月曜日, 5月 19, 2025
ホームつくば団体客から個人客にシフト 「亀の井ホテル 筑波山」オープン

団体客から個人客にシフト 「亀の井ホテル 筑波山」オープン

筑波山中腹のつくば市筑波に「亀の井ホテル 筑波山」が23日、リブランドオープンした。昨年9月末、「筑波山温泉 つくばグランドホテル」が米国の投資ファンドに譲渡され(23年8月10日付)、同ファンド子会社でホテル運営会社のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)が客室やレストランなどの改修を実施していた。つくばグランドホテルは団体客の利用が多かったが、新たなホテルは家族連れやペットとの旅行、サイクリングなど多彩なスタイルで旅行する個人客を主なターゲットとする。訪日外国人の誘客も目指す。

客室は、小さな子供を持つファミリー向けのキッズルームや、3世代で宿泊できるファミリールーム、愛犬と宿泊できるペットルームなど新たな客室が新設された。

二段ベットや秘密の隠れ家があるキッズルーム

食事は、団体客向けの宴会場を無くし、2階にビュッフェ形式のレストランを新設。常陸牛の焼きしゃぶ、県産キノコを使ったきのこ鍋、県産食材でアレンジする山海丼のほか、朝食は納豆の食べ比べができるなど、県産の食材を使った豪華な食事を自由に取り分けて食べられるようにした。ビュッフェ形式は筑波山にある五つの観光ホテルで初めてという。

7階の露天風呂は、今まであった柵を取り払い、関東平野や富士山、日光連山などの大パノラマが望める絶景の露天風呂に改装した。

7階のインフィニティ露天風呂

ロビーラウンジがある3階は、家族や友人とリラックスしたり交流できる空間としてゲームやトランプなどができるゲームエリアを新設した。

今後さらに、自転車を客室に持ち込めるサイクルルーム、部屋の中から関東平野の景観を楽しめるハリウッドパノラマビュールームなどを新設し、7月6日にグランドオープンする予定。

24日は関係者を集めて内覧会が催され、新装施設が案内された。ロビーラウンジがある3階南側には広いデッキが広がり、関東平野が見渡せる。ラウンジはファミリーなどを意識したものに改装され、元カラオケルームは大画面でゲームを楽しめるゲームルームになった。家族や友人と、トランプや人生ゲームなどのボードゲームを楽しめるテーブルも設置された。7階キッズルームはかわいいキノコのキャラクターが登場する楽しいデザインが施されている。2階のビュッフェレストランは青森のねぶた師が手掛けた「つくばねぶた」が置かれている。朝食、夕食とも好きなものが食べられ、外国人も想定した多様なニーズに応える。

ロビーラウンジのある3階に新設されたゲームルーム。大画面でゲームが楽しめる

同ホテルの天満龍裕支配人(45)は「茨城のおいしい食材を提供するなど食事に力を入れており、豊富なメニューをそろえている。レストラン、ビュー、新しいお部屋はもちろんだが、まずはお客様を温かく迎えられるホテル、人に会いに来ていただけるホテルづくりを今後ともしていきたい」と話す。

同ホテルは客室61室(定員325人)、宿泊料金は1人当たり一般客室1万3000円~、ファミリールーム1万8000円~(消費税、サービス料込み)。初年度は年間約3万2000人の宿泊客を目指す。

亀の井ホテルは、マイステイズ・ホテル・マネジメントが2022年4月、日本郵政から「かんぽの宿」30施設を譲り受け運営を開始したホテルと、亀の井ホテル別府(旧別府亀の井ホテル)など計32施設により22年7月に誕生した。筑波山は39施設目。県内では、かんぽの宿だった大洗、潮来に次いで3施設目。

日帰りから滞在型へ 筑波山観光の新たな戦略とは?

