火曜日, 4月 28, 2026
ホームつくば学校に居づらかった経験生かし フリースクールで子どもと向き合う【ひと】

学校に居づらかった経験生かし フリースクールで子どもと向き合う【ひと】

つくばの佐々木侑紀さん(26)

つくば市竹園在住の佐々木侑紀さん(26)は大学卒業後、不登校児童生徒の受け皿となっているフリースクールのスタッフとして充実した毎日を送っている。

教員免許を取得した同期の多くが公立や私立の教員の道を選んだが、収入は低くても子ども一人ひとりと向き合うフリースクールの現場に立とうと、2020年6月、NPOリヴォルヴ学校教育研究所(小野村哲理事長)が運営する「ライズ学園」(現在はむすびつくばライズ学園)に就職した。

佐々木さんには学校で傷ついた経験がある。小学校ではぜんそくやアトピー、アレルギーで休みがちな上に食物アレルギーで給食が食べられず、弁当持参で教室に居づらかった。その上勉強について行けず、自分は頭が悪いと自信が持てずに惨めだった。

中学では成績の良し悪しで発言の機会に差があったり、クラスメートの7、8割が塾通いが当たり前で、授業でいきなり高校レベルの問題が出されたりすることを理不尽に感じていた。「僕も学校に居ると声を出すことができず、机に伏せて寝たふりをしたり、わざと的外れの答えをしたりと反抗した」。

そば店の壁に名言

中学2年のある日、父親と訪れたそば店の壁に、幕末の思想家、吉田松陰の名言が掛かっていた。「過ちがないことではなく、過ちを改めることを重んじよ」という言葉に、間違えてもいいんだと気持ちが楽になった。松陰の言葉との出会いが人生の分岐点となった。「松下村塾」を主催し塾生一人ひとりの得意分野を見抜いて能力を伸ばすことに尽力した松陰に憧れ、憧れは自らの目標になった。

かすみがうら市の東風高校を経て二松学舎大学(東京都千代田区)に進み、高校の公民の免許を取得した。

大学在学中は不登校児童生徒の居場所として、フリースクールの存在感が高まっていた。卒業後、自身の経験もあり、フリースクールの現場に立ちたいとインターネットでフリースクールを検索した。目を引いたのが、当時、同市谷田部でフリースクールを運営していたライズ学園の記事だった(2019年5月29日付)。

「教員を辞めた人がライズ学園を設立し、子ども一人ひとりのつまずきを理解しながら学習支援に取り組んで学ぶ意欲を引き出している。これは、塾生の得意分野を見抜いて能力を伸ばした『松下村塾』と同じ。ここしかないと思った」

みんな花開くからきっと大丈夫

スタッフになって3年半が過ぎた。「通い始めた頃の子どもたちは、学校での嫌な経験から抜け出せずに表情は硬い。徐々に打ち解けて心からの笑顔が見えたときにやりがいを感じる」

現在、同学園は同市吾妻の市産業振興センターで運営され、市内の小中学生が1日20人ほど登園している。スタッフは15人おり、社会科担当の佐々木さんは子どもたちから「ささきん」と呼ばれている。

フリースペースで小3の男子児童と粘土を使って作品づくりに取り組む

「社会科の教え方の基礎は、3年間マンツーマンで向き合い信頼関係を築けた男子生徒とのやりとりで養った。資料はどう作ったら見やすいか、どうしたら学ぶことが面白い社会科になるか、たくさんのことを気付かせてくれた。ニックネームの『ささきん』はこの男子生徒がつけてくれたもので、とても気に入っている」

子どもたちとの共通の話題は漫画やアニメ、音楽、お笑いと幅広い。好きなアニメのキャラクターなどの雑談を通して距離が縮まり、本音で話してくれる関係性が出来てきた。

「大人に不信感があって口調の荒い子どもと雑談をしていた時、唐突に『誰からも問題児と言われる僕は本当に問題児ですか』と直球が飛んでくることがあった。大事なものが投げ込まれたら、いつでもその子のこれからを考えてアドバイスしていこうと思う。相談できずにいる子どもはいないか、楽しそうに登園してくる子どもは元気なふりをしていないか。よく見てよく話を聞き、安心して過ごせるようサポートしていきたい」

受験シーズンを迎えた。同園から今春9人が巣立つ。中学3年になると高校入試を控えて迷い、悩み、子どもたちの間で「もう自分の人生は終わる」「高校には行かないと」「中卒ではやばいよね」といった会話が交わされる。近年は進路に通信制高校を選択する子も多い。佐々木さんは「みんな生まれ持った良いところがあって花開くからきっと大丈夫。10年後、20年後にまた会おう」とエールを送る。 (橋立多美)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

