【コラム・田口哲郎】
前略
先日、「徹子の部屋」に阿川佐和子さんが出ていて、おもしろい話をしていました。阿川さんは終(つい)の住処(すみか)になるだろう我が家を探すのに、海が見えるところに住みたいと思ったそう。海が見える家にずっと憧れを持っていたのがその理由です。
最初は瀬戸内海沿岸の尾道あたりを考えたけれども、東京での仕事が多く、通うのが不便なので断念。次に東京近郊の湘南はどうかと年上のお友達に相談したら、湘南は東京都心まで距離があるし、海辺は生活利便施設があまりないところが多いので、生活が不便になるから止めた方がよいと言われたそうです。
「海なら年に数回見に行けばよいじゃないか」と言われたらしい。そして結局、都心の便利なところに住んでいるというオチでした。
これを見て、なるほど海辺や森の中の家に憧れるけれども、景観がよいのは心を和ませてくれても、生活するのに直接的便利さは提供してはくれないー。改めて考えさせられる言葉でした。
県南で住むのに便利な街は?
私は常々、茨城県南には筑波山や霞ケ浦を始めとして風光明媚(めいび)な場所はたくさんあるのに、特に霞ケ浦はいまいち観光地としてパッケージ化がされていないように思っていました。京都の宇治みたいな楽園感があまりないような気がするのです。
でも、よく考えると、宇治の観光地のど真ん中にスーパーマーケットやホームセンターはないです。行くたびに、こんなところに住みたいと願うのですが、実際に住むとなると不便さが出てくるのかもしれませんね。
そういう意味で、筑波山や霞ケ浦の周辺は鉄道駅から離れていたりして少し不便ですので、逆に観光地としての可能性は大いにあると考えてもよいんじゃないでしょうか。
ところで、生活利便施設があるといっても、それが点在していると、結局、自動車に乗らなければならなくなったりと不便さがあったりします。駅前にスーパーマーケット、ホームセンター、家電量販店などが集中しているところが、生活に便利な街ということになるでしょう。
すると、県南地域で思いつくのはTXの研究学園駅です。さらに、JR常磐線のひたち野うしく駅周辺も隠れた便利エリアになっています。関東広しといえども、これほど便利な街はそうそうないと思います。
コロナ禍が収まり、東京への集中の傾向が出てきた昨今、郊外の駅チカの便利な街がますますにぎわうかもしれませんね。ごきげんよう。
草々
(散歩好きの文明批評家)