから不安になり、それが着陸まで続きます。新幹線があるのに、なぜわざわざ上空1万メートルを飛んでゆく必要があるのかとか、旅客機はまったく近代の産物で、おかげで人類は進歩できたけれども、それは多くの犠牲のうえに成り立っているなどと、余計な思考が頻繁に頭をよぎるようになりました。

軽い鬱(うつ)状態で、機内で離陸時、着陸時にはパニックに陥ってしまうかもしれないと、いま思えば大げさなことを考えて不安をどんどん大きくしていました。

快適な天空の旅

さて、実際に搭乗し、着席し、飛行機が動き出しました。猛スピードが出て、浮揚し、ぐんぐん高度を上げてゆく機体の中で湧いてきたのは、不安というよりワクワク感でした。あの高揚感は技術のフロンティアを築いてきた人々への憧れと尊敬なのでしょうか。とにかく、説明のつかない気持ちでした。

高度1万メートル辺りになるとシートベルト着用サインが消えて、機体は水平になります。窓の外を見やると、雲上の世界。青と白、遠く霞む水平線。陽の光に照らされた明るい、澄んだ景色が目に入りました。不安はどこかに飛び去り、美しい光景に感動し、神の目をもったような気分になりました。

天空の航行を楽しんでいると、キャビンアテンダントが飲み物はいかがですかと笑顔で話しかけてくれます。天女のやさしさを思わせます。リンゴジュースを飲むと、エデンの園のりんごはこんな味だったかと想像するほどに、フライトを心地よく思っている自分がいました。

時速900キロほどの速度ですから、羽田から長崎まで2時間弱で着いてしまいました。無事着陸した時の衝撃音で地上の現実に戻ったことを悟ったときには、天が恋しいとさえ感じました。異国情緒漂う長崎で所用を済ませて、帰るときにも、行きのような心境の変化がありました。多少の不安、離陸の高揚感、天空の夢心地、そして地上の覚醒、着陸した後のひと安心。

成田空港が近い茨城県南では、航空機が飛行するのをよく見かけます。いままでは他人事で気にもかけていませんでしたが、このごろは人類の英知を結集した航空機がクルーの皆さんのたゆまぬ努力で多くの人に快適な翼の旅を提供していることに想いを馳(は)せることができるようになりました。

空の旅は非日常に誘ってくれますね。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

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前期 首位で折り返す つくばFCレディース 

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