障害者への差別を禁止する茨城県障害者権利条例施行9周年を記念して、条例をつくる活動に取り組んできた障害者団体「茨城に障害のある人の権利条約をつくる会」(事務局・水戸市)の関係者らが30日、つくば市内でパレードし、4月1日から民間事業者にも義務付けられる「合理的配慮」の必要性を訴えた。
合理的配慮は、スロープを設置して段差をなくす、筆談できるようボードや筆記用具を提供するなど、障害者から対応が必要と伝えられた時に障害の特性に応じた配慮を提供すること。改正障害者差別解消法の施行により4月から民間事業にも提供義務が拡大される。
パレードでは、つくば市内や県内外から駆けつけた障害者と支援者ら約50人が、同市天久保、筑波メディカルセンター前から、同市竹園、つくばカピオ前までの約2キロを歩いた。
参加した聴覚障害者で筑波技術大2年の小林萌楓さん(20)と同大大学院OBの石綿智樹さん(24)は「つくば市内では筆談に応じてくれたり、こちらに口の動きが伝わりやすいように会話の時にマスクを外してくれるなど、飲食店などでも障害に理解があるところが多い」としつつ、「街灯が増えるといい」と話す。街灯が少ないため、夜間に道路を歩くと近づく車や自転車に気づくのが遅れることがあるという。
石綿さんは「私たちはクラクションが聞こえない。車がこちらに気づいても聞こえないので反応ができず、事故に遭う不安がある」と言う。また「夜間に友人と歩く際、街灯が無くて暗いと互いの手話が見えないので、コミュニケーションを取るためにわざわざ遠回りをして帰らなければいけないこともある」と語る。小林さんは「合理的配慮が義務化することで、当事者がどんな配慮が必要か言いやすくなると思う」とし「障害者は孤立しやすいところがあるので、周囲の理解が進むのでは」と期待する。
建設的な対話がポイント
同つくる会共同代表の八木郷太さん(27)は、合理的配慮義務化の周知不足を指摘し「当事者と事業者が建設的に対話をすることが大きなポイント。スロープの設置などどうしても物理的な話が先行しがちだが、スロープがなくても後ろから押せば入店できることもある。障害者がお願いしたことに対して『できる』『できない』ではなく、話し合いで落としどころを見つけていくことが大事」と語る。
さらに9周年となる条例について「条例があることで、当事者と行政、事業者が対話の場を持てる」と八木さんは言い「条例により県に差別相談室ができ、県と協力する場を持てている。行政、当事者、事業所が話し合いの場を持つことで、障害者の側から一方的に配慮を求めるのではなく、求めているものを説明し、事業所と現段階でこれならできると話し合える」とし、「街が一気にバリアフリーになるのは難しいが、対話を通じて徐々に合理的配慮を提供する店が増えていくことが大事になる」と話す。「最初は車椅子でも食事ができるようにテーブルを動かすことからでも、今度は簡単なスロープをつけようとか、視覚障害者が来たらこんな対応をしようとか、関係を積み重ねることで、対応は変化していくはず」と述べる。
「パレードを通じて合理的配慮について広く知ってもらいたい。当事者も知らない人が多いので、配慮を当たり前に求めていいと知ってもらいたい。迷惑をかけると思ってしまうと言えなくなってしまうが、伝えることで対話が生まれ、事例が積み上がる。すぐに100点にはならないと思うが、事業者と行政、当事者が共に経験を重ねながら地域の合理的配慮を育てていければ。結果として街が変わっていけばと思う」と今後へ期待を話す。
県障害者権利条例(障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例)は、障害者団体が制定を働き掛け、議員提案により2015年4月1日に施行された。差別の禁止のほか、差別に関する相談、調査、助言やあっせんなどについて定めている。(柴田大輔)