【コラム・小泉裕司】4月27日(土)、秋田県大仙市で「大曲の花火-春の章」が開催される。大会プログラムのメーンは、次代を担う45歳以下の若手花火師による花火競技大会「新作花火コレクション2024」。「10号芯入割物の部」と、4号10発、5号5発による「新作花火の部」の2部門で競われ、各部門の優秀作品4作品と総合優勝者1人を決定する。
また、会場で鑑賞した花火鑑賞士のオンライン審査により選ばれた花火師に、「日本花火鑑賞士会特別賞」として、ドラえもん黄金ブロンズトロフィーを授与する。
山﨑煙火製造所の匠の技
茨城県からは、山﨑煙火製造所(つくば市)の石井稔さん(40)が初出場。18歳で入社、経験年数で言えば20年を超える中堅花火師。社交的な場面は得意ではないとのことだが、技術力のある若手登用を掲げる山﨑智弘社長の後押しで、今回の出品が実現したように思う。
4月4日(木)、秋田県大仙市のコミュニティFM局 FMはなびの「花火の星」に出演し、師匠・杉山花火師の弟子として、社名を汚さない花火をご覧に入れることができればと、大会出場への意気込みを語った。
10号玉の部は、最高難度と言われる「昇曲付五重芯銀点滅」を出品。これまでも数々の競技大会で優勝の実績を残す山﨑煙火の十八番だ。特に、親星(下記解説)全体が銀色にキラキラと点滅しながら一斉に消滅する消え口の見事さは、ほかの花火師もあこがれる匠の技。点滅の消え口は、素人目にも鮮やかで夜空に残る余韻が心地よい。
石井さんは、工場内では多重芯の星込めが専門と言うから、色のキレを含め、他作品の追随を許さぬ「ぶっちぎり」状態は間違いない。
新作花火の部の作品名は「雪舞いの笠地蔵」。おとぎ話の世界の描き方に興味津々。昨夏の大曲で観客が驚愕(きょうがく)し、10号自由玉の部で優勝した「海月(くらげ)、漂う」の創造性が生かされるのだろうか。キラキラの銀点滅による「雪舞い」なのだろうか、勝手に想像を巡らせている。
こうしたネーミングはとても重要で、来場者は、打ち上げ前のイマジネーションを膨らませると同時に、打ち上げた花火との整合性を楽しむ。大会審査においても、主要な評価項目に違いない。
花火鑑賞士特別賞の行方は?
大会審査員は、出品作品に順位を付ける公正厳格さが求められる一方、花火鑑賞士会賞は、作品の出来映えを踏まえながらも、好みの煙火業者に票を投じる鑑賞士も少なくないように思う。それはそれでいいと思っている。
私たち花火鑑賞士は、競技大会をはじめ各地の花火大会を鑑賞しながら、花火の魅力に陶酔し、好みの花火や煙火業者への思いを募らせる。こうした過程を経て投じる1票だ。点数化できない「思い」「心」を花火師に届けたいのだ。
今大会の出場者18人中、11人が初出場と昨年までと様変わりしており、普段は訪れることのない地で活躍する花火師の作品を、仲間と堪能できることもうれしい。
半年前からホテルを予約…
いずれにしても、この1票のために半年前からホテルを予約し、GW初日の1カ月前の10時ちょうど、「えきねっと」の予約画面に立ち向かったのだから、あとは気象神社の木箱入りお守りにすべてを託すのみ。本日はこの辺で「打ち留めー」。「ドドーン キラキラキラ!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)
親星:丸く開く割物花火は、幾重もの「芯星」と一番外側の「親星」で構成されている。