近所に八百屋がない筑波大学近くの春日4丁目に9日、24時間営業で無人販売の食品販売店「やおや・春日」がオープンした。同市天久保で四川料理店「麻辣十食」を運営する東洋十食が手がける。野菜や果物のほか、中国からの輸入食品や自社製造のお弁当、コロッケなどの惣菜も販売を始め、近隣住民や大学生らが買い物に訪れている。
店内にはキュウリやトマト、ジャガイモなど一般的な野菜と共に、赤い菜の花や、スティック状のカリフラワー、茎レタスといった珍しい野菜も並ぶ。店舗面積は約35平方メートル。販売する商品は野菜、果物、お弁当など合わせて約100種類ほど。
値段は50円から数百円程度で、一人暮らしの大学生にも買いやすいよう少量ずつパックするなど工夫されている。商品は水海道総合食品地方卸売市場や都内の中央卸売市場から仕入れる。商品の価格に跳ね返らないよう、内装は全てスタッフが手作りして初期投資額を抑えた。無人販売により人件費を抑えているほか、曲がったキュウリなど形が不ぞろいの規格外の野菜を仕入れ、できるだけ安くしている。
支払いは現金かQRコード決済で、品物を選んでから客自身が電卓で計算し、カメラに見えるようにして支払う仕組みだ。
夜遅くまで研究
同店を運営する東洋十食の代表は中国河南省の出身。筑波大学大学院で社会工学の修士課程を修了した。卒業後は都内の会社で働いていたが、自然豊かな環境で子育てしたいと、学生時代親しんだつくば市に戻ってきた。院生時代は大学の宿舎に住み、夜遅くまで学内で研究していた。その経験から「夜中でも食材を買うことができる24時間販売の八百屋が大学近くにあれば便利なのではないか」と思いついたという。都内で勤めていた時、白金や麻布十番の八百屋がにぎわっているのを見て、スーパーマーケットではなく八百屋の業態に魅力を感じたと話す。
孫さんは野菜の仕入れなども行う。「大学生だけでなく近隣に住むお年寄りからも、キャッシュレスでなく現金でも買えるのがありがたいと言われる。喜んでもらえている様子」と好感触だ。野菜を買いに来た筑波大2年の男子学生と女子学生は「オープンしたのを見て気になっていて今日初めて来た。いろいろな野菜があって便利」と話す。東洋十食の代表は「加工食品ばかりだと栄養も偏る。野菜を食べて、大学の後輩たちに元気に、健康になってほしいという思いがある」という。
コロナ禍、都内で人気高まる
街の八百屋は、コロナ禍により家庭内で食事をする内食や巣ごもり消費の需要が高まったことを背景に、都内では、道路に面した店頭に青果を並べる八百屋の人気が集まり、大手食品スーパーが昭和レトロな八百屋の業態で出店したり、ドライブスルーの八百屋もオープンするなどした。農水省の調査によると、2021年には全国の青果市場の約半数がコロナ禍前よりも取扱高を増やしている。(田中めぐみ)