【コラム・山口京子】この数年、定期的に簡易生命表を見ています。厚生労働省が出している2022年簡易生命表を見ると、平均寿命は男性81歳、女性87歳、最多死亡年齢は男性88歳、女性93歳―でした。生命表は数字の集まりですが、一人一人に物語があるはずです。自分が何歳まで生きるのかは誰にも分かりません。
とりあえず、100歳まで生きると経済的に算段しつつ、いつお迎えが来てもいいように、片付けをしていくことかしら、と。
そんなある日、大変なことが起きました。連れ合いが突然家の中で倒れ、身体をくの字に曲げて苦しがり、うめき声を発します。動転した私は救急車を呼び、救急隊の判断でドクターヘリが要請され、県外の病院に搬送されました。ヘリの中でも治療行為がされたそうです。
一命をとりとめたあと、病状と治療方針の説明を受けました。救急医療の迅速さと的確さに感謝しつつ、急性期病院は数日で退院し、あとはかかりつけの病院に通うことになります。もともと肝臓と心臓に疾患があったものの、落ち着いていたので、このようなことは予想できませんでした。
10年後の体と心は?
こうしたことがあって、当たり前ですが、命には限りがあることに気づかされました。自分が死んでしまえば、自分の死を意識することはありません。自分の死は体験できないし、知らない人の死は他人事。死が重要なのは、その人と親しい間柄の人にとってのことと、ある本に書いてありました。
できれば、今日の続きに穏やかな死を迎えられたらと願います。今の自分は普通に暮らしていますが、10年後の体と心はどうなっているのか。そもそも、自分に10年後があるのかどうか…。そんなことはわかりません。なので、今日することを今日していくことです。
今日していくこととして身辺の片付けを加え、覚悟と始末についてよく考え、家族と話を持ちたいと思いました。家族との関係に「ありがとう」と言えるのか。人生を振り返ったときに、自分なりの折り合いをつけられるのか。この人生はどんな社会や時代の中にあったのか。
還暦を過ぎたあたりから、なにか大きな考え間違いをしているのではないかという不安を抱くようになりました。なにをどんなふうに間違えてしまったのかを、これから考えていければと。いろいろな事柄に対し、自分の解釈が間違っていて、それが自分自身を苦しめてきたような…。そうはいっても、今日は晴れたおかげで、ジャガイモを収穫することができました。(消費生活アドバイザー)