木曜日, 2月 12, 2026
ホームつくばつくば、満州 地域の歴史をつなぐ写真展 土浦

つくば、満州 地域の歴史をつなぐ写真展 土浦

土浦市中央、公園ビル内のギャラリー「がばんクリエイティブルーム」で、つくば市の写真家・藤村健一朗さん(56)による写真展「ビヨンド・ザ・ウィンドウ(窓の向こう)」が3日から始まった。著しく変化する、近年のつくばの風景を独自の目線で記録する。ギャラリーがある公園ビルは戦後、旧満州からの引き揚げ者が暮らした建物で、空間からも地域の「新・旧」を体感できる場をつくっている。カラー、モノクロ21点が展示されている。

つくばの公務員宿舎を記録する

ギシギシギシ…。すり減る年季の入った踏み板を鳴らして会場の木製階段を2階へ上がると、踊り場の壁に並ぶ、つくばの街並みを写したカラー写真が目に入る。打ち付けられた板で窓がふさがれたり、建物が草木に覆われたりする無人の公務員宿舎や、取り壊された宿舎跡地に建つ真新しい住宅などだ。隣の和室にあるモノクロ写真は、歪んだ鉄骨がむき出しになっていたり、崩れた建物に鉄製の階段が引っ掛かるように残っていたりする解体途中の宿舎が写る。画面の中央には、崩れた外壁に残されたガラスと枠が外れた窓が、こちらを見つめている「目」のようにも感じられる。

以前は居住スペースだった2階和室にはつくばの写真が並ぶ

藤村さんは2020年から、新たな開発が進む筑波研究学園都市の風景を撮り進めてきた。国家プロジェクトとして誕生したこの街には、1980年までに計7755戸の公務員宿舎が建てられ、移住してきた研究者らの暮らしの場となった。今は、空き家が増えて老朽化が進むことから、全体の約7割が解体または解体の途上にある。その跡地には、真新しいマンションや住宅が次々に建てられている。県は、つくばエクスプレス沿線を「新・つくば」と名付け、沿線地域の開発とさらなる移住者の呼び込みに力を入れている。街の景観は大きく変わっている。

日米、戦後の都市開発とのつながり

藤村さんがつくばの風景に関心を持ったのは、妻と千葉県からつくば市に移住して間もない2010年のころだった。夫婦で近所を散歩していると、街のあちこちにある独特の形をした公務員宿舎に興味を引かれた。以前から、建築物や都市の風景を写真に収めてきた藤村さんは、間もなく次々に壊され始める姿を目の当たりにし「今の変化を写真で記録したい」と思ったという。

2階に展示されている公務員宿舎のカラー写真

筑波研究学園都市の成り立ちを調べると、戦後日本の住宅政策との重なりに気がついた。「戦後の日本で不足する住宅を供給したのが『住宅公団』。学園都市をつくったのも同じだった。つくばの成り立ちは、戦後日本の住宅政策とつながっている」と指摘する。

第2次大戦の戦災で多くの都市が焼失した日本は戦後、600万人を超える外地からの引き揚げ者とその後のベビーブームによる人口急増で、深刻な住宅不足に直面した。これに対して1955年に国がつくったのが日本住宅公団だった。各地に大規模な団地やニュータウンを開発し、後に筑波研究学園都市の開発を一手に担うことになる。

藤村さんはさらに、戦後の都市開発と米国の住宅政策の繋がりに行き当たる。米国では1930年代、「郊外」と位置付けられた都市の外側に、大量生産され均質化された家屋が立ち並ぶ大規模ニュータウンがつくられ始める。米国の写真史を学んだ藤村さんは、郊外の人工風景を記録する米国の写真家に引かれていく。今回の作品は、人口増加の過程で、国外でも起きていた「郊外」を巡る歴史に、現在のつくばを位置付け直す試みでもある。

旧満州引き揚げ者が残す

地域史の「新・旧」を知ることができる今回の展示では、会場も大きな役目を果たしている。その理由が、同ギャラリーが入る「公園ビル」の歴史にある。

旧満州からの引揚者がつくった「公園ビル」

同ビルは、亀城公園に隣接する長さ100メートルほどの3階建ての建物で、1階が店舗、2、3階部分が商店主の居住スペースとなり、20軒ほどが連なっている。さながら「長屋」のような空間だ。ギャラリーがある店舗には以前菓子店が入っていて、2、3階に店主が家族で暮らしていた。