亀の井ホテル 筑波山の天満龍裕支配人

筑波山は首都圏から日帰りできる距離にあり、現在、日帰り観光が主流になっている。どうやって滞在型に変えていくのか、天満龍裕支配人と、本社の増井香織マーケティングアドバタイジング パブリックリレーションズチーム チームマネージャーに新たなホテルの運営戦略などについて聞いた。

ー亀の井ホテル筑波山の魅力、売りは何か。

天満支配人 今回は食事を一番変えさせていただいた。茨城県の魅力がたっぷり詰まったビュッフェになっている。ビュッフェはファミリー層が大好きかと思う。食事は県産のきのこ鍋、納豆カツなど。朝食では納豆3種食べ比べをしたり、夜朝共に茨城の食材をふんだんに準備している。あと、亀の井ホテルグループの共通メニューもあって、どこの亀の井ホテルに行ってもおいしく食べていただけるメニューもあるので自信をもってご提供させていただく。(首都圏から)近くにこんないいところがあるんだよということを知っていただきたい。

それから弊館の売りは関東平野のビュー。7階のインフィニティ露天風呂があってそこからの景色はひじょうにすばらしい。宿泊のお客様だけが利用できるので、食事や温泉の魅力を十分に発信していきたい。

今サイクリストが多く、筑波山にも自転車で来られる方がたくさんいらっしゃる。そういった方々が筑波山に上がってこられて一休みできるようなサイクルルームもつくる。いろんなニーズに応えられるように、ファミリー向けのキッズルームや3世代向けの絆ルームをつくったり、多種多様なお部屋を準備するので、今まで日帰りで帰ってしまったお客様が一休みできる空間をつくっていきたい。

壁一面にかわいいキノコのキャラクターが描かれたキッズルームの寝室

―宿泊客をどこから呼び込むのか。

天満 亀の井ホテルグループには、旧かんぽの宿で会員になっていた方々を中心にKMC会員(カメノイ・ホテル・メンバーズ)が66万人おり、亀の井ホテルのいろいろな温泉地を巡っていただこうと取り組んでいる。関東圏のお客様が多いが、遠方からお越しいただいている方もいらっしゃる。会員様を増やしていこうとキャンペーンを組み込んだりしており、さらに会員数を増やしていきたい。

―筑波山のホテルは、客室で食事をとる個室食が中心だが、亀の井筑波山では個室食は提供しないということか。

天満 以前は団体のお客様がメーンで、宴会場も大中小3カ所あったが、ビュッフェや客室に改装した。今回、個室食のメニューから一新してビュッフェに変えた。お客様のお声をお聞きすると「個室食なんだよね」というお声が結構あった。個室食が好きなお客様もいらっしゃるが、筑波山には個室食のお宿(ホテル・旅館)がたくさんある。ビュッフェのレストランをもっているお宿はあまりない。こういった差別化を図りながら、地元の古くから営業されているお宿との共存を目指して、より多くのお客様が筑波山に来ていただけるコンセプトを考えたい。

―地元のつくば市では職場の忘年会や宴会で筑波山のホテルを利用するというイメージがある。亀の井筑波山では宴会は受けないということか。

天満 宴会をされたい方はほかのお宿があるのですみ分けをしたい。

亀の井ホテル筑波山の外観

―訪日外国人客(インバウンド)はどれくらいを想定しているのか。

天満 今現在のインバウンドは15%ぐらい。私の中ではまず15%から30%に増やしていきたい。インバウンドをとっていきたいというのはビュッフェにした理由の一つでもある。海外からのお客様でメニューが口に合わないものがあったり、食べられないものがあったりということがある。ビュッフェスタイルであれば好きなものが食べられる。地元の食材をふんだんに使った茨城県のおいしい料理を知っていただきたいと料理を準備させていただいた。温泉もあり、東京からのアクセスがいい。筑波山は標高877メートルと百名山の中でも低いが、コースによってはすごくきつかったり、なだらかな魅力あふれるコースがある。そういったことを身近に楽しめる場所として最適な場所だと思う。海外の方も、地元の方も大切しながら、共存できるホテルづくりをしていきたい。

