障害があり車いすで生活している人たちの「自立歩行」を実現する機器の開発・普及を目的に、生活支援ロボットコンテストが29、30日の両日、つくば市の廃校跡の特設会場で開かれた。グローバル・イノベーション・チャレンジ(GIC)実行委員会(東京都港区、上村龍文実行委員長)による、同市では2回目の開催で、国内外から2チームが参加して、「食事」や「トイレ」「洗濯」など5課題に挑んだ。
会場となるGICつくばイノベーションセンターは、旧菅間小(同市中菅間)体育館に設置された平屋建ての仮設住宅。キッチンとリビングルーム、たたみ敷のベッドルームに水回りなどの間取りで構成され、壁がガラス張りで透視できる形になっている。
今回は藤田医科大学(愛知県豊明市)を中心にしたチームWPAL(ウーパル)、台湾に拠点を置く企業の子会社の日・台の2拠点からの参加となるチーム FREE Bionics(フリーバイオニクス)が参加。それぞれ股継手やロボット支柱、モーターを両下肢内側に配置し、高い立位安定性を実現(WPAL)、股関節と膝関節にモーターがあり、立つ、座る、歩くことを可能にした(FREE Walk)ロボットを持ち込んだ。
課題「トイレ」は、ベッドから起き上がり、ロボットを装着。トイレに移動し、ズボンを足首まで下ろして便座に座り、用をたした後、便座から立ち上がり、ズボンを上げ、水を流す。洗面所に移動して手を洗い、タオルで手を拭きベッドに戻るまでを制限時間8分でこなす内容だ。
下肢まひの障害を持つ当事者がパイロット役を務め、車いすからロボット装着に乗り換える形で住居内を移動する。住宅の天井から装身具が吊るされ、パイロットの転倒事故を防ぐ配慮が講じられるが、各チームの人力による補助は得られない。両チームとも事前に、同センターで練習を重ねながら、日常の生活動作をこなす一連の課題に取り組み、コンテストに臨んだ。
同コンテストは2021年からリモート競技により始まり、昨年から同会場での「リアル開催」になった。課題ごとに達成賞金が贈られ、7つの課題をすべてクリアした場合の賞金総額は100万ドル(約1億6000万円)、「トイレ」課題1つの達成でも5万ドル(約800万円)が授与される。今回は難易度の高い「掃除」(掃除機で住宅内を掃除しごみ袋を外に出す)、「入浴」(入浴して着替える)の2課題への挑戦は見送られたが、5課題に2チーム合わせ9回のチャレンジが行われた。
昨年は1課題のクリアにとどまったが、今回は各課題で制限時間内に作業を完了させるチームが続いた。ロボットとリハビリテーションの専門家による現地審査が行われ、オンライン審査と合わせた結果から課題クリアの認定が行われる。上村実行委員長によれば「審査には1週間程度かかるが昨年を上回る成績が出そうだ」との見通し。
FREE Bionicsチームリーダーの江郁軒(コウユウケン)さんは「時間制限がきつくパイロットに頑張ってもらうことになった。機能を付け足しながら安全性にも取り組んできたがまだ改良すべき点がある。機会を与えてもらえれば来年もチャレンジしたい」という。
上村実行委員長は「7課題については10年ぐらいかけてクリアできればと考えている。次のステップでは街に出たいと考えており、最後には自立歩行で筑波山に登りたい」構想でいる。(相澤冬樹)