公園ビルの前身は、1947年に旧満州からの引き揚げ者らが建てた「急造バラック長屋」だったと、公園ビル商業協同組合の冊子「公園ビル四十五年の歩み」にある。同誌によると、家屋は亀城公園のお堀から霞ケ浦へと続く水路(川口川、現在は暗渠)上に杭をうち建て、杉皮で屋根をふいたものだった。その後、住民が協力してお堀でスワンボートの貸し出しなどの事業を開き、50年には「公園マーケット」として同地にアーケードをつくり、翌年それを組合化、53年4月の桜まつりに合わせて、現在まで続く鉄筋コンクリート3階建ての大きな「長屋」が完成した。

「窓」の先にある自分だけの風景  

今回の展示のテーマは「窓」だと藤村さんはいう。「窓は、外の世界に目を向けるものである一方で、ガラスに反射する自分を映す鏡にもなる」。

それは、外界への視線と自己表現という、写真が持つ二つの性格との重なりでもあるという。展示は室内の1、2階を利用した2部構成。1階では、藤村さん自身の歴史につながる、家族がきっかけとなった「窓」の作品が展示され、2階には、千葉から移住した藤村さんが新しく繋がるつくばの歴史を見つめる写真だ。藤村さん自身が抱く2つの視線を、歴史ある公園ビルの建物が包み込む。

「街には成り立ちがある。人の暮らしがあって、今がある。どうしても『今』を追いがちだけど、歴史を紐解くことで、当たり前の風景の背景を知ることができる」

入り口を入って1枚目の写真に、記者は釘付けになった。それはベージュの額に収められた藤村さん宅の突き出し窓。外の光にガラスが白く輝いているため、屋外の風景を窓越しに見ることはできない。ただ、その光をじっと見ていると、突然壁に空いた異空間への入り口のようにも感じ、吸い込まれそうな不思議な感覚を覚えた。

「窓の先の景色は人それぞれ。普段見ている景色もそれぞれ異なる。ささやかですが、自分の景色に気づくきっかけになれば」と藤村さんはいう。(柴田大輔)

◆写真家・藤村健一朗さんの個展「BIYONDO THE WINDOW」は10日(日)まで。開場は午前10時~午後6時(最終日は午後4時まで)。入場無料。水曜日は定休。がばんクリエイティブルームは、土浦市中央1-13-52公園ビル。詳しくはホームページまで。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

1人5千円を電子クーポンなどで給付、水道基本料金も半年間減免 土浦市

政府の物価高対応交付金活用 土浦市は10日、物価高騰対策として4月以降、市民全員を対象に1人当たり5000円の電子クーポンまたはギフトカードを給付するほか、一般家庭全世帯を対象に4月から9月までの6カ月間、水道料金の基本料金を減免すると発表した。政府の物価高対応交付金を活用し、総額で約10億1200万円の支援となる。10日市議会臨時会を開き、全会一致で可決された。隣のつくば市は19歳以上に現金5000円を給付などする。 プッシュ型で 土浦市の5000円の給付対象は年齢制限を設けず、市民全員約14万1500人に給付する。電子クーポンで受け取るかギフトカードかは選択できる。給付総額は約8億3400万円。 給付方法は4月から5月にかけて、市から市民全員にプッシュ型で、5000円分の電子クーポンが利用できるQRコードを郵送する。世帯単位で郵送し、家族の人数分のQRコードが送られるという。マイナンバーカードなどと紐づけることなく利用できる。 利用方法は、郵送された世帯人数分のQRコードをそれぞれがスマートフォンで読み込めば、JCBカード、ペイペイなど約1800種類の電子クーポンの中から自由に選んで、5000円分の買い物や飲食をすることができる。現金にしたい場合はセブンイレブンのセブン銀行で現金化することもできる。 一方、スマートフォンを持っていないためQRコードの読み込みができなかったり、電子クーポンを利用したくない市民などには、2カ月間の意思表示期間を設け、代わりに5000円分のバニラビザギフトカードを郵送してもらうことができる。電子クーポン、ギフトカードいずれも申し出がなかった市民に対しても、後日、5000円分のバニラビザギフトカードをプッシュ型で郵送する。 電子クーポンは幅広い市民が利用できること、QRコードを受け取った時点ですぐに利用可能になること、現金の口座振り込みと比べ、手間や経費を縮減できることなどから電子クーポンにしたなどという。 18歳以下の児童手当支給対象者は政府の物価高対応子育て応援手当を活用して1人当たり2万円を受け取ることがすでに決まっているが、同市の場合、18歳以下は2万円に加えて5000円を受け取ることができる。 水道基本料金減免は2700円 さらに水道料金基本料金の減免は、一般家庭約6万5300世帯が対象で、1カ月当たり450円の基本料金を4月から9月までの6カ月間、1世帯当たり計2700円減免する。総額は約1億7790万円になる。 5000円の給付と水道料金の減免は、昨年12月に補正予算が成立した政府の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用して実施する。各自治体が地域の実情に合わせて支給内容を決めることができ、政府が推奨事業メニューに示した「おこめ券」などは配布しない。隣のつくば市は、現金5000円給付のほか、介護保険サービス事業者や障害福祉サービス事業者などに支援金を給付する(1月7日付)。