ー県内には大洗、潮来、筑波山と3件の亀の井ホテルがある。どのように連携していくのか。

天満 例えば亀の井筑波山に問い合わせがきたお客様に「うちはいっぱいですけど、こちらはいかがですか」とご紹介ができたり、あと食器とか「こういういいものがあるから使ってみたら」と情報交換がすごくしやすかったりする。

―米国の外資系ホテルが初めて筑波山に進出してきたということで、地元としては期待やさまざまな受け止めがある。

増井 本社チームマネージャー つくばグランドホテルの時代は地域との共存はすごくあったと思う。私たちが運営を引き継いで、どういうホテルになるんだろうという期待を皆さんにもっていただいている。ホテルも運営会社も、近隣の皆さんと一緒に筑波山という地域、茨城という地域を盛り上げたい、観光に貢献したい、寄与したいというスタンスでいる。(榎田智司、鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

学校給食に異物混入 つくば市の中学校

つくば市は19日、市内の中学校で16日に出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教員が食べた鶏肉のトマト煮にホチキスの針が混入していた。 市教育局健康教育課によると、16日午後0時50分ごろ、市立中学校の職員室で、教員が鶏肉のトマト煮を食べた際、口の中に違和感を感じ、異物を吐き出したところ、長さ1センチくらいのホチキスの針一つが混入していた。教員にけがなどはないという。発見時、生徒のほとんどが給食を食べ終わっていた。 鶏肉のトマト煮は同日、つくばほがらか給食センター谷田部で調理され、幼稚園4園、小学校6校、中学校3校の3317人に提供された。異物が混入していた給食は職員室で配膳されたものだという。同校や他校などから、ほかに異物混入の報告はない。 発見後、同校のほか、給食センター、食材納入業者それぞれ、異物混入の経緯などを調査したが、現時点で混入経路は不明。 同給食センターは16日、保護者にお詫びの通知を出した。

群馬に5連敗 茨城アストロプラネッツ

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは18日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で群馬ダイヤモンドペガサスと戦い、1-4で敗れた。今季初の土浦開催となった。茨城の通算成績は5勝10敗で東地区3位。今季の群馬戦の戦績は0勝5敗となった。 【ルートインBCリーグ2025公式戦】(5月18日、J:COMスタジアム土浦)茨城アストロプラネッツ-群馬ダイヤモンドペガサス群馬 000001210 4茨城 001000000 1 試合は3回に茨城が先制。先頭の9番・原田京雅と続く1番・山本仁が右前へ連続安打、2番・高田龍の送りバントで1死一・二塁とすると、3番・原海聖が右翼へ犠牲フライを放ち1点を奪った。「ノースリーだったが四球を狙わず振っていけと指示し、しっかりと外野まで運んでくれた」と巽真吾監督。「打ったのはちょっと浮いたチェンジアップ。相手投手は入れてくると思い、甘い球を見逃さずとフルスイングすることを意識した」と原。 投手は金韓根が先発し、5回83球を投げて無失点。立ち上がりは低めの球を見極められ走者を出したが、途中から組み立てを変え、高めのボールからストライクになる変化球でカウントをかせぎ、後半はテンポの良い投球でフライアウトに打ち取った。5回表には内野安打と四球で1死一・二塁のピンチを作るが、相手の送りバントを自ら処理し三塁封殺に成功。「捕手は一塁を指示したが自分の判断で三塁に投げた。ここで走者を残すと単打でも1点を許すことになる。絶対に三塁を踏ませたくなかった」との振り返り。 6回以降は4人の投手が1イニングずつ投げたが、2番手の三浦遼大は替わりばなの初球で本塁打を浴び、3人目の川端啓新は四球と送りバントの一塁悪送球で無死一・二塁とされ、単打と内野ゴロで2点を失った。4人目の斉藤淳斗は3安打に野手のファンブルが重なり1失点。5人目の太田大和は1安打2四球で1死満塁のピンチを迎えたものの、6-4-3の併殺で切り抜けた。 攻撃でも茨城は小さなミスが目立った。1回は山本が四球から足を生かして一死三塁の好機をつくり、原の右飛にタッチアップを狙ったが、ポテンヒットになったことで本塁突入に失敗。5回には四球で出塁した山本が牽制球から挟殺に遭い、次打者の高田龍が右前打を放ったため、ここで山本が生きていればと惜しまれる結果になった。 9回には6番・草場悠が四球を選び、8番・三池裕翔が中前打と盗塁で2死二・三塁、一発が出れば同点という見せ場を作った。打席に立った原田はバットを折るアクシデントもありながらフルカウントまで粘ったが、最後は遊飛に倒れ、「ボールを見極めることはできたが、投手の気迫に負けて外野へ運ぶことができなかった」との無念の敗戦となった。 「群馬戦はここ数試合接戦が続いているが、四球と失策が重なるとか、チャンスであと1本が出ないなど、いずれも勝てそうなゲームを少しの差で負けている。投手と野手がかみ合う試合をつくり、チームが一体感を持って勝利を目指したい」と巽監督はリベンジを誓う。(池田充雄)

