つくば、土浦市で7日、20歳の門出を祝う「二十歳のつどい」が開かれた。コロナが5類になって初の成人式に、参加する多くの若者がマスク無しの笑顔で再会を喜び合っていた。つくば市では、式典を出身中学ごとに分け、昨年に引き続き午前、午後の2部制で開催された。今年度に20歳を迎えた同市の参加対象者は2792人だった。土浦市では1355人が20歳を迎え、式典では、コロナ禍で行われてこなかったアトラクションなどが再開され、市内のダンススクールの生徒によるジャズダンスが披露された。
困難な状況にある人に心を向けて
快晴となったこの日、式典会場となったつくばカピオ(つくば市竹園)前には開場の1時間以上前から晴れ着やスーツに身を包んだ参加者たちが集まった。
一緒に会場に来た大﨑ゆなさん(20)さんと間宮楓さん(20)さんは中学の同級生で、この日は美容室を営む大崎さんの祖母に、朝4時から着物を着付けてもらった。現在、美容学校に通う大崎さんは「将来は美容師として、おばあちゃんの後を継げるよう頑張りたい」と明るく話し、大学で文学を学んでいるという間宮さんは「いい旦那さんと出会いたい」と笑顔を浮かべた。
会場に入っていく晴れ着の女性に視線を送っていたのは、娘を送り届けにきたと話すブラジル出身の野口ヘルベルトさんと、妻でフィリピン出身の野口サリースアレスさんだ。2005年に来日したというサリースアレスさんは「娘は保育士になるとがんばっている。大変なこともあったけど、立派に成長してくれて本当にハッピーです」と言い、日本在住25年のヘルベルトさんは「誰にも優しくできる先生になってほしい」と娘に温かい言葉を贈った。
式典では20歳を迎えた参加者を代表して中島碧音さんが、コロナ禍での過去を念頭に「今までのスタンダードがそうでなくなる瞬間に何度も立ち合ってきた」としながら「しかし、その軌跡も貴重な経験」と力を込めると、「当たり前が当たり前でないことを意識し、今の自分があることに感謝しながら、これまでの経験を活かし、しっかり芯を持ちながら柔軟な人間になる」と誓いを述べた。
あいさつに立ったつくば市の五十嵐立青市長は、今が「当たり前が当たり前じゃなくなっている時代」であると中島さんの言葉を引きながら、元日に起きた能登半島での地震、ウクライナやパレスチナで続く紛争の中で、「20歳を迎えることができずに命を落とす人たちがいる」とし、「困難な状況にある人に心を向けて、皆さんが、その尊い命をそんな人のために使っていただけたらそれ以上のことはありません。一生懸命これから先も、皆さんの命を燃やして生きていってほしい」と思いを語った。
困難を乗り越える力を
土浦では午後1時30分からクラフトシビックホール土浦(同市東真鍋)で「二十歳のつどい」が開催された。
市内在住で現在、半導体の関連企業に勤務する小林大樹さん(20)は「今の仕事に就いて間もなく1年がたつ。これから、より高い技術を身につけて、長く働いていきたい」と目標を語った。小林さんの同級生で、久しぶりの再会を喜んだ川村公優さん(20)は現在、看護学校に通っているとし「卒業後は大学に入り直し、人を育てる仕事をしていきたい」と思いを語った。
式典に先立ち、土浦と石岡が拠点のダンススクール「マリ・ジャズダンス・カンパニー(Mari Jazzdance Company)」の生徒らによる躍動感あふれるダンスが披露された。同スクールのメンバーで今年20歳を迎えた中村咲也香さんは、レッスンを通じて「とにかく笑顔でいる」「気持ち次第で自分の見る世界は変わる」「どんなに辛くても楽しんだもの勝ち」だと学び、それを心の支えに自立した社会に貢献できる大人に成長したいと語った。
式典では参加者を代表して、運営委員長の梶山優月さんが謝辞を述べた。中学、高校と陸上に打ち込んできたという梶山さんは、当時、部活で感じた達成感や喜びを振り返りながら、「新たなことに挑戦することや継続して努力をすることに楽しさを覚え、主体性や忍耐力が高まり、自分に自信が持てるようになった」とし、自身を支えてくれた周囲への感謝を述べると、現在通う大学でも「今しかできないたくさんの経験を積み、社会に貢献できる人になるために残りの学生生活を有意義なものにしたい」と力を込め、「大人としての自覚と責任を持ち、一歩一歩、歩んでいく」と誓いを述べた。
土浦市の安藤真理子市長は、前年に新型コロナウィルスが5類になったことに触れ、「皆さんが高校生のとき、外に出るな、学校に来るな、人と会うなと制限され、本当に大変だったと思います。だからこそ、今日、この様に、皆さんが一堂に会することができ、本当にうれしく思います。みなさん、本当に良かったですね」と参加者たちをねぎらい、「皆さんは困難を乗り越える力を、ピンチをチャンスに変える力をどの世代よりも持っている。自分を信じて未来を築き上げていってください」と、参加者に言葉を贈った。(柴田大輔)