北条の街で起こった出来事《映画探偵団》97

【コラム・冠木新市】1月25日、つくば市北条にある宮清大蔵での詩劇コンサート「北条芸者ロマンの唄が聞こえる」を無事終了することができた。当日は晴天だったものの警報級の大寒波が襲った。参加者が集まるか心配したが、開場前から参加者が来場され、74人が観劇する「満員御礼」となった。 参加はつくば市からが多かったが、埼玉県8人、土浦市5人、常総市2人、東京都2人、小美玉、桜川、北茨城市が各1人と、遠方からも見に来てくれた。年齢も20~70代と幅広く、女性が半数以上だった。 うれしかったのは、地元・北条から4人の参加があったことだ。たかが4人と思う人がいるかもしれないが、これまで「北条芸者ロマン/筑波節を歌う女」「北条芸者ロマン/三代目襲名」「北条芸者ロマン/二代目の恋」と3度公演したが、地元の参加者はほぼゼロだった。 今回は北条街づくり振興会会長に、地元の人からの問い合わせが数多くあったという。スタッフも会場前を通りがかった北条の人から「今日ですね」と声を掛けられたそうだ。シリーズ4作目にして、ようやく地元に浸透してきた。 異口同音に「なぜか懐かしい」 お話は95年前の1930(昭和5)年の出来事だから、北条の人は生まれていないはずなのに、「なぜか懐かしい」と異口同音に連発するのだ。プロローグで、昭和初期の筑波・北条のスライドにかぶせて、カ一ペンタ一ズの「イエスタデイ ワンスモア」を流したせいだ。知らない世界なのに、名曲の力で懐かしさを感じられる。 北条の人は、劇中に出てくる地名にいたく反応し、感動していた。これは予想外でびっくりした。終了後、劇中に出てくる料亭で結婚のお祝いをしたと、うれしそうに語り掛けられた。自分の思い出を重ね合わせて見ていたのだろう。もっと地元の人に見ていただければ、さらに世界観が深まると思った。 岡本喜八監督の「殺人狂時代」 翌日、急に岡本喜八監督のアクションコメディ「殺人狂時代」(1967)が見たくなった。この作品は1966年に東宝で作られたが、理由なくお蔵入りとなった。翌年2月4日に公開されるが、東宝始まって以来の不入りとなり、短期間で打ち切りとなる。その後、名画座で上映されると、だんだん人気が出てきてカルトム一ビ一化する。私は公開時に見たが、名画座でも度々見て夢中になった。 水虫に悩む、さえない大学講師・桔梗信治(仲代達矢)は、「不要な人間は殺せ」という思想の精神病院院長・溝呂木省吾(天本英世)が育てた精神病患者の殺し屋に狙われる。しかし、桔梗は次々と殺し屋たちを返り討ちにする。話が進むうち、溝呂木は、ナチスドイツの残党が桔梗の知る宝石「クレオパトラの涙」を狙っていると分かる。 物語はいつしか宝石をめぐる話へと変わる。さらに、桔梗は殺し屋たちに襲われるふりをして、逆に殺し屋組織の壊滅を図っていく。仲代演じるぬぼーっとした桔梗が、どんどん格好よく変貌を遂げるのだ。 なぜ、北条でのイベントが終わって「殺人狂時代」を見たくなったのか? 多分、さえない桔梗が変化する姿と北条の街に共通するものを感じたからかも知れない。北条の街はこれから変化していくのではなかろうか。次の「北条芸者ロマン・完全版」では、北条の街の歴史を組み込むつもりである。「北条芸者ロマン」が、少しでも街の発展のお役に立てればと願っている。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) <お知らせ>特別試写会『北条芸者ロマンの唄が聞こえる』・日時:2月28日(土)午後1時~・場所:つくばカピオ(つくば市竹園)中会議室・参加費:無料・対象:まちづくりに興味がある方