難民支える自治体ネットワークに加入 つくば市 全国19番目

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が進める国際キャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」に18日、つくば市が加入した。自治体が難民への連帯と貢献を表明することを通して難民支援の輪を広げていく取り組みで、国内では東京都、広島市、札幌市などに続いて19番目、北関東の自治体では初の加入となる。世界では59カ国309自治体目。 同日、つくば駅前のつくばセンター広場などで開かれた科学と国際交流のイベント「つくばフェスティバル2025」会場で同ネットワークの加入署名式が催され、五十嵐立青つくば市長と桒原(くわはら)妙子UNHCR駐日首席副代表代行が同ネットワークの賛同表明文に署名した。 五十嵐市長は「世界に難民は1億2000万人いる。日本の人口と同じ。(難民の)状況は厳しくなっている。ウクライナ、ガザ、世界各地で大変なことが起きていて、奪われてはいけない命が奪われている。つくばにも避難してこられたり移ってこられた方がいる。だからこそ我々自治体は、連帯し国際社会の一員として支えていく責務がある。我々に何ができるか、まずは知ること。その先に何ができるか、皆さんと共に歩みを進めたい」と話した。「分断が進んでいる社会で、自治体としてメッセージを出していこうという意思表示」だという。 桒原代表代行は「つくば市が北関東で初めて参加してくださることは本当に心強い。つくば市はSDGs(国連の持続可能な開発目標)など地球規模の課題に積極的に取り組んでいる全国でも先進的な自治体。つくば市ならではの柔軟で創造的な取り組みを通じて、難民支援の輪が地域から自分ごととして広がっていくことに期待したい」と述べた。 2023年10月、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が、ウクライナから避難してきた学生や留学生などと意見交換するため筑波大学やつくば市役所を訪れたことがきっかけになった(23年10月20日付)。つくば市がSDGsに積極的に取り組んでいたり、不平等や格差是正に取り組むOECDの先進的市長(チャンピオンメイヤー)に選ばれていることなどから、UNHCR駐日事務所が同市に自治体ネットワークへの加入を呼び掛けた。 加入にあたって同市は「いろいろな機会をとらえてまず知っていただくことが一歩」(五十嵐市長)だとして、17、18日の2日間つくば駅周辺で開かれたつくばフェスティバルで、UNHCRの難民支援の仕事などを紹介するブーズを出展した。市中央図書館では1日から30日まで、UNHCR駐日事務所の協力で平和、共生、多様性などに関する同館所蔵図書を紹介する「難民のものがたり展」を開催している。 つくば市では現在、147の国と地域出身の外国人1万4251人が暮らしている。そのうち難民や戦争などからの避難者が何人いるかは不明。 他の加入自治体の取り組みとしては、UNHCR駐日事務所と連携して、難民問題を知るための独自イベントの開催や学校などでの出張授業、難民支援のための寄付の呼び掛け、大学の奨学金制度の導入や企業の雇用支援、母国を離れ難民キャンプなどで生活している難民を第三国が受け入れる「第三国定住」などを通じた難民の受け入れなどが行われているという。(鈴木宏子)

