金曜日, 12月 26, 2025
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点字本で「宇宙と物質の起源」 高エネ機構、筑波技術大と共同制作

「私たちはなぜ存在できているのか」という根源的な問いに迫る研究の成果を、視覚障害のある人にも共有してもらおうと高エネルギー加速器研究機構(KEK、つくば市大穂)素粒子原子核研究所(素核研、齊藤直人所長)が点字本「宇宙と物質の起源 『見えない世界』を理解する」を制作した。点訳や図版を触ってたどる触図化などに筑波技術大学(技大、つくば市天久保)障害者高等教育研究支援センターのチームが共同で取り組んだ。

素核研は素粒子、原子核、宇宙という微細と広大の両極を対象に、理論と実験の両側面から研究を行っている。点字本プロジェクトは2022年春に始まった。人文科学系の図書は点訳が比較的容易だが、自然科学系の図書は内容に精通した点訳者が少なく点訳や触図作成が難しいため、あまり流通しておらず、視覚障害者が物理学など自然科学に触れるのは難しい状況だった。

点字本「宇宙と物質の起源」収録の触図(同)

研究が宇宙と物質の起源という「見えない世界」を扱うこともあって、宇宙や物質について「もっと知りたい、学びたい」という視覚障害者の思いにこたえるべく点字本を企画した。同書の原本になる同名タイトルの書籍は今年3月、講談社ブルーバックスシリーズから発刊になっている。研究者がこれまでの知見や、今後の研究で解明が期待されることなどをやさしく解説した入門書となっている。

点字本は、書籍の本文部分が掲載された点字版と、書籍の図の部分が掲載された触図版で構成されている。研究者10人が「宇宙は何でできているのか」「元素の起源」「質量の起源」「力の起源」などのテーマごとに分担して執筆した原稿を、技大のチームが点訳を行った。元素の遷移を元素・陽子・電子・ニュートリノなどの記号を用いて解説したり、物質に質量を与えるとされるヒッグス場のポテンシャルエネルギーを示す式を提示したり、丁寧に説明している。

技大では、在籍する視覚障害の学生たちのために普段から教科書などの点訳を行っているが、素粒子分野の点訳を執筆者と共同で行うことは初めて。一般的な点訳は、すでに出版されている書籍が対象のため、障害者にわかりづらい文章や図の表現が含まれている。そのような場合、点訳者が原本を解釈して点訳を行い、点字本を作成する。しかし今回は、執筆者が原稿を執筆した後、視覚障害当事者による試読を経て文章を校正し、障害者にわかりやすい表現に修正した。

点訳チームと触読校正者が点字、触図を確認している様子(同)

特に、書籍中のグラフや概念図のほとんどを省略することなく、文章と触図で表現した。点字の専門家である大学教職員と素粒子分野の専門家である執筆者が昨夏の1カ月間、議論を重ねたという。

点訳チームのメンバーの一人で、視覚障害当事者でもある技大の田中仁講師は「点字は創案以来、見えない人たちの新たなチャレンジとともに進化してきた。言葉、楽譜、数式、化学式、情報処理、図・表にわたる点字表現の豊かさはそのチャレンジの証です。点字表現の可能性を信じて点訳した」とコメントする。

素核研の齊藤所長は「今回とても印象的だったのは、視覚障害者が視覚以外の情報から対象を理解しようとするその集中力と情熱の深さ。もともと目には見えない素粒子や量子場を研究している我々は、いわば手探りで理解を積み上げていくという意味では、視覚障害者と同じ立場にある。力を合わせて一緒に探求できれば、新たな理解が生まれるのではないか」と期待を述べた。

触図版は個人や大学、研究機関などに貸し出しが可能。「宇宙と物質の起源 『見えない世界』を理解する」(新書判320ページ、定価1320円=税込み)で執筆者の受け取る印税は全額、寄付され、視覚障害者向け図書普及のために使われるそうだ。

◆素核研の点字本プロジェクトポータルページはこちら

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つくば駅前に大型ディスプレイ登場 イルミネーションと共ににぎわいを

オフィスビル「T.S BUIL」 つくば駅前のオフィスビル「T.S BUIL」(同市吾妻)のペデストリアンデッキに面した2階部分の壁面に21日、縦2.5メートル×横4.4メートル、200インチの大型ディスプレイがお目見えし、クリスマス関連の映像が放映されている。 22日夜からは同ビル恒例のクリスマスイルミネーションも加わり、道行く人たちの目を楽しませている。駅前をもっとにぎやかにしたいと、同ビルを所有する不動産業の都市開発(塚田純夫社長)が新たに大型ディスプレイを設置した。 ディスプレイの設置工事は14日から始まり、1週間の工事期間を経て21日から放映が始まった。毎日正午から夜9時まで映像が流れる。クリスマスの現在は、クリスマスにちなんだクイズやイルミネーション点灯のお知らせなどが流れ、26日以降は年越しに関する映像に変わる。 今後は市の情報や警察関連情報、防災情報なども放映していく予定だ。「屋外広告物」という扱いのため、大きな音を出し大勢の人が集まるコンサートやパブリックビューイングを行うためには今後、市と相談しながらになるという。 イルミネーションは来年1月12日まで点灯する。3年前に始まり、昨年同様、同ビルのペデストリアンデッキに面する2階エントランスのガラス張り壁面全体がLEDで装飾され、ショーケースの中にはサンタクロースや雪だるま、トナカイ、クリスマスツリーなどが飾り付けられている。 ディスプレイに見入っていた市内に住む60代女性は「大型のディスプレイにびっくりした。世の中に季節感がなくなってきた時代なので、こんな感じでクリスマスなど季節を知らせてくれるのはありがたい。ディスプレイの前のペデストリアンデッキは広くなっているのでコンサートでもやってくれたら」と話す。近くの職場に通う50代の男性会社員は「ずっと殺風景だったので、とても良いと思う。どんどんにぎやかにすることをやってほしい」と話していた。 都市開発の霞学部長は「つくば駅前にあるつくばセンター広場のにぎわいづくりに協力出来たらということでやっている。防災も重要なので、行政の防災の取り組みに協力し、防災に関することも放映していきたい」と語る。また「今年、1階にスタジオを移転したラヂオつくばの中継も可能なので、ディスプレイで何が放映できるか考えていきたい」と述べる。 現在放映している映像の制作は20代の同社若手社員が担当した。管理部の藤沢花恋さんは「グラフィックデザインのソフトを使って動画を作ったが、初めてだったので大変だった。デザインなどは不慣れだが担当させてもらい、いい経験になった。今後の展開も考えたい」と話した。設置業者とのやりとりや申請業務など担当した営業部の高橋開人さんは「人が集まる場所が出来ればとてもうれしい」と述べた。(榎田智司)