末期がんと診断されてしまいました…《ハチドリ暮らし》58

【コラム・山口京子】末期がんと診断され、生活が変わりました。昨年12月、痔の治療のつもりで病院を訪れたところ、「痔ではなく、大腸がんです」と、医師にあっさり説明されました。そのあとの血液検査と内視鏡検査で分かったのは、進行性の直腸がん。 「ここでは治療はできないので、紹介状を書きます。どこの病院を希望しますか?」と言われても…。がんだから、専門の病院がいいのか、家から通いやすい病院がいいのか…。 家に近い総合病院の名前を伝えると、受付の方がそこに連絡し、予約日を決めてくれました。紹介状を受け取り、帰宅したものの、実感はありません。確率的にはおかしくはないけれど、自分にもホントに来たのだな…。 体の感覚は昨日と変わらないのに、がんと診断されたことで、何か変わってしまいました。この原稿を書いているときも、がんが増殖中と思うとおかしな気分。昨年は体調不良を感じていたけれど、左足の骨折や夏の暑さのせいと思い込んでいました。 4日後、総合病院で検査。10日後、直腸がんであること、肝臓・肺・リンパに転移し、ステージ4との検査結果。治療しないと余命8カ月、治療してうまくいけば2年半。治療方針は、化学療法で転移を抑え、経過を見るとのこと。年明けに入院し、抗がん剤治療を始める日程。説明を涙ながらメモしている娘。 2週間を1クールとして治療 期間限定の人生になったらしい…まだ信じられない。でも人生は期間限定。死亡率100%なのだし…。副作用の説明もあったけれど、具体的にはどんな症状が出るのか。痛みに弱い、ヘタレな自分がどこまで治療についていけるのか。 がんと分かってから、がん関連の本を何冊も読んでみました。標準治療に対する評価、抗がん剤に対する考え方、先進医療や代替治療、食事やサプリメント、漢方薬など。さまざまな見解がありましたが、とにかく抗がん剤治療を受けることにし、仕事は12月で辞めました。 入院は1月6日。CVポート(皮下埋め込み型カテーテル)を装着し、2日後に抗がん剤の点滴を開始。4日間入院して点滴を受け、退院後の10日間は静養。この2週間を1クールとして治療を続けていく段取り。これから、どのような経過をたどるのでしょう。(消費生活アドバイザー)

デジタル技術を駆使 アニメ、ゲーム、広告デザインなど展示 日本国際学園大

日本国際学園大学(つくば市吾妻)でデザインを学ぶ3、4年生が、日ごろの学習の成果を発表する作品展「2026コンテンツ デザイン エキシビジョン」(同大経営情報学部ビジネスデザイン学科主催)がこのほど、同市吾妻、中央公園内のつくば市民ギャラリーで開かれ、アニメ、ゲーム、メタバースなど最新のデジタル技術を駆使した作品や、想定した架空の店舗や商品のブランド価値を高める広告デザインなどが展示された。 1月31日から2月6日まで開催され、学生17人が作品約40点を展示した。同展は毎年開催され今年で15回目。4年生にとっては卒業制作展になる。 展示されたのは、楽曲に合わせて容姿が変化していくキャラクターを描いたアニメ作品、音楽に合わせてキャラクターや背景を動かすなどデジタルアートの制作過程そのものを映像にした作品、AIを使って小説のシナリオとキャラクターを制作したノベルゲームなど。 広告デザインは、つくば駅近くに架空のカフェがオープンしたと想定し、店舗のロゴやチラシ、缶バッチやシールなどを実際にデザインしたものや、土浦や水戸、常陸太田、龍ケ崎など、県内各地の昭和レトロな商店街を実際に訪ね歩き、それぞれの魅力を紹介したガイドブック、架空の水戸納豆のオリジナルキャラクターや商品パッケージなどをデザインした作品などが展示された。 インターネット上の3次元の仮想空間、メタバースの中で参加者を募り、参加者の分身であるアバターの撮影会や交流会を主催するなど2年間にわたる活動記録をポスター展示した4年の姜翔(きょう・しょう)さん(21)は「メタバースでは、いろいろな人が参加できるように企画を考えてイベント開きコミュニティを引っ張ったが、毎日のように反省点が出てきた」と活動を振り返った。 情報デザインやメディアアートを指導する同大の高嶋啓教授は「4年生にとっては、新型コロナの行動制限が始まった最初の年を1年生として過ごした。表現したいという強い気持ちが現れた作品や、センスが面白い作品があるので、これを引き継いでさらに深めていってくれれば」と話していた。