落成式に石破首相 産総研に社会実装向け計算技術拠点 つくば

量子技術による新産業創出の中核 「量子」と「古典」のコンピューティング技術を相互に利用し、高度な融合計算技術の確立を目指す社会実装拠点が産業技術総合研究所(産総研)に出来上がった。つくば市梅園のつくば中央事業所内に設置された量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT=ジークアット)本部棟で、18日に石破茂首相、武藤容治経済産業相らと学界、産業界の関係者を集めて落成式が催された。 620億円かけ整備 産総研によるG-QuATの設立は2023年7月で、今年3月までに2つの研究棟が建設された。鉄筋コンクリート造地上4階建てのA棟5616平方メートルと同2階建てB棟2060平方メートルからなる本部棟と、地上2階建て2243平方メートルのQubed(キューベッド)棟の2つ。本部棟には、古典・量子ハイブリット計算環境としてGPUスパコンと超伝導量子コンピューター、量子デバイス評価として希釈冷凍機と量子ビット制御装置などを整備した。Qubed棟には中性原子量子コンピューター「QuEra」が設置された。 建物と関連設備の投資規模は620億円。これは国から産総研への運営費交付金1年分に匹敵する規模で、研究開発拠点を超えて社会実装に踏み出すという意欲の表れとなった。量子技術による新産業創出には国も熱心で、G-QuATはその中核となる位置づけ。産総研発足の2001年以降、現職の首相を迎えるのは今回が初めてという。 初の「商用」超伝導量子コンピューター 米国エヌビディア(NVIDIA)社のH100を2020基搭載したGPUスパコン「ABCI-Q」は最新のAI技術を用いながら「古典」型というのが面白く、富士通製の「量子」コンピューターと超高速インターフェースで結んで、古典・量子融合型計算環境を構築する。 量子コンピューター自体、「重ね合わせ」という100年前に成立した量子力学の考え方を基礎にしている。一般的な(古典)コンピューターが電流のオンとオフで0と1の状態をつくって計算するのに対し、量子コンピューターは0か1か確定していない「重ね合わせ」の状態をつくり出して計算する。並列処理によって膨大なパターンの情報をひとまとめにして計算できる。 富士通が持ち込んだ64量子ビットの超伝導量子コンピューターは、わが国では初めての「商用」タイプとなる。G-QuATは最先端設備を開放しての産業支援を掲げており、企業共同研究など特定の事業に利用制限されないのを特徴としている。産総研がサポートにつく形で、富士通など企業主体での事業化を促す。超伝導量子コンピューターは現在最も開発が進んでいるされるが、絶対温度零度(マイナス273℃)近くの極低温環境が求められており、実現のための希釈冷凍機など次世代機の開発も同時に進める。 用途としては材料、金融、創薬などの分野で実用的な量子アプリケーションを開拓中で、量子コンピューターを活用する場合システムがどのように使われるか利用者目線から記述するユースケースを開発したり、高品質な部素材の評価・標準化、量子ビットの大規模集積化などに取り組む。本部棟には国内外の企業や大学などの多様な利用者が集う結節点としてのインキュベーションスペースも整備している。 落成式で石破茂首相は「量子力学100年=メモ=という節目の年に、世界最高水準の計算環境ができたのは意義深い。高度な研究設備が備わっており中小企業の皆さんにも共同研究に取り組んでいただけるよう、国としても強力に支援していきたい。つくばには、地方から世界にはばたく、そして地方から日本を変える拠点となることを期待したい」とあいさつした。(相澤冬樹) ※メモ【量子力学100年】1920年代、ド・ブロイ、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、ディラックなどが現在の量子力学の礎となる成果を続々と発表した。ボーアによって「コペンハーゲン解釈」が成立したのが1926年。ユネスコは2025年に、量子力学100年を記念する取り組みを行うことを決議した。