【コラム・川上美智子】陶芸を楽しむ人が増えてきている。コロナの3年間には陶芸に関する催し物も中断され、教室に通う人も減り、茨城の陶芸の火が消えてしまうのではないかと心配していたが、今年は完全に復活した。4月29日~5月5日の大型連休に、笠間芸術の森公園イベント広場で開催された第43回陶炎祭の人出は8万6000人と2年連続で増え、来場者の多くが駐車場探しが大変だったと口にしていた。
出店数も250を超え、若い陶芸作家たちの参加が目立った。県内からのお客さまだけでなく、近県からも訪れる人が大勢いて、笠間の陶炎祭の集客力は目を見張るものだった。
高校生に自作を値引き販売
昨春、初個展を開いた筆者も、陶芸を学び合う仲間3人で初出店した。暑さ、雨天、強風など7日間の開催期間中のテント下での販売はとても過酷だった。陶器の販売だけにしておけばよかったのに、欲張って茨城ロボッツの選手に補食として提供しているインドカレーとチャイの提供もしたので、それは大変だった。
食材の仕入れ・保管と、毎日100食分のカレーの調理、現場への運搬など、祭りを楽しむどころか、ヘトヘトに消耗し、今も尾を引いている。
筆者にとっては初めての作品販売だったが、展示した花器、抹茶椀(わん)、ぐい飲み、ペンダントの半分程を購入いただいた。販売という行為自体苦手であるが、初日に千葉からお母さんと一緒に来られた男子高校生とのやりとりは印象に残った。緑色系の氷裂釉薬(ひょうれつゆうやく)をかけた抹茶椀を気に入られて、何度も何度も足を運ばれ、閉店間際にやはりこれが欲しいと来られた。
聞けば、最近、高校で茶道を始めたばかり、どうしてもこのお茶碗で飲みたいと言う。お母さんから小遣いで買うよう言われていて値段が折り合わないようだった。茶碗との出会いも一期一会、彼の茶道への思いを応援したくなり、大事に使ってねとお小遣い価格に値下げしてお渡しした。
このようなやり取りも陶器市ならではのこと、うれしそうに持ち帰る姿を見て、私の茶碗を気に入ってくれたことへ心から感謝した。陶磁器に興味関心を持つ人、購入したい人がたくさんいることを確認した7日間であった。
魯山人の漆器、日本画、篆刻…
5月28日(火)~6月7日(金)には、第55回水戸芸術祭美術展覧会が芸術館で開かれる。本展覧会には15年前から委嘱出品しており、今年も出来上がったばかりの新作の壺(つぼ)を出品した。展覧会用の手捻(びね)りの大きな作品は、時間もエネルギーも要し年に2~3個しか作れないが、今後も自己の感性を大事にして丁寧な作品作りをしていきたいと思う。
また、茨城県陶芸美術館では7月7日(日)まで「魯山人(ろさんじん) クロッシング」の企画展が開催されている。県内に所蔵される魯山人の陶磁器、漆器、日本画、篆刻(てんこく)、書、約70点が出展され、魯山人特有の赤絵付けされた食器など、筆者が勤務する関彰商事が所蔵する器40数点も初披露されている。
陶土を産する笠間を拠点とする器の芸術、誰でも簡単に触れ、体験でき、学べる環境は本当に貴重である。筆者も近くにその環境があったから、60歳を過ぎてその道を歩み始めた。太古からつないできた人間の手による土の芸術文化、茨城の地で大切に継承していってほしいと願っている。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)