柵が倒れ女子児童けが つくばカピオ前広場

26日午後1時30分ごろ、つくば駅近くの同市竹園、市の複合施設、つくばカピオ前の広場で、広場に設置されたスロープと広場を隔てる鉄製の柵に女子児童(8)が手を掛けたところ、柵がスロープ側に倒れ、児童は足などを打ってけがを負った。 市芸術文化推進課によると、倒れた柵は高さ79センチで、長さ4.35メートルにわたって3ブロックが倒れた。女子児童は市内から家族と遊びに来ていて、柵に体を向けて手でにぎっていたところ、柵と一緒に正面から倒れたという。同課によると、柵に腐食はみられず、溶接部分がはがれたことが原因とみられるという。 柵はカピオと同じ1996年に建築された。指定管理者のつくば市文化振興財団(同市竹園)が施設の管理などを実施し、定期的に点検などを実施しているが、柵がぐらついていたなどの異常は確認されていなかったという。 市文化振興財団は、女子児童の保護者に謝罪した上、施設の点検や安全確認を改めて実施した。倒れた箇所や同様の柵がある箇所については現在、カラーコーンを設置し、近寄らないよう注意喚起する張り紙を掲示している。 市は、当該施設の点検を徹底し、安全対策や注意喚起を行うなど再発防止に努めるとしている。

障害者の余暇活動充実へ つくばで新団体スタート 

地域のネットワークで課題解決 障害者の余暇活動の充実を目指す「つくば市障害者の余暇活動を考える会」の発起式が26日、同会の実行委員会によってつくば市内で開かれ、福祉事業者や障害者のスポーツ団体、行政職員、支援者、当事者や家族らが参加した。実行委員会には、市内で障害者の余暇活動や運動・スポーツ活動、生活支援に取り組む福祉専攻科シャンティつくば、障害者のスポーツ事業や余暇活動支援を行う一般社団法人ウルラ(URULA)、NPO法人ユアフィールドなどが名を連ねる。今後も行政を含めた地域のネットワークづくりや課題解決に向けた取り組みを進めていく。 2025年初頭、関係者間で課題を共有したことをきっかけに準備を進めてきた。世話人の一人、ウルラ代表で筑波大学准教授の澤江幸則さんによると、障害者の余暇を取り巻く環境には、家族の負担の大きさ、当事者のニーズに合った福祉サービスの不足、活動の場や情報のマッチング不足などが課題に挙げられ、特に「(活動の)場」「移動」「時間」の3点が大きな壁となっているという。 同会は現時点で実行委員会形式でのスタートとなるが、今後は行政や支援団体、当事者や家族などの活動への参加を想定している。発起式には会場定員の60人を上回る約80人の申し込みがあり、オンライン対応も行われた。澤江さんは「関心の高さを感じる一方で、その期待に応える責任も感じている」と述べた。今後は6月に初のセミナーを予定しており、当事者や家族、相談員の声を反映しながら、具体的な施策づくりを進めていく考えだ。 余暇は労働と同じくらい大切 発起式で澤江さんは「余暇とは単に余った時間ではなく、人生や生活を豊かにする重要な要素」だと強調した。かつては労働中心の価値観が主流だったが、現在はワーク・ライフ・バランスの考え方が広がり、「労働と同じくらい余暇が大切な時代になっている」と指摘した。余暇活動が心身の回復や人とのつながりを生むとする理論にも触れ、「社会との接点を広げ、人生を豊かにするための大切なツール」だと語った。 一方で、障害者の余暇を取り巻く環境には課題も多いと指摘する。澤江さんによると、当事者家族への調査では、外出や余暇の満足度は「満足している」と「満足していない」がほぼ半々だった。 活動の場自体は一定数存在するものの、情報が十分に共有されておらず、活用されていないケースも少なくない。移動手段についても既存の支援制度だけでは対応しきれていない現状があると話す。また、施設職員の勤務体制などの影響で、平日に比べて休日の活動が乏しい点も課題とされる。 こうした状況を受け、同会は、行政、民間団体、支援者、当事者らが緩やかにつながる「ネットワークづくり」を重視する。澤江さんは「一つの主体だけで解決できる問題ではない。みんなで考える必要がある」と語った。 今後の取り組みとしては、定期的なセミナーやワークショップの開催、ホームページやSNSを活用した情報発信、寄付の呼びかけなどを計画する。多様な関係者の参加を促し、「市全体で障害者の余暇活動を支える仕組みづくり」を目指す。 また、学校卒業後の学びの機会が限られる現状を踏まえ、生涯学習の視点から余暇の充実を図る必要性も強調する。「学びの場を広げることが、余暇をより豊かなものにする」と話した。 課題出し合えたのは重要な一歩 実行委員会の世話人で、シャンティつくば代表の船橋秀彦さんは「地域で地道に取り組んでいる人たちが初めてこういう場で交流し合い、障害のある人たちの余暇活動に関する課題を出し合えたのは重要な一歩。さらに、そこに行政の参加があったことは大きい。シャンティつくばでも余暇活動を進めてきたが、より一般に広げるためには行政も含めた取り組みが必要になる。市が余暇活動に視点を当てた取り組みである『余暇活動支援事業』を始めたことは高く評価しており、障害のある人たちの余暇活動の発展につながる第一歩になると感じている」と語った。(柴田大輔)

片隅で咲く恋心、ままならない感情 《マンガサプリ》6

【コラム・瀬尾梨絵】SNSという広大な海から生まれ、多くの読者の心を静かに揺さぶり続けて書籍化に至った名作をご存知だろうか。それが、蒔(まき)先生による「おもいこみのノラ」(KADOKAWA、全1巻)だ。コンパクトな巻数の中に、私たちが忘れかけていた誰かを思うことの、みずみずしくも少しだけ苦い感触が、驚くほどの密度で閉じ込められている。 本作の舞台は、さまざまな動物たちが人間のように二足歩行し、服を着て生活している世界。その中でも、人生のモラトリアムとも言える大学が物語の中心となる。 主人公は、犬のノラ。彼女は派手なタイプではなく、どちらかといえば周囲の喧騒(けんそう)から少し離れたところでひっそりと、自分の日常を過ごしているような雑種犬。そんな彼女が胸の奥で温めているのは、同じ大学に通うオオカミのアルへの淡い恋心だった。 動物たちの世界といっても、そこに描かれるのはファンタジーな冒険ではない。講義の空き時間、学食での何気ない会話、放課後のちょっとした寄り道。私たちがかつて通り過ぎてきた、あるいは今身を置いている「学生生活」そのものの空気が、蒔先生の柔らかな描写で描かれている。 最大の見どころは、タイトルにもある「おもいこみ」というキーワード。恋をすると、私たちはどうしても臆病になり、相手の何気ない一言に一喜一憂し、深読みしすぎて自爆したり、逆に都合の良い解釈をして舞い上がったりと、自分でも想像することができない自分を垣間見ることになる。 ノラが抱える恋心は、まさにその「おもいこみ」の連続。自分の気持ちを伝える勇気が出ないからこそ、心の中の独白(モノローグ)は饒舌(じょうぜつ)になり、相手への思いは純度を増していき、その一方通行の熱量が、読者の胸を締め付ける。 動物たちが織りなす不器用な日常 ノラを取り囲む友人たちの描写も秀逸だ。それぞれに個性があり、悩みがあり、彼らなりの生活がある。動物の姿を借りているからこそ、キャラクターたちのささいな表情の変化や、耳や尻尾の動きといった「言葉にできない感情」がよりダイレクトに伝わってくる。それは言葉の解像度を超えた、非常に豊かな感情表現と言えるだろう。 全1巻という構成は、まるで1本の良質な短編映画を見終えた後のような、すがすがしい余韻を私たちに与えてくれる。物語は劇的な大団円を迎えるわけではないかもしれないが、ノラが過ごした穏やかで少しだけ切ない日々は、読者自身の記憶にある「大切な誰か」の面影を呼び起こさせてくれる。 「最近、心がささくれ立っている」「誰かを好きになる真っ直ぐな気持ちを思い出したい」。そんな方にこそ、この「おもいこみのノラ」を手に取ってほしい。動物たちが織りなす優しくて不器用な日常が、あなたの心の中に、温かな火をそっと灯してくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

スペインに海外出張 五十嵐つくば市長 4泊6日

つくば市の五十嵐立青市長が26日から4泊6日の日程で、国際会議「ブルームバーグ・シティラボ2026」に出席するためスペインのマドリードに海外出張する。帰国は5月1日。市が負担する費用は8万円で、渡航費、宿泊費、会議期間中の食費は主催者が支払うという。 今年から市ホームページで事前公表するようになった目的や概要などによると、市長が加入するOECD先進的市長会議(OECDチャンピオンメイヤーイニシアティブ)から招待された。同国際会議はマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が創設した慈善財団と、米国の非営利研究・教育機関「アスペン研究所」が主催する。世界各国から100人以上の市長や専門家らが集うという。 五十嵐市長は、建築、計画、コミュニティの変革方法について話し合う会議や非公開のセッションに参加するほか、住宅問題について議論するパネルディスカッションに登壇する予定。 日程は、26日出国し、同日マドリード着、27日から29日まで3日間、同会議に参加する。30日マドリードを離れ、5月1日帰国する。 市長の海外出張は今年2月、イギリスとフランスに8日間出張(2月1日付)して以来、今年2回目。今年度は初めて。今年度当初予算では市長の海外出張費は計上せず補正予算で対応するとしていた(3月26日付)。(鈴